はじめに
このカテゴリでは、『失踪日記』で言及されているものの現在のところ絶版となっている作品群から2つ選んで、『みだれモコ』と『パラレル狂室』をご紹介したい。
今日は、前者についてちょっと。
『みだれモコ』は作者の弁によれば「ドキドキしながら描」き、「奇妙な味」をねらって楽しく執筆したのだったが、「人気無くて6回で終わる」結果になったという作品だ(『失踪日記』p.140。なお、第1話を含めて合算すると『みだれモコ』は全7話になる)。意欲的な実験は残念ながら少年読者層の支持を得られなかったようである(週刊少年チャンピオン1976年10月18日号~11月29日号に連載)。
とはいえ、今になって振り返ると、『みだれモコ』で読者の眼前に次々と展開された「あり得べからざる奇妙な出来事」という要素は、この後さらに強化され、"不条理ギャグ"という独特な様式を結晶するに至ったのでは、と思える。『みだれモコ』の不可思議な種子は当時の少年誌という土壌にこそ馴染まなかったかも知れないが、青年誌においては受け入れられ、開花成長することができたようだ。
単行本は雑誌連載時の版元である秋田書店ではなく、双葉社から刊行された(パワァ・コミックス 1977年9月25日初版)。ここでは復刻版のほうをテキストに用いたい(双葉社 100てんランドコミックス 1982年5月5日初版、内容は同じ)。
この復刻版のカバー(画像参照)を飾っているヒロイン・モコは、連載時の姿に比べてみると髪にだいぶボリュームが増し、まるで別人のように見える。けど、とっても可愛いので全く異議はない(←私情まるだし)。
(注:以下、単なる思い出です)
最初の単行本(パワァ・コミックス、画像はそのカバー)では話と話のつなぎにあるページで、原稿から複写したものに素人が加筆した(?)のではと思える絵が"埋草(うめくさ)"にされており、しかも同じカットが繰り返し数回使われていたりするものだから、あまり見栄えの良い書籍ではありませんでした。当時アシスタントだった沖由佳雄さんがこれに苦い顔をされ「カット描いてくれって(吾妻先生に)依頼してくればいいのにねえ」と残念がっていたのを覚えています。この問題は復刻版のほうでは改善されており、カバーイラストのみならずカットも数葉が描き下ろされ、収録されているのがうれしいところ。いちだんと可愛くなった"1982年版"モコの肖像は、吾妻ファンにとって予想外のボーナスになっています。何が後日に幸いするか分からない事の好例と言えましょうか。
(少年チャンピオン 1976年10月18日号)
(少年チャンピオン 1976年10月25日号)
*これでもかとばかりに奇妙な光景が次から次へと展開してゆく。が、それでいながら登場する全てのキャラクターはその存在にちゃんと役割があって、全く無駄はない。クライマックスの後の逆転に加え、さらにまた逆転がある構成は正攻法だが良く計算されていると思う。お父さんの台詞にある「パタパタママ」は、幼児向けTV番組「ひらけ!ポンキッキ」で放送されていた歌。モコの住んでいるのはどこかの二丁目(あるいはその近所)なのではないか、と思わせる台詞がある。
(少年チャンピオン 1976年11月1日号)
*現実を次々と否定していったあげく、最後には……という、ちょっとスリラーな話。描写を重ねていってクライマックスに至る、一本道で山を登ってゆくような手法は、前回(『きまぐれモコの巻』)の物語とはまた違う構造だ。モコの肌着のサイズが「Aカップの85」だと自身で明かしている台詞がある。「ときどきは思い出す」というくだり、旧海軍の戦艦を題材にしたSF小説に似た部分があると聞いたことがあるので、もしかするとパロディなのかも知れない。
(少年チャンピオン 1976年11月8日号)
(少年チャンピオン 1976年11月15日号)
*いったいどうやって解決し、この事態を元に戻すのだろう? という興味で、物語に引き込まれてゆく。ユニークな結末がちゃんと用意されていて、ニヤリとさせられる回。
(少年チャンピオン 1976年11月22日号)
*頭痛の原因が実は……という、不思議な幻想が展開。この両親にしてこの娘(モコ)ありと言うべきか、今回はパパの選ぶ解決手段にびっくり仰天させられる。
(少年チャンピオン 1976年11月29日号)
*これが最終回。このシリーズのヒロインであるモコにふさわしい壮大な(!?)結末となっている。
(少年チャンピオン 1970年8月3日号)
(少年チャンピオン 1970年8月10日号)
(少年チャンピオン 1972年9月18日号)
(少年チャンピオン 1972年9月25日号)
(少年チャンピオン 1976年3月10日 増刊号)
(別冊少年チャンピオン 1971年6月号
(高1コース 1978年4月号)
(高1コース 1978年5月号)
(高1コース 1978年6月号)
(高1コース 1978年7月号)
(高1コース 1978年8月号)
(高1コース 1978年9月号)
(高1コース 1978年10月号)
(少年チャンピオン 1978年9月4日号)
(まんがドンキイ 1978年12月23日号)
(まんがドンキイ 1979年1月13日号)
(Peke 1978年9月号)
(Peke 1978年10月号)
カレーライス女史のコスチュームは、単行本『どーでもいんなーすぺーす』(大都社 1994年5月30日初版)のカバーで見るに紺と白であるようだ(この配色は日本の女学生の制服のそれをほうふつとさせる?)。後ろにあるロケットはイカみたいな形状で面白い。また、後にあらためて述べるつもりなのだが、このカバーには『恍惚都市』に出てくるコンビの姿も描かれており、R・ブキミの顔面のプレートが肌色であるらしいと分かる(手塚治虫の作品に登場する天才外科医を僕は連想するのだが……?)。
(Peke 1978年11月号)
(Peke 1978年12月号)
(Peke 1979年1月号)
既述の通りR・ブキミの顔面右側は肌色であるらしい。これ以前に描かれたロボットのブキミは、この部分が白色ないしは銀色のようであったと感ぜられるだけに、ちょっと珍しい?(画像は単行本『天界の宴』裏表紙。)
(Peke 1979年2月号)
(OUT 1978年8月号)