カテゴリー「31 シッコモーロー博士/やけくそ黙示録」の記事

2008年2月 9日 (土)

はじめに

000ym2 このカテゴリでは、とにかく「キャラが立っている」(登場人物が生き生きしていて個性がはっきりしている)印象の作品集2冊、『シッコモーロー博士』および『やけくそ黙示録』を扱おうと思う。のちに"吾妻マンガ3大異常キャラ"として人気者になった(!?)らしい「ナハハ」・「三蔵」・「不気味」たちが脇役から昇格してついに主役をつとめるに至った諸作品は、ここに収録されている。
 これら2冊を合本した(ただし『大冒険児』を欠く)サン・ワイド・コミックス版『やけくそ黙示録』(1987年)では収録順序がこの逆になっているのだが、単行本の編集としてはそれで良かったにしても、紹介するならやはり、作品が発表された時系列にできるだけ従った方が分かりやすく、作風の変遷などで発見もあるのではと考え、この順で書かせていただくことにした。
 さて、これらの本に収録されている作品群は、短期間の連載だった(最も話数が多い『とつぜんDr.』で全21話)ものと読み切りで、長いシリーズは無い。結果、主人公をありとあらゆる角度から描写するといった事は行なわれていないのだけれど、シリーズが長く続くうちにどうしても発生し易いマンネリズムや読者の側の「慣れ」といったデメリットからも自由であったろうと思われる。回が少ないにもかかわらず主人公たちの印象が妙に強いのは、それが幸いしたところもあるのだろうか?
000ym1 さらに特筆できるだろう点として、ここで登場するキャラクターたちはほぼいずれも、特異な生い立ちを持っている。上述した「ナハハ」や「三蔵」はもちろんのこと、『やけくそ黙示録』のヒロインは『やけくそ天使』シリーズ主役の生まれ変わり(?)だし、『とつぜんDr.』の「不気味」はもともとは作者自画像のひとつだった(?)みたいなのだ。
 かように、たいそうクセの強い連中が集まった中へさらに加えて、珍妙な主人公たちが集まってきている。エッチ路線を少女マンガ雑誌で(!)やってのけた『真絵知くん』、正義の超人のはずなのに迷惑な事件ばかり引き起こしている『スーパーサクラン』、吾妻マンガには珍しく独特なデザインのコスチュームを与えられている『怪盗紅オヨヨ』、やはり同様に珍しい"原作つき"だった『ママ』、のちに吾妻マンガで時々描かれるようになる"セールスマン"ものの原型かと思える『セールスウーマン』……。作者の若いエネルギーや奔放な空想力がいかんなく発揮された記録がここには保存されている。ジュヴナイル(juvenile = 児童向き図書)的であるとしてもそのぶん、非常にとっつきやすい水準に調整されたSF要素も、吾妻ひでおの個性の発露としてはっきり出ており、楽しい。
 長いシリーズほどの知名度はないかも知れないが、すぐれた中・短編集となっている書籍が『シッコモーロー博士』と『やけくそ黙示録』ではないかと思う。

2008年2月10日 (日)

首切り反対の巻

01(月刊少年マガジン 1976年1月号)

 雪降る中、1つの傘に男女が入っている。その2人、寛子とひでおは、
「愛をたしかめあおう」
ということでホテルへしけこもうとするものの、いかんせん男は絶望的に貧しい。
「モウローホテル 100円!」
という看板があるのを見つけ、入ってみたのだったが、彼らを出迎えたのは……。

*『シッコモーロー博士』シリーズの第1話。ウェルズ(Herbert George Wells)のSF小説『モロー博士の島』(The Island of Doctor Moreau)のパロディか。"イカれた天才"という設定は、この「ナハハ」というキャラクターが主役をつとめるのにまさしく適切であったかも知れない(作者は『吾妻ひでお大全集』のインタビュー(p.49)に、マッドサイエンティストというと、アルフレッド・ベスター(Alfred Bester) による『マホメッドを殺した男たち』(The Men Who Murdered Mohammed)の博士が思い浮かぶといった主旨の発言をしている)。トビラを見れば一発で察しがつくとおり実にブラックかつムチャクチャな内容で、冒頭からとんでもないオチまでの全体を通して笑える怪作。
 「ごたいめーん」というのはTV番組『パンチDEデート』に毎回使われていた台詞。
 『失踪日記』(p.132)では本作に関し、「エッチとドタバタに隠してちょっとSFやれたのでうれしかったかな」とある。苦しかった当時の作者にとって、多少なりとも解放感を味わいつつ執筆できたシリーズだったのだろうか。
(注:以下は単なる思い出です)
 無気力プロが発行していたコピー新聞(のちに数ページのB5小冊子にまでなった)『ALICE』には、読者からのお便りを載せるコーナーがあったのですが、そこに以下のような投稿が紹介されていたと記憶します。いわく、「単行本『シッコモーロー博士』を買いに本屋へ行ったら、店番をしていたのが初恋の人に似た美女だったので、とてもではないけれど『シッコモーロー博士』ありますか、などとは言えなかった……」。その時にも思った事ですけれど、いったい誰がこういう題名を考え採用したんでしょう!? いまだに分からない……。

2008年2月11日 (月)

サイボーグ・チン子の巻

02(月刊少年マガジン 1976年2月号)

 サンマを焼こうとするも、真黒コゲにしてしまったモーロー博士。
「わたし料理へた 料理する人つくる」
と決め、あっさり人造美女を完成させた。
「おまえサンマやく」
と彼女に命じるのだったが、全裸の彼女は恥ずかしがって……。

*サブタイトルの「サイボーグ」(cyborg)は言わば「改造人間」の意であり、ここでは「アンドロイド」(android 人間そっくりのロボット)というのが適切かと思われる。編集者がSFにうとかったのだろうか。美女アンドロイドという題材は珍しくないだろうが、ここに展開するごとくブラックで意外なオチは、吾妻マンガならではだろう。

2008年2月12日 (火)

モーロー博士恋ぐるいの巻

03(月刊少年マガジン 1976年3月号)

 何を笑っているのかと思ったら、博士は空腹であるらしい。食料を得るべく町をさまようのだが、あんまりおかしな事をするものだから、女学生にぶん殴られる。それがきっかけでモーロー博士の恋が始まり、女学生の不幸も始まった……。

*主人公は(その自称が真実ならば)七つの博士号を持つ大学者であるらしい。台詞にある「ジョニ黒」とは「ジョニーウォーカー黒ラベル」の事で、当時、高級な洋酒の代名詞になっていたようだ。「石神井(しゃくじい)公園」は吾妻マンガに時おり出てくるが、東京都練馬区に実在する。

2008年2月13日 (水)

モーロー病院大繁盛の巻

04(月刊少年マガジン 1976年4月号)

「モーロー医院」「出血大サービス!!」という看板と垂れ幕がある所へ、救急車がやってきた。急患が運び込まれ、モーロー博士は執刀することになり……。 

*シリーズ最終回。
 「ここに入りたるもの すべての希望をすてよ」というのは、ダンテ(Dante Alighieri)の『神曲』(La Divina Commedia)で、地獄の門に書かれているという文言のパロディらしい。吾妻マンガにはSFだけでなく、こういったユーモアもいろいろ埋め込まれている。
 ……「やってはいけない事」を主人公がしでかすのを見て、読者は笑わされてしまう場合があるようだ。エロ(下ネタ)がそうだし、グロ(残酷)も本質としてそれに共通する点があるのだろうか?
 とうとう最後には外科医となって人間を切り刻みまくっているモーロー博士であるが、同じ「医者」でも『とつぜんDr.』シリーズでは全く異なる方向でギャグの探究がなされており、これも興味深い事ではないかと思う。

2008年2月14日 (木)

スーパー・サクラン その①

05(少年サンデー 1975年5月15日 増刊号)

 自力で(!?)空を飛んでいた1人の少年が、旅客機と空中衝突しそうになった。
「バカモンー!!」
 少年は窓ガラスをぶち割って旅客機の操縦室へ殴り込む。
「横断歩道では一時停止せんかい アホ!!」
 メチャクチャな文句を言う彼は操縦室で暴れ出し……。

*昭和30年代のガキは風呂敷をマントのように着用して「ごっこ遊び」をよくやったのだが、それを思い出させるような貧乏くさい格好の主人公が出てくるのに絶句させられる(このへんに引っかけて更に掘り下げたら、ますますヘンな個性となったかも?)。間違いなく超能力者ではあるらしいけれど全然正義の役に立っていないという、定石をひっくり返したキャラクターなのが吾妻流だ。

2008年2月15日 (金)

スーパー・サクラン その②

06(少年サンデー 1975年6月20日 増刊号)

 道を歩いているスーパー・サクラン。今度は不良学生たちと正面衝突した。
「気をつけろー!! バカ!! アホボケ!!」
と恐れも知らずケンカを売るサクランだが。

*「オレは西大泉学園二〇三六番地一円をとりしきるスーパー・サクランだぞ」
と名乗っているがこれは、当時の作者の自宅住所をもじっているらしい。
「にこちゃん」「こまったちゃん」は、幼児向けTV番組『ロンパールーム』が元ネタ。

2008年2月16日 (土)

スーパー・サクラン その③

07(少年サンデー 1975年7月?? 増刊号?)

「あー おなかすいた!」
 勉強を終えたところか、1人の女学生が食事をとろうと机を離れる。しかし、食べようとした「イカのシオカラ」のフタが、どうしても開かない。
「こまったーっ!!」
と彼女が泣くや、弾よりも速く飛んできたスーパー・サクランが部屋に乱入。
「本日はデビュー記念に特別無料でごほうし」
だと言うけれど……?

*主人公の天敵として「スーパー淳子ちゃん」が毎回登場するのだが、こちらはいたってマトモな人物。彼女との対比で、主人公がなおさらイカれているように映る。連載はこの第3話で終了しているため細かい描写にまで到達できなかったようだが、彼ら2人の素性についてもう少し読みたかったところ。

2008年2月17日 (日)

真絵知くん その①

08(別冊少女フレンド 1976年3月号)

 何かこう目つきにクセのある、小柄な男が町を行く。彼はセールスマンだった。玄関ドアを開けてくれた主婦に、なんとか品物を売りつけようと胡散臭い説明を始めるのだったが。

*これでどうして少女マンガ(!)なのかと思うが、ともあれ後半でちゃんと女学生が登場してはいる。家を1件ずつまわって品物の売込みをする"セールスマン"という職業は今では殆ど見かけないかも知れないが、この当時はまだ、真面目なものから詐欺のたぐいまで、実に色々な戸別訪問販売が行なわれていたと思われる。
 しかしそういった史実よりも何よりも、少女マンガ雑誌でエッチ系ギャグをやっているというのがこのシリーズの驚くべき点であって、いったい編集部が何を考えてこのような試みをやってのけたのやら全然分からない。エッチまんがは当時の吾妻作品に複数存在するにしても、少女マンガ雑誌でそれをやったというのはけだしこのシリーズが唯一で、企画的にはまことに謎めいた珍品と言えるのではないか?
 「ココアど~こ~だ」という台詞はCMパロディだったと記憶する。

2008年2月18日 (月)

真絵知くん その②

09(別冊少女フレンド 1976年4月号)

 デートの最中に彼氏が突然、別の女の子へと心変わりしてしまった。失意のあまり女学生は首を吊ろうとするが、そこへ珍客の出現。
「えー ごめんください ポルノの雑誌いかがでしょう」
とやって来たのは真絵知くん、およそこの状況に似つかわしくない人物なのだが……???

*今回は恋愛エピソードで幕が開き、やや少女マンガらしくなっている(?)。「エッチまんが」の要素も相変わらずあるのだが、さすがにかなり抑制されたようだ。

2008年2月19日 (火)

真絵知くん その③

10(別冊少女フレンド 1976年5月号)

 学校。教室ではたいそう厳しい調子で授業が行なわれている。と、そこの校長のところへふらりと入ってきたのが真絵知くん。エロ雑誌を読んでいた校長は慌てふためくも、
「ポルノ雑誌のセールスマンですが……」
と言われ、話にのってきたけれど?

*シリーズ最終回。クライマックスの後で、主人公の行動の動機について「種明かし」があり、なるほどと思わせるつくりになっている。で、そこからさかのぼって推察すると、この真絵知くんの「過去」にはいろいろありそうで気になるのだが……? 連載がもう少し続いていれば、さらに面白いキャラクターになったのではと思う。少女雑誌でエッチ路線という大珍品だっただけに惜しい。
 「東京のおかたも それ それ それ」というのは三波春夫の『おまんた囃子(ばやし)』(1975年)が元ネタだろう。

2008年2月20日 (水)

怪盗紅オヨヨ

11(冒険王 1976年1月15日号 新年大増刊)

 豪邸の寝室に、窓から何者かが入ってきた。
「怪盗紅オヨヨ参上!!」
と名乗るその美少女は、家人からカネをまきあげ去って行く。が、成果を調べてみれば意外、たいした稼ぎにはなっていなかった。
「もっとボロっちい家のほうがあんがいためこんでるかも」
と考えた彼女は、あえてボロい家へ入ってみる。そこに住んでいたのはしかし、本当にビンボーな少年1人で……。

*昔(1954年)ラジオドラマで『紅孔雀』というのがあったらしいのだけれど、そのへんがヒントになったのだろうか? テンポの良い展開が楽しい。この当時に欧州へ旅行するのは今よりもはるかに費用がかかったようだ。歌手である野口五郎のパロディらしい美形キャラクターが登場、ただし……(以下自粛)。

2008年2月21日 (木)

ゆきおんな

12(少年キング 1975年2月10日号)

 しんしんと夜はふけ、雪が降っている。部屋の中では1人の少年・あじますれおが机に向かい、必死で勉強の真っ最中。彼は数学で何度か最下位の成績をとっていて、今度またビリだったら教師から処罰されてしまうのだ。それが怖さに頑張っているのだったが、気ばかり焦って、とうとう半狂乱になる有様。と、そこへ屋外から、目の前の窓ガラスを誰かが叩く。
「バ~」
と彼の前に出現したのは美少女、そのうえなんと彼女は全裸だった……!!

*『失踪日記』(p.131)で「少年チャンピオンのライバル誌 少年キングに読み切りを描いた」とあるのは、この作品のことではないかと思われる。
 大騒ぎの後の大逆転が鮮やかでとても楽しい、北国が舞台のおとぎ話(関東以南では真冬でも、大きな「ツララ」ができることはまず無いだろう)。この当時に試験勉強していた男子学生の読者にとってはとりわけ、美しい夢として記憶に残ったのではないだろうか。最後のオチのナレーションは、つげ義春『李さん一家』(1967年)のパロディらしい。

2008年2月22日 (金)

ママ

13(別冊少年マガジン 1971年5月号)

「将来タイムマシンが発明されると思いますか?」
街頭で若い女が1人、通行人にインタビューを試みる。しかしどうにも思うようにはかどらない。すっかり嫌になってしまっていたら、
「ママ!」
と叫んで幼い少年が抱きついてきた。少年はケン坊といい、その父親らしい人が追いかけてきて、事情が分かった。
「まったくおどろきました 死んだ女房にそっくりなもんですから」
そして、予想外の事を頼まれる、
「お願いがあるんですが……この子のために一日だけここにいてくださいませんか?」
 ヒロインは弱りきってしまうが、結局、
「あした もう一度きますわ」
と約束して去る。
 しかし秘密があった。
 彼女は六十年後の世界からタイムマシンでやって来ていたのである……。

*吾妻マンガには大変珍しい、原作つきの短篇。原作者の辺見愚栄については残念ながら委細が分からない。

2008年2月23日 (土)

セールスウーマン

14(別冊少年マガジン 1971年7月号)

 ある日ほほえみをうかべて、かの女はやってきた。
「銀河デパートのセールスウーマンでございます」
 戸口へ出た男子学生は、ドアを閉めてしまう。が、
「わたしどもは不定形生物ですので どんな形にもかわれますの」
というかの女は、小さくなってカギあなから室内へ入ってきた。
 どうにかして追い返そうとするのだったが、なんと「恋人」まで売っているらしい! これにはさすがに心がぐらついて……。

*"セールスマン"は吾妻マンガでしばしば扱われている題材だが、商業誌上に発表された作品としては、おそらくこれが最初のものではないかと思われる。
 「恋人」まで売っていると知るや目の色を変えてしまう主人公に、思春期の少年たちは自分を投影してこの作品を読んだのではないだろうか。
 二転三転しつつ話は進み、これで平安……と思わせておいて意外な結末がくる。その構成は非常に巧みであり、教訓的な(?)寓意も含んでいるようだ。当時の少年マンガの有名キャラクター(ダメおやじ、まことちゃん、男おいどん、仮面ライダー)がちょこっと描き込んであるけれど、もしそれらがアシスタントによる加筆だったとしても、間違いなく作者によるらしい大人マンガの無断借用(? 東海林さだおのキャラクター)や『メリー・ポピンズ』(Mary Poppins)が元ネタらしい服装など、マニアックな遊びが入っている。
 吾妻ひでお、21歳の時の作品。
(単行本は、この作品で終わっている。)

2008年2月24日 (日)

<そこⅠ>阿素湖素子はO型美人!

15(マンガ少年 1981年2月号)

 枯葉の舞い散る中、1人の美少女が住宅街の路上にたたずんでいる。
「ここはどこ? あたしだれ? 思い出せない 何も思い出せないわ!」
と言って涙ぐむ彼女のそばを、1人の男子学生が走りぬけようとしたら……。

*『やけくそ黙示録』シリーズの第1話。
 いきなり他所の雑誌へ出現した阿素湖素子(あそこそこ)は、本編の(?)『やけくそ天使』シリーズ当時とは別人のようにロリータな容姿となっている。今回は私立中学を舞台として暴れる彼女だが、発表された雑誌『マンガ少年』が名称の通り未成年の読者を想定しているゆえだろう、セックスに絡めたギャグは無くSF的な(?)騒動を引き起こしている。
 セーラー服がいやに細かく描かれており、胸ポケットおよび左袖にある学年章(?)には特徴がある。このシェブロン(山型章)はアメリカ海軍下士官の階級章に似ているようだが、こうした記章を採用している学校は東京都千代田区の私立中学などに実在するようだ。そうした現実の制服デザインが参考にされたかどうか不明だが、新井素子は以下の様な目撃証言を記録している(『素子の大泉探訪』、奇想天外臨時増刊号『吾妻ひでお大全集』(1981年5月)初出?)。
 "疑惑の視線あびながらも、吾妻さん、楽しそうに女子高生とおしゃべり。何か、ファンの人なんですって。おしゃべりしながら、校章をスケッチしたりして。"
 もし、かような取材によってこのセーラー服デザインが決定したのだとすれば、「自分の同窓生に阿素湖素子がいた」みたいなことになった女学生たちにとってこの作品は、一体どんな"青春の思い出"となったことやら???
 なにはともあれ、『やけくそ天使』最終回からほぼ1年後に発表されたのが、この作品だ。

2008年2月25日 (月)

<そこⅡ>ゆがんだ受験のメダカさん

16(マンガ少年 1981年3月号)

 路上で進也と再会した阿素湖。進也は成人して、今は中学校の先生をしている身だった。彼の話では、受験生たちの間で奇妙な症状が流行しているそうで、受験ノイローゼによるものらしかった。この危機に自分の使命を感じ取った阿素湖は、問題に敢然と立ち向かう。

*「ふーしだ! この漫画には風刺がある!」
と阿素湖が叫んでいたりするのだが、別に堅苦しい内容ではなく、不条理ギャグになっている。かつて手塚治虫は「××ー×のないコーヒーなんて」というTVのCMで「風刺のない漫画のようなものですね」という台詞を述べていたように記憶するが、もしかすると阿素湖の脳裏にはこの言葉が浮かんでいたのだろうか?
 進也は阿素湖の年齢が常人の成長とまるで違うことに戸惑っているのだけれど、そういう彼も実はここで、読者の存在する時間とは一致しない速度で成人になり登場している……。
(注:以下は単なる思い出です)
 喫茶店カトレアで最初にお会いした時だったか、吾妻先生は学校問題を扱ったドキュメンタリーの書籍を買われ、所持しておられたようです。それを見て沖由佳雄さんが質問したら、
「(読んで)ネタにする」
というのが先生のお返事でした。少年マンガを主な活躍の場としておられた吾妻先生はやはり、児童生徒たちの日常についてそうとういろいろ取材しておられたのではないかと思われます。

2008年2月26日 (火)

<そこⅢ>ゆけ! 不条理ロマコメ!

17(マンガ少年 1981年4月号)

 ある朝、目覚めてみたら、髪の毛が真っ白。そこに、
「進也おはよー」
と阿素湖に声をかけられ、
「おねーちゃん あぶないから なれないことはよしなよ」
と彼女から鍋を取り上げようとする進也。しかし鍋はひっくり返り、
「ああん 初めて作ったおみそ汁が………」
と阿素湖は涙をこぼす。
 はて、何か様子がおかしい……!?

*少女マンガ特有の技法をいろいろ駆使した実験的なギャグ。絵的な点だけでなく、定番としてよくありそうなエピソードを積み重ねて話を進めている。『翔べ翔べドンキー』最終回の掲載は月刊プリンセス1979年12月号だったが、この作品の発表はその1年4ヶ月後なので、進也が「しょーこりもなく少女漫画を」うんぬんと語っているのかも知れない。

2008年2月27日 (水)

<そこⅣ>素子ちゃん永遠に!

18(マンガ少年 1981年5月号)

「最近よーやっと女子中学生もイタについてきた感じ」
ということで元気に頑張る阿素湖。しかし彼女は保健室に入るや……。

*これがシリーズ最終回。
 『贋作ひでお八犬伝』のエピソードを別にすれば、このシリーズが阿素湖素子の本格的な生まれ変わり(?)後の物語となるはずだったろうに、残念ながら掲載誌だった『マンガ少年』が1981年5月号で休刊してしまったらしい。
 本シリーズの題名はたぶん、映画『地獄の黙示録』(Apocalypse Now 日本公開1980年)がヒントになったのではと思われる。とはいえ、そもそもにおいて「黙示録」と言うと普通は、聖書の巻末にあるそれを指すことになるだろう。「ヨハネ黙示録」は聖書の最後を飾っているようだが、この『やけくそ黙示録』はマンガ少年の最後を飾ることになってしまったのだった……。
「今 思いついたんだけど レズ漫画ってあんましないから 穴場かしれんな」
と言う阿素湖に女学生が、
「同人誌なんかではわりと多く……」
などと答えており、いかにもマニア向け雑誌だった『マンガ少年』らしい(?)台詞がある。
 敵の正体を突き止めようとする推理物や、超能力者テーマのSFなど、いろいろな要素を含有しつつ、このシリーズは謎めいた結末へと向かう。おそらくはっきり言えるのは、阿素湖素子が、いつ再び、どんな形で僕らの前に帰ってこようと何ら不思議は無いという事ではないだろうか……?

2008年2月28日 (木)

ホーキ売りの季節

19(マンガ少年 1980年8月号)

 1人の若者が、寒い戸外で野宿しようとしている。
「酒でも出してあったまるか」
とひとりごちつつ、彼はホーキを1本取り出し、勢い良くひと掃き。
 すると酒ビンの山が出現した!
 実はこれ、ひと掃きすればこれまでのたいくつな世界が消えて、まったく新しい夢のような国を作り出す不思議なホーキなのだった……。

*絵筆やペンなら話も分かりやすいのだろうが、ひねって「ホーキ」になっているのが、この作品を何ともユニークなものにしている理由のひとつだろうか。「ホーキ」となるとやはり魔法使い(の乗り物)といったイメージがあるだろうし、更に加えて「掃く」という行為には、創造の正反対である「破壊」の意味合いも含みそうだ。
 「チョペック」という名前はチェコの作家カレル・チャペック(Karel Čapek 『R.U.R.』や『山椒魚戦争』(Válka s mloky)の作者)をもじっているものと思われる。少女の「リップ」という名前に何か元ネタがあるのかどうか分からない。
 こうした複数の登場人物に名前があるというのに、肝心要の主人公は最後まで(あえてそうなのだろうけれど)"無名"のままになっている。
 巨匠と対峙する、無名な若者の運命やいかに……?

2008年2月29日 (金)

カルテ1

20(ビッグコミックスピリッツ 1980年11月号)

 風の吹く町に、やってくる人影が見える。2人……医師と看護婦のようだ。
「病んでいる。この町は病んでいる。」
「まァ やっぱりここも……」
 奇異な風貌の医師と、可愛い看護婦。はたしてこの人たちは一体、これから何をしようとしているのだろうか?

*『とつぜんDr.(ドクター)』シリーズの第1話。とうとう主役にまでなった「不気味」くんの物語である。
 医師が主人公というのは吾妻マンガに多くはなく、シリーズでは本作の他『シッコモーロー博士』くらいではないかと思われる。が、『シッコモーロー博士』は医師と言うよりマッドサイエンティストとして活躍(?)しているので、厳密に言うなら、医師が主人公のシリーズ作品はこれが唯一のものかも知れない。
 医師は、何をする人か? 答えは明白だ、病と戦い、人々に健康をもたらすのがその使命であろう。
 しかし病とは、また健康とは何か?
 この『カルテ1』では以下のような台詞のやりとりがある。
「そんなこと変態ですわ!」
「きめつけちゃいかん。幼児期における心的外傷のなせるわざだ。」
 主人公の不気味くんは、けだし外科医ではないかと思えるのだけれど、彼の扱っている病が、人間の身体機能の保守にかかわるものだけではなく、精神の領域にまで及ぶとすると、事はいささか難しい。
 「病(あるいは不健康)」は、好ましくない状態を指し、出来うる限り「健康」と言う状態へ修正されるのが常だろう。
 だが「健康」という言葉は(それが精神について言われる場合はとりわけ)、時に曖昧なのではないか?
 単に平均的・一般的・多数派・凡庸であるに過ぎないものが「健康」とされ、それが万人の目指すべき理想・正しい絶対的基準といったふうにすりかわってくるとしたら、ある種の暴力を引き起こしかねないような気がする。
 多数(健康)から外れたものは、異常で忌まわしくけがれた、駆逐されねばならぬ小数(病)として裁かれ、もしそこまでゆかずとも、存在価値が乏しく黙殺ないしは軽蔑して構わない、歪んだ醜いものとして退けられるのではないか?
 こういった意味で「不健康」を「健康」へと修正するのが「治療」であるとすれば、このシリーズの主人公である不気味くんは、「治療」は行なっていないように思えるのだが、どうだろう。
「病んでいる。この町は病んでいる。」
と彼は言う。こうした発言をする彼は、アブない人物に過ぎないのだろうか。それとも、彼の言っている事こそが本当で、実はアブないのは僕らの暮らすこの社会の方なのだろうか……?
 なお、このマンガではフキダシの中の台詞に、ちゃんと句点(文の切れ目につける「。」記号)が付されているようだ。省略される場合が多いこうした記号をちゃんと書いてあるあたり、ひどく几帳面な印象を受けるギャグマンガではある。

2008年3月 1日 (土)

カルテ2

21(ビッグコミックスピリッツ 1980年12月号)

 ビルの屋上、タコ焼き屋台のそばにあるテーブルで、1人の娘が手紙をしたためている。
「シゲオさん さようなら 私はあなたにふられたので あてつけに飛び降ります TVで見てね カナ」
 溜息をつき、娘が手紙を封筒へ入れたら、誰かが彼女の膝をつついて……。

*まともな人が振り回されるクレージーな世の中。僕らの社会で人命は、何よりも大切なものとして本当に尊重されているかどうか?

2008年3月 2日 (日)

カルテ3

22(ビッグコミックスピリッツ 1981年1月号)

 商店街。おせち料理の素材にと、魚屋が大はりきりで商売している。と、そこへ突然、不気味くんが登場、大トロへ何度も何度もメスを突き立てる。
「私 夕べ 夢見ました。」
 彼はその奇行の理由を語り始める……。

*アニミズムという考え方があるが、その立場で世界を見たかのような幻想は、吾妻マンガで時々描かれているように思える。

2008年3月 3日 (月)

カルテ4

23(ビッグコミックスピリッツ 1981年2月号)

 泣く赤ん坊を背負って、母親(だろう)は子をあやしつつ道を行く。ふと前を見れば、道の真ん中に正座している2人がいる。そしていきなり、
「医者」
「看護婦」
というプラカードを掲げるのだった。しかもそれに合わせて、あらゆる所に似たようなプラカードが出現し……。

*形而下(けいじか=目に見える)の物事であれ、形而上(けいじじょう=目に見えない)の物事であれ、僕ら人間はそれらに名前をつけている。でも、その方法で、本当に全てをとらえる事ができているのだろうか? もしかするとそれは、全てにいちいち名札を立てているような作業なのかも知れない。それをもし光景として見たら、世界はかなり奇怪なものになってしまうのかも……。

2008年3月 4日 (火)

カルテ5

24(ビッグコミックスピリッツ 1981年3月号)

「孤独なろーじん。」
と自分で言っている彼のところへいきなり、
「きゃー 先生見てー、孤独な寝たきり老人よー ホントにいたわよー。」
と叫びつつ看護婦が、そして不気味くんが入ってきた。
「何しに来たんだ てめーら!!」
と老人は怒り……。

*老人についての現在の問題を扱うと共に、未来予測(?)も入っている回。

2008年3月 5日 (水)

カルテ6

25(ビッグコミックスピリッツ 1981年4月号)

 露天商が干物を売っている。
「北海道直送だ。千代の富士もこれ食って大関になったべさ。」
と店主が語っていると、不気味くんが看護婦と一緒に登場、
「ミイラ売ってる。」
と言い出して……。

2008年3月 6日 (木)

カルテ7

26(ビッグコミックスピリッツ 1981年5月号)

 鉄道の駅のホームから、1人の男が吸殻を線路へと投げ捨てた。突然、不気味くんがホームへ飛び込み、そこへ入ってきた列車が急ブレーキをかける! はたして……!?

2008年3月 7日 (金)

カルテ8

27(ビッグコミックスピリッツ 1981年6月号)

「風薫る五月、気持ちのいい季節になりましたね、先生。」
と季節を楽しむ看護婦をよそに、不気味くんは何か別の事をしている。
「何してるんですか?」
「「そよそよ」集めてる。これに塩ふって一年漬けておくと……」

*このあとカンガルーが登場するのだが、なぜかこの有袋類はほぼこの時期に、「スクラップ学園」「ぶらっとバニー」でもちょこっと顔を出している。

2008年3月 8日 (土)

カルテ9

28(ビッグコミックスピリッツ 1981年7月号)

 雨の降っている街で、タクシー乗り場にいた不気味くんと看護婦。そこへヤクザ者らしき男が列へ割り込んできた。
「なんか文句あんのかい? そっちの兄さんはどうだ?」
 そう言って近寄ってくる男に、不気味くんは……。

*珍妙な逆転劇にアイディアが光る。

2008年3月 9日 (日)

カルテ10

29(ビッグコミックスピリッツ 1981年7月15日号)

 満員電車の中、少女の悲鳴があがる。
「まァ ひどい。」
「スカート切り魔よ。」
 ちょうど乗り合わせていた不気味くんは、被害者の少女を診てやる。
「ケガはないようです。」
 車内は騒然となり……。

*今回は看護婦が同行しておらず、彼女はトビラで水着姿を披露しているだけである。
 台詞にある「柏原よしえ」は歌手(のちに柏原芳恵と改名)。「篠塚ひろ美」は自動販売機で売られていた雑誌『少女アリス』などで活躍した(当時の芸名は異なるという)モデルのようだ。
 なお、今回から始まった不気味くんの単独行動(相方? だった名前不明の可愛い看護婦が全く登場しない)は、なぜかしばらく続く。

2008年3月10日 (月)

カルテ11

30(ビッグコミックスピリッツ 1981年7月30日号)

 にぎわっている海水浴場。1人の娘が海から上がってきた。ふと彼女が見ると、ヤドカリを手に乗せて何かしている男がいる。砂浜に正座しているその人物こそ不気味くんだった……。

*石原裕次郎の歌に『錆びたナイフ』というのがあって、それを元ネタにしたらしいくだりがある。

2008年3月11日 (火)

カルテ12

31(ビッグコミックスピリッツ 1981年8月15日号)

 実に健康的で平穏な家庭。幸福の見本みたいな一家団欒のうちに食事をしていたら、誰か訪ねてきた。戸口に現れたのは不気味くん。
「病気………買って………もらえませんか………」
 そう言われ、応対に出た主婦は戸惑う。しかし何かを聞き違えたわけではないらしく……。

*これで見ると不気味くんの専門は精神科なのだろうかと思えるが、はて。
 なぜ「ドレス・メーキング」なのやら不明。子供服の完成見本を着た女児たちの写真が掲載されているので、という事か?

2008年3月12日 (水)

カルテ13

32(ビッグコミックスピリッツ 1981年8月30日号)

 夜の公園らしき場所で、セーラー服の少女が1人、何やら楽しそうにしている。
「おじさま。遊ばない?」
 笑顔でそう声をかけられた中年男は狂喜乱舞、しかし……。

*まったくもって不気味くんは「無敵」のキャラクターだと分かる回!?

2008年3月13日 (木)

カルテ14

33(ビッグコミックスピリッツ 1981年9月15日号)

「あじま女子高等学校」では、女学生たちが雑談に興じている。
「あー、身体検査か、やだなー。」
「あの、オジン医者が変態なのよね。」
「あら、今日は別の お医者さん来るらしいわよ」
 この噂に全員沸き返るが、やって来たのは……。

*押し入れでどうのこうの、というのはいかにも日本的?

2008年3月14日 (金)

カルテ15

34(ビッグコミックスピリッツ 1981年10月30日号)

 住宅街だろうか、路上で子供たちがケンカ(?)の最中。通りかかった不気味くんが見てみると、3人の少年が1人の少女を袋叩きにしているのだった。その理由を問いたずねてみたら……。

*SFなお話なのだけれど、「読者が喜ぶのは結局……」という風刺になっている?
 このへんで初出時の発表順序と単行本収録順序にズレが発生しているが、理由は分からない。

2008年3月15日 (土)

カルテ16

35(ビッグコミックスピリッツ 1981年10月15日号)

 台風によるものか、町は水浸し。そこを流れてゆく樹の上に、なぜか不気味くんが1人。そして彼の眼前に現れたのは。

2008年3月16日 (日)

カルテ17

36(ビッグコミックスピリッツ 1981年9月30日号)

 スナックだろうか、客たちはカラオケで盛り上がっている。その店のカウンター席に1人でいた不気味くんにも声がかかった。
「お客さん、お願いしますわ。」
と女に言われ、
「歌はにがてなので………芸をします………」
と答えて立ち上がった彼が見せる芸とは一体?

2008年3月17日 (月)

カルテ18

37(ビッグコミックスピリッツ 1981年12月15日号)

 大病院。
「次の方どうぞー。」
と呼ばれて診察室へ入ってきたのが不気味くんだった。
「ちょっとかぜを……」
と言うので女医は、
「ハイ、熱はかって胸出して!」
と診察にとりかかるのだったが。

2008年3月18日 (火)

カルテ19

38(ビッグコミックスピリッツ 1981年11月30日号)

 風が吹き抜けるビル街を、不気味くんが歩いている。ふと彼は、ビルの入口前に寝そべっている男に気付き、近寄って……。

*しばらくお休みしていた可愛い看護婦がちょこっと登場、ただし(以下略)。

2008年3月19日 (水)

カルテ20

39(ビッグコミックスピリッツ 1981年11月15日号)

 森だろうか、不気味くんが歩いている。前方には山猫(?)がマツタケたちを静めようとして困っているのが見える。
「どうしたのですか?」
と彼がたずねてみたら……。

*宮沢賢治『どんぐりと山猫』は、吾妻マンガで何度かパロディが描かれており、これはそのうちの1つ。
 台詞にある「かたれぷし」(catalepsy)は「強硬症」と訳される精神医学用語のようで、精神病患者などが不自然な姿勢を長時間そのままとり続けることを指すらしい。

2008年3月20日 (木)

カルテ21

40(ビッグコミックスピリッツ 1981年12月30日号)

 どうやら舞台とおぼしき所に、看護婦と不気味くんが豪華に登場。
「まァ、ロミオ! あなたはロミオなの!?」
と看護婦。シェイクスピア劇が始まるみたいなのだけれど?

*これが最終回。
(注:以下、結末に言及している部分があります)
 回を重ねるにつれて医療行為からだんだん離れていったドクター、不気味くんの物語だが、とうとうここへきて「劇中劇」という意外な展開になる。
 フィクションの世界の住人である主人公たちが、さらにフィクションを演じるという「入れ子」構造になっている理由は良く分からない。とはいえ、
「今回は"創作"を主題としてお話をします」
という宣言または強調になっているようにも思える。ドラマというものの定石ないし基礎を構築確立した作家であろう、シェイクスピアの劇がここで演目になっているだけに尚更だ。
 で、そこへ作者自画像が登場し、「よーきに」やるよう演出をつけようと監督する。
 ところが主人公である不気味くんは強固な自我を持っており、もはや作者にさえ思い通りには出来ない。ついに!? と思わせる状況になっても、彼は最後の最後までマスクを外さず(これは現在なおそのままだ)、派手な衣装をあてがっても、鐘だか鈴だかを「ちりーん」と鳴らすだけ。いわばドラマの神様であろうシェイクスピアが不気味くんを従わせられなかったように、結局、作者も彼にはかなわない。
 あらかじめ物語が決まっており、登場人物がそれに合わせて動いているようなものは、創作として失格なのだと何かで読んだ事がある。その辺から考えると、不気味くんは、どんな定石もぶっ壊してしまう厄介なキャラクターであるとはいえ、むしろフィクションの本質に近い人物像なのかも知れない。何とかして彼に「反応」させ物語を進めようとする作者にとっては、ありとあらゆる前衛的な実験を要求する、極めて手ごわいキャラクターだったのではなかろうか……。

2008年3月21日 (金)

ベスト典(テン)

41(月刊プレイコミック 1980年?月号)

 TVの歌番組、ア・ベストテン。司会者2人の案内で今週の人気上位10曲が次々と紹介されてゆく。登場するのは人気歌手に芸能人、そして……。

*トビラからしてヤケクソ的に明るい、とにかくもう、ひたすらやたらと明るい、クレージーなショーが展開してゆく。今では歌謡曲というものがマニアックな娯楽になってきているかも知れないが、かつてはTVでかなりの視聴率を取る、芸能の花形だったようだ。1970年頃からTVで歌番組を観ていたらしい作者(『二日酔いダンディー』などにもその種のネタが登場している)は、時代の変化を敏感に察知して、それをデフォルメし描いたのだろうか。
 SF映画『サイレント・ランニング』("Silent Running"1972年)や『宇宙人東京に現わる』(1956年)、C・L・ムーア(Catherine Lucille Moore)のSF小説『シャンブロウ』("Shambleau"1933年)などのパロディが入っているようだ。
(単行本『やけくそ黙示録』サン・コミックス版ではこのあと『大冒険児』のPART1および2が収録されているのだが、このシリーズについては後日、別のカテゴリーで紹介させて戴こうと思う。)

2008年3月22日 (土)

エスパー三蔵

44(プレイコミックベスト 1981年1月20日号)

 エスパー三蔵はアルバイトにモデルをしながら正義のために働く少年……のはずなのだが???

*初出時には『スーパー三蔵』という題名だったらしい。『ななこSOS』シリーズの第1話、『ACT.1 ななこ目覚める』では同名のマンガが劇中に登場しているが、この読みきり作品と別につながりは無いと思える。藤子不二雄『エスパー魔美』のパロディが散見され、実際そのヒロインらしき少女も後姿で1コマ登場(?)。
 なお三蔵は複数のシリーズ作品に出演しており、年齢や服装がその都度いろいろ異なるキャラクターなのだが、"頭髪"があるもの、主役をこなしているものは、たぶんこの作品1本だけだろう。
(単行本『やけくそ黙示録』サン・コミックス版は、ここで終わっている。)

その他のカテゴリー

0 (Deutsch) | 0 (English) | 0 (español) | 0 (Français) | 0 (Italiano) | 00 (NOTE) | 00 (索引) | 01 不条理日記 | 02 幕の内デスマッチ!! | 03 ミニティー夜夢 | 04 チョコレート・デリンジャー | 05 二日酔いダンディー/ざ・色っぷる | 06 翔べ翔べドンキー | 07 メチル・メタフィジーク | 08 オリンポスのポロン | 09 ときめきアリス | 10 スクラップ学園 | 11 ひでお童話集 | 12 ななこSOS | 13 十月の空/CD-ROM/夜の帳の中で | 14 やけくそ天使 | 15 Oh!アヅマ/便利屋みみちゃん | 16 やどりぎくん/ハイパードール | 17 好き!すき!!魔女先生/魔法使いチャッピー | 18 ふたりと5人(前) | 19 ふたりと5人(後) | 20 ぶつぶつ冒険記/ぱるぷちゃんの大冒険 | 21 エイト・ビート/きまぐれ悟空 | 22 吸血鬼ちゃん/魔ジョニアいぶ | 23 みだれモコ/パラレル狂室 | 24 セクシー亜衣/美美/格闘ファミリー | 25 銀河放浪 | 26 エイリアン永理/クラッシュ奥さん | 27 ネムタくん / チョッキン | 28 ぶらっとバニー/贋作ひでお八犬伝 | 29アニマル・カンパニー/人間失格 | 30 おしゃべりラブ/ちびママちゃん | 31 シッコモーロー博士/やけくそ黙示録 | 32 ひでおランド/Hideo Collection | 33 (その他の作品) | 80 (海外での"Hideo Azuma") | 95 (年表など) | 95b (AZICON) | 96 (関連出版物など) | 97 (関連品目など) | 98 (無気力プロのこと) | 99 (TVアニメ化作品)