はじめに
このカテゴリでは、少年マンガでありながら女性が主役で、かつ現代の学校を舞台としているものを紹介したいと思う。
『ななこSOS』(そして青年マンガであるが『スクラップ学園』)は単独カテゴリで既述ゆえ、それ以外の作品となると単行本ならば『セクシー亜衣』、『美美』、『格闘ファミリー』がこれに該当するだろうか。

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今日はまず『セクシー亜衣』(1974年)についてちょっと。
このシリーズのヒロイン・関井亜衣(せきい あい)の職業は教諭だ。「女教師もの」といったジャンルは少年マンガ雑誌で(少なくとも当時は)"売れ線"のひとつだったろうと思われ、さほど珍しくないかも知れない。
だのに、吾妻マンガの長期連載作品で教師をしているヒロインというのは、おそらく関井亜衣ただ1人きりのようなので、考えてみるとこれは、逆に珍しい気がする(注:ヒロインが教師(?)という例が他に無いわけではない。しかし『霧の中の少女』は読みきりだし、登場する早川ルナは"主人公"ではないように思える。また『やけくそ天使』の阿素湖素子は教師が本職ではない筈なのでここでは除外している。原作が存在する『好き!すき!!魔女先生』もしかり)。売れ線なり定石なりといったものを避け、独創的で斬新なものを模索する吾妻マンガの特長はここにも見て取れると言えようか。
また、吾妻マンガの"連載"作品で主人公が女性というのは(2回続いた『荒野の純喫茶』を別にすれば)たぶん関井亜衣がその最初になる。この点でも彼女は珍しい立場にいるようだ。
再び「女教師」のところへ話を戻そう。
ヒロインが教師とくれば、その相手役は男子生徒(たち)というのがけだし相場であろうと思う。男女のそうした組み合わせこそは、学校というやや特殊な空間においてのみ発生しうる(よってそこに貴重さがある)ものだし、そうでなかったらヒロインが教師であることの意味と価値が薄れてしまいそうだから。
『セクシー亜衣』でも第1話はまさにこのパターンで幕開けしている。が、この「定石」は、それきりで終わった。第2話以降の展開で男子学生たちはヒロインの「相手役」までは果たしておらず、描かれているのはむしろ、主人公の徹底的なコメディエンヌ(喜劇女優)ぶりなのだ。
シリーズのこうした基調には長短あったろうと考えられる。ギャグが増えればたぶん(ムードのある)お色気は減ってゆき、ヒロインの活躍が多くなれば相手役(特に男子生徒たち)の出番は少なくなってゆかざるを得ないだろう。単なる個人的な感想を滑り込ませてしまい恐縮だけれども、連載当時に学生服を着て学校に通っていた僕は読者としてこうした点に少なからず失望し、甘ったれた夢を見させてもらえない不満が、何かヒロインにフラれたような寂しさへと発展していった記憶がある。
しかし、そういった感傷的で艶(なまめ)かしい白昼夢がこのシリーズで読者に対し叶えられていないのはむろん、わざと定石をハズしている故だろう。まだ現実の性について何の経験も持っていない男子学生が、成熟した女性美を持つ女教師に心を奪われてしまう物語は、作者によってちゃんと僕らに与えられている(例えば『ふたりと5人』で『個人授業!の巻』や『その人の名は先生!の巻』など)。『セクシー亜衣』があえてこうした路線で構成されなかった理由は知る由も無いが、引用リンクした上記の2作品をみてみるとどうも、女教師が主役というより男子生徒を主人公としその視点で展開する場合にむしろ適する題材のように感ぜられる。ヒロインがあくまでもヒロインであるためには、こうした内容は非情に切り捨ててゆく必要があったのかも知れない。
『セクシー亜衣』はそれによって、ありきたりではない異色の"女教師もの"になっているのだと思う。
(別冊少年チャンピオン 1974年4月号)
(画像は、大都社 St comics『美美&亜衣』1994年3月3日初版 に収録された、描き下ろし版の亜衣。)
(別冊少年チャンピオン 1974年5月号)
(別冊少年チャンピオン 1974年6月号)
(別冊少年チャンピオン 1974年7月号)
(別冊少年チャンピオン 1974年8月号)
(別冊少年チャンピオン 1974年9月号)
(別冊少年チャンピオン 1974年10月号)
(別冊少年チャンピオン 1974年11月号)
(別冊少年チャンピオン 1974年12月号)
(少年チャンピオン 1972年9月1日 夏休み増刊号)
(別冊少年チャンピオン 1971年7月号)
(少年チャンピオン 1973年1月5日 お正月増刊号
(マンガ少年 1976年9月号)
(マンガ少年 1976年10月号)
美美は前回の初登場ではブラウスに紐タイという制服だったが、今回はセーラーの夏服を着ている。大都社・St comics版の描き下ろしイラストでは
(マンガ少年 1976年11月号)
(マンガ少年 1976年12月号)
(マンガ少年 1977年1月号)
(マンガ少年 1977年2月号)
(マンガ少年 1977年3月号)
(マンガ少年 1977年4月号)
(マンガ少年 1977年5月号)
(マンガ少年 1977年6月号)
*今回登場するオズマ少年はこの後、準レギュラーとなり、最終話までしばしば出演している。美美のそばにいることを作者によって許された幸福な男性キャラクターだ。大都社・St comics版の単行本では描き下ろしのカラーイラストが中表紙に用いられているが、彼はそこにも登場している(画像参照)。
(マンガ少年 1977年7月号)
(マンガ少年 1977年8月号)
(マンガ少年 1977年9月号)
(マンガ少年 1977年10月号)
(マンガ少年 1977年11月号)
(マンガ少年 1977年12月号)
(マンガ少年 1978年1月号)
(マンガ少年 1978年2月号)
(マンガ少年 1978年3月号)
(マンガ少年 1979年4月号)
(マンガ少年 1978年5月号)
(マンガ少年 1978年6月号)
(マンガ少年 1978年7月号)
(マンガ少年 1978年8月号)
(マンガ少年 1978年9月号)
(マンガ少年 1978年10月号)
(マンガ少年 1978年11月号)
(マンガ少年 1978年12月号)
(マンガ少年 1979年1月号)
(マンガ少年 1979年2月号)
(マンガ少年 1979年3月号)
(マンガ少年 1978年4月号)
(マンガ少年 1979年5月号)
(マンガ少年 1979年6月号)
(マンガ少年 1979年7月号)
(マンガ少年 1979年8月号)
*大都社 St comics版単行本『美美&亜衣』では、最後にこれが収録されている。台詞には「アシストいないから」という部分があって、この当時の執筆環境がうかがえる。
こうした乱子の人物像が、作者の発想から生まれてきたものなのか、編集部からのリクエストによって生まれたのか、そのへんの事情は分からない。いずれにしても乱子は、当時の世相をよく反映したキャラクターに思われる。伝統的な性役割から解放された女性像というのは、さかのぼればもっと昔から存在したかもしれない。だがそうしたものはおそらく、知識人や時の政府など、言わば「上から」与えられ示されたモデルだったのではないか? しかし1970年代すなわちこの『格闘ファミリー』が連載された頃の解放的な女性像はこれと異なり、「下から」、大衆の中で自然発生的に沸き起こり(?)広く人々に受け入れられていったような特徴を持っている。こうした時代背景は第1話の冒頭に描かれている女子プロレスのTV中継などにうかがえるようだ。
(月刊少年チャンピオン 1978年1月号)
(月刊少年チャンピオン 1978年2月号)
(月刊少年チャンピオン 1978年3月号)
(月刊少年チャンピオン 1978年4月号)
(月刊少年チャンピオン 1978年5月号)
(月刊少年チャンピオン 1978年6月号)
(月刊少年チャンピオン 1978年7月号)
(少年チャンピオン 1974年12月25日 増刊号)
(少年チャンピオン 1976年9月20日号)
(鏡 第2号 1973年7月31日)
(中学三年コース 1974年4月号)
(中学三年コース 1974年5月号)
(中学三年コース 1974年6月号)
(中学三年コース 1974年7月号)
(中学三年コース 1974年8月号)
(中学三年コース 1974年9月号)
(単行本描き下ろし 1980年10月)