カテゴリー「96 (関連出版物など)」の記事

はじめに

 このカテゴリーでは以下のようなものを紹介しています。 

(1)共著または挿絵を担当した本
(2)研究書
(3)その他

 これらは"あらすじ"を紹介するのが難しかったり、そもそも吾妻ひでお本人による創作著作物ではなかったりするので、ほんらい当ウェブログの取扱い範囲外になるでしょう。
 とはいえこれらの書籍類には面白い要素がたくさん含まれており、大変参考になると思う。そこで、いくつかを資料としてこのカテゴリーにまとめてみたいと思います。
 ただし以下の記事はあくまでも出版物に書いてある内容からひろっているだけで、吾妻ひでお本人や関係者の校閲を経てはいません。よって、もし原典たる参考資料に事実と異なる記載があった場合は、それもそのままになってしまうでしょう。また、作者に関する事というのは、作品から離れ、ゴシップ(うわさ)を扱ってプライバシーの侵害となる危険が常につきまといそうです。それゆえ記述と公開にあたっては個人情報の保護を最優先すべく努めたいと思います。こうした点なにとぞご理解ください。

ロック冒険記

(手塚治虫・作 『少年クラブ』掲載)
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 吾妻ひでおは、数ある手塚作品のなかでもとりわけ、このシリーズに強く影響を受けたのか、いくつかの自作(『SF玉手箱』『幕の内デスマッチ!!』)やインタビューなど(『吾妻ひでお大全集』p.48、『ニッポンのマンガ』p.199)で言及している。
 手塚治虫は昭和26(1951)年に『少年』で『アトム大使』の連載が始まり、そのあと『少年クラブ』から依頼を受けて当シリーズを執筆したようだ(昭和27(1952)年7月号~29(1954)年4月号)。しかし、
「「鉄腕アトム」よりもっとこみいって、空想的なこの筋立ては、当時のほとんどのこどもたちには、よく理解されずにおわってしまったようでした」と記している(『手塚治虫漫画全集8 ロック冒険記②』あとがき)。また、
「この作品のヒントは、チャペックの「山椒魚戦争」です」(前同)とのことで、人類が他の知的生命体を"奴隷"として扱いその生殺与奪の権を握るという重いテーマを描いている。類似テーマの手塚作品には『人間ども集まれ!』があり、こちらでもチャペック(Karel Čapek)の『山椒魚戦争』(Valka s mloky)について、あとがきに言及があったと記憶する。しかし後者が青年誌で発表された作品である(だからか性を玩具また商品とする文化についての風刺も含んでいる)のに対し、この『ロック冒険記』は全くの少年向けとして執筆されているのだから、子供を相手にこうしたテーマで物語ろうとした手塚の創作態度には唸らされる。
 手塚治虫漫画全集でのカバーイラスト(画像参照)では、主人公達の肖像があえて全く色彩の無いような描かれ方をしているのだけれど、これは作者が当シリーズを、たんなる娯楽冒険活劇として受け取っては欲しくないと願ったからだろうか?
 こうした"渋い"作品が手塚マンガで特に印象に残ったという吾妻ひでおはやはり、平凡な少年読者ではなかったのだろうと思う。

フレドリック・ブラウン

Brown 『私の読書体験記 どくたい』によれば、吾妻ひでおは中学生の時に『路傍の石』を読んで暗澹(あんたん)とした思いに取り憑かれたという。そうした経験の反動もあったのだろうか、図書室で星新一を読み「世の中にはこーゆー小説もあるのかー」と衝撃を受けたことを語っている(『こうして私はSFした』)。続いて本屋でブラウンを見つけてSFを読み始め、そうこうするうち「おれって…SFだったんだ」と自分を知るに至ったらしい。
 この作家、フレドリック・ブラウン(Fredric William Brown 1906年10月29日生~1972年3月11日没)にはとりわけ感応するところがあったのか、吾妻ひでおは何度かその名前をインタビューなどで挙げている。
 画像は創元推理文庫『未来世界から来た男』のカバー。この書籍は同文庫SFマークの第一弾として発行されたらしく(?)初版が1963年9月6日で、原著(Nightmares and Geezenstacks)は1961年に出版されたようだ。その巻末にある『ノート』(筆者は厚木淳)によればしかし、
「ブラウンにSF作家あるいは推理作家という単一のレッテルを貼るよりも、むしろ彼の本質が短篇作家であり、その自由奔放な発想を定着させる形式として推理小説とSFを効果的に使いわけていると見るのが妥当ではあるまいか。」
 とのことで(p.251)、実際この書籍でもその半分は推理小説(?)が収録されている。推理小説とはいっても犯罪やトリックの謎解きを興味の中心にするタイプのそれではなく、ヘンな艶笑小話みたいなのも含まれており、大変ユニーク。SFも、読むうえで科学知識が要求されるタイプのそれではないため、その玄関が非常に広く万人向けになっている。主人公がひどい目に遭うブラックユーモアなオチが多いのは、作者のブラウンが生涯に2度の世界大戦を目撃し、現実というものの暗部も知悉させられていたゆえか?
 なにはともあれ、短篇というかショート・ショートのお手本を集めたような内容に思える。吾妻ひでおもこうした作品集から多くを学び取ったのだろうか。
Fb_wmu なお、ブラウンの作品には長編もいくつかあり、『発狂した宇宙』(WHAT MAD UNIVERSE)はその1つであるらしいのだが、こちらはハッピーエンド(?)。画像はハヤカワ文庫のもので、巻末の『解説』では筒井康隆がペンをとって、これを「多元宇宙SFの決定版」と評価している。

ロバート・シェクリイ

Sheckley 好きなSF作家として、吾妻ひでおがブラウンと共にしばしばその名前を挙げているのがロバート・シェクリイ(Robert Sheckley 1928年7月16日生~2005年12月9日没)。やはり短篇が得意な人のようで、ハヤカワ文庫版『人間の手がまだ触れない』(画像はそのカバー)にある解説(筆者は高橋良平)によれば、
「六〇年代、日本SF界の草創期のころ、SFの普及・浸透の大任をはたしたのが、フレドリック・ブラウン、レイ・ブラッドベリ、そしてロバート・シェクリイの三羽烏だった」
という(p.293)。
 門外漢の目で読むに、シェクリイもまた(当然なのだろうけれども)強い個性と特徴を持つ作家のようだ。僕がとりわけ感心したのは、
”未知のものを描いてみせる”
という点で、設定が細かいのか、叙述によるのか、登場する架空の生物や制度や社会構造などには奇妙な説得力がある。
 たとえば表題作『人間の手がまだ触れない』(Untouched by Human Hands (初出時タイトル One Man's Poison) 1953)は、食料が底をついてしまい、無人の惑星へ緊急着陸した地球人がなんとか食いものを得ようとし、宇宙人の倉庫を必死に調べる話なのだが、これなどは物語それ自体よりも、主人公たちの眼前に出てくる”地球人類にとって未知の物品”にいちいち存在感があって、読者は本当に”未知”を目撃しているような気分にさせられそうだ(こうした点はしかし、もしかするとSF慣れしているマニアより、SF免疫を持たぬ読者にとって面白いのかも知れない?)。
 同じ「短篇」であってもシェクリイの作品はブラウンのものより長めなのだが、その理由はこういった細部の描写に枚数をさくことで説得力と臨場感を実現しているゆえであろうかと思う。
 公式ホームページにおいて吾妻ひでおは、読書評で時々「リアリティなし」と述べていたようだ。これがもし、「物語とりわけフィクションでは、読者をその世界へ引き込む努力が大切だ」という信念の現れであるとしたら、これはシェクリイの読者であったゆえにたたきこまれた事なのだろうか?

筒井康隆

Tutui 吾妻ひでおは自作において、筒井作品のパロディをしばしば描いている。またインタビューでは自身が筒井ファンであること、そのギャグに「すごく影響受けた」ことを語っている(『逃亡日記』p.158)。
 筒井康隆の初作品集であるらしい『東海道戦争』(画像は中公文庫版のカバー)でも、そこに収録されている『チューリップ・チューリップ』などは、SFギャグになるかと思う。
 『チューリップ・チューリップ』の主人公はタイムマシンを作り、一応これに成功するのだが、そのヘンな展開に笑わされる。普通、タイムマシンの話とくれば、未来や過去で行なう何らかの行動に焦点を合わせる事になりそうなものを、この作品では時間旅行を終えた後、「現在」で発生する或るトラブルが細かく描かれる。進めば進むほど事態が悪化しどんどんややこしい事になってゆくという展開は、同様に時間テーマの話である『しゃっくり』、ロボット物の『うるさがた』、そしてやはりロボット物であろう『やぶれかぶれのオロ氏』などでも描かれている。
 筒井作品のギャグは「ヘンな出来事が発生する」という状況そのものが持つ意外性と同時に、そうした異常な場にとらえられた人間が何をどう考えどう行動するかという人間描写が実に細かく、笑わされるとともに感心させられる。
 (執筆当時の)日本の現状から演繹されたような要素もあるので、外国の読者や、日本人であっても当時の世情を経験していない若い世代にはうまく全部が伝わりにくい部分もあるかも知れない(?)。
 ともあれ、小さな薄い紙を一枚一枚ていねいに貼り重ねていって造形するような筆致はたいへん精密であり、僕なぞは笑うよりも驚くところが大きかった。うまい表現が思いつかないのだけれど、論理的で硬派なギャグ、とでも言うべきか。
 また、ギャグが皆無の作品もある(『群猫』ほか)。多種多様な作品を描けるその才能と実力に、吾妻ひでおは感銘を受けたのだろうか。

シオドア・スタージョン

Ss シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon 1918年2月26日生~1985年5月8日没)は短篇の巨匠とされる作家なのだそうで、1987年には『シオドア・スタージョン記念賞 (Theodore Sturgeon Memorial Awards)』がもうけられたという。吾妻ひでおはスタージョン作品も好みであるらしく、長編では『人間以上(More Than Human)』が最も好きだ(「女の子も好きだけど、ロクな人間が出て来ない所」に魅かれた)とインタビューで答えている(1981年『吾妻ひでお大全集』p.47)。『人間以上』(国際幻想文学大賞(International Fantasy Award)受賞作品)は超能力者テーマの物語として、もしかすると吾妻マンガに複数ある超能力者もの(『ななこSOS』ほか)に影響を与えているのかも知れない? またスタージョンには『きみの血を(Some of Your Blood)』という吸血鬼テーマの作品や、探偵小説もあるらしく、このへんも吾妻マンガと微妙に重なるところがあるような気がするのだけれど、どうであろうか。
 画像は創元SF文庫『時間のかかる彫刻』のカバーなのだが、この短編集にある同名作品(Slow Sculpture)は、ヒューゴー賞 (The Hugo Awards)とネビュラ賞(The Nebula Awards)の両方を受賞している。そこで恐縮しつつこの本を読み始めたのだけれど、
「これSF!?」
というのが最初に懐いた僕の感想また驚きだった(無知蒙昧な一読者の駄文をなにとぞ御寛恕願いたい。きちんとした評論はその能力を持つ方々が公開しておられるだろうし、ここで僕ごときにできる事と言ったら、拙劣極まりなくとも「自分の考え」を作文するくらいしか無いんだもの)。とにかく「SFらしくない」ように見える。更に述べるのを許されるなら、いまひとつ「面白」くない。
 誤解されぬよう言葉を足すと、純文学ふうの硬さがあって、そのぶん通俗な面白味はやや乏しくなり娯楽性が最優先はされていない感じがする、ということなのだ(作者がSFの映画やTVドラマで脚本執筆もしたらしい事実から考えると、これは意外に感ぜられる)。もちろんそういう「面白さ」は小説の価値と直接の関係は何も無いだろうと思う。とはいえ、世間からの拍手にはたぶん比例する。この点スタージョンはもしかするといささか苦しんだろうか?
 『きみなんだ!』『ジョーイの面倒をみて』『ジョリー、食い違う』『茶色の靴』『自殺』などは現実のアメリカ社会から一歩も出ていない内容に思えるし、『箱』は舞台設定こそ未来の宇宙であるものの内容は真面目な青春小説になっている気がする。最も戸惑ったのは『ここに、そしてイーゼルに(To Here and the Easel)』で、読んでいくと、僕が純文学にいつも味わわされる「なぜここにこういう一文、描写が入っているんだろう?」という難しさに何度も直面させられた(つまりは文章が単なる"説明"にとどまってはおらずそれを超えていて、僕のような読者には高度に過ぎ、作家が伝えようとしているところを理解するまでに"背丈"が届かないのだ)。
 ダメな読者である僕は結局、スタージョンの経歴にむしろびっくりした。生涯に5回結婚したというから、作者はよほど女に強い人で、そういうタイプだと創作するより自身の現実を生きる方に忙しくなってしまいそうなのに? と不思議に感じたりした。しかしこれもきっと誤解なのだろう……作家が行なう「創作」とは、僕ら凡人もなしうる「夢想」の類とは根本的に別の営為であってその延長線上にある事ではたぶんないのだ。異性(というこの人類社会の半分、或いは男の視界で評価するなら自分の外にある異質領域の全て!)に詳しく、だからけだし非常に現実的なタイプだった(?)のではと思える人が小説という非現実を紡ぐのに生涯を捧げたのは、奇妙な事ではないのだろう。「作家」(の内面)とはいったいどんなものなのか、それを解明し描きとめる事に成功したのが『ここに、そしてイーゼルに』で、作者はこれを会心の作とばかりにとても気に入っていたらしい。だのに、それをちゃんと読み取れないのを申し訳なく思う。スタージョンは幸福だったろうか? 『ここに、そしてイーゼルに』が何らかの賞を得てはいないらしい点に、作家と読者の間にある隔たりのようなものを感じて、もしや孤独だったのでは、などとつい思ってしまう。
 作品以上に作者自身が波乱に富んだ人生をおくっているというところに、僕はやはり、吾妻ひでおの『失踪日記』を思い出し、ここでもスタージョンと何か共通するものを見たような気がして複雑な気持ちになった。
 良い読者、良いファンたることは、なかなか難しい……。

つげ義春

Tuge 吾妻ひでおは『失踪日記』の中で以下のように述べている(p.140)。
「プレイコミックの『やけくそ天使』はこの頃からSFのパロディやつげさんのパロディやりだして楽しくなってきた」
 ここで「つげさん」とあるのが、漫画家である「つげ義春」を指しているらしい。
 つげ義春(1937年10月31日生~)は、日本でマンガ週刊誌や月刊誌さえもまだ普及していなかった頃、貸本マンガと呼ばれるメディア様式の時代から活躍してきた大ベテランのひとりで、その作風はたいへん地味でありながら時に思いもよらぬような実験的作品を発表したりしている。『ねじ式』『ゲンセンカン主人』『紅い花』などはおそらくとりわけ有名であり、映画やTVドラマにもなったことがあるようだ。
 つげ作品はその強烈な個性からしばしばパロディの題材にもされており(逆に言えばパロディにされてもその「元ネタ」が分かるほどに独創的だということだろうか)、一例として、やはり貸本マンガ時代から活躍している長谷邦夫が月刊誌『COM』誌上などでそうした作品を発表してきた。この、長谷邦夫によるパロディは、いろいろな漫画家の有名キャラクターたちが無断借用的に次々と登場し、いろいろな絵柄が入り乱れているので、トビラに「長谷邦夫」と明示されていない場合(時には本当にそこまでやってのけて、作者名が「モンキー・ピンチ」などとなっていた事さえあったと記憶する)には、一体作者が誰なのか、合作なのか贋作なのか分からなくなってしまう徹底的なもので、『COM』の読者であったらしい吾妻ひでおも恐らくは、こうした長谷邦夫によるパロディ作品を当時に読んでいたのではないかと思われる。
 ただし、吾妻マンガにおけるパロディはその手法がまた独自のものになっており、絵も物語も吾妻マンガのままで調和を保ちつつ、台詞や場面をこっそり引用し劇中に埋めて隠す、といったやり方になっているようだ。加えて、心なしか、あまりにも有名な作品や場面はあえて避け、本当にマンガ好きな読者でないと知らないような部分を選んでこれを行なっているような印象がある(?)。
 前衛マンガからの引用パロディというのは、SF小説からのパロディ以上にこれを理解できる読者が少ないのではなかろうかと思える。しかしこうしたパロディに気付き、見抜いて、「ニヤリ」とできる一瞬があった時には、そこに、単なる描き手と読み手という関係を超えた、幸福な絆のようなものを実感できるのではないだろうか。
 吾妻ひでおは、そういう「つきあい」を許してくれるマンガ家なのだと思う。
(画像は小学館文庫による短編集のカバー。)

石森章太郎『マンガ家入門』

Mangaka 1965(昭和40)年に出版された『マンガ家入門』は、吾妻ひでおをしてプロとなる決意をせしめた書籍であったらしく、吾妻マンガやインタビューにおいてしばしばパロディや言及がある。著者はかの石森章太郎、執筆当時27歳であったという。
 石森章太郎はその前書きにおいて、『マンガの書き方』という本を卒業した読者のためにと依頼されて引き受けた事を語っている。この『マンガの書き方』という本は僕も昭和40年代に買って読んだのだけれど、記憶がもし正しければ、技術的な事や業界内部についての知識よりは「心得」を説くような色彩の強い内容で、良書ではあったろうものの、児童向け図書としての限界を持っていたようだ。それに比しこの『マンガ家入門』ではかなり実戦的また具体的な記述が多く含まれており、1966年には『続マンガ家入門』も発行され、当時おそらく最も詳しい入門書だったのではないかと思われる。
 『マンガ家入門』と『続マンガ家入門』は再編集されて『石ノ森章太郎のマンガ家入門』という1冊の書籍に生まれ変わり、1988年に再び発行されている。ただしこの段階で、残念ながら原著の多くのページが割愛されてしまったようだ。それでも、マンガという手段による創作の楽しさ素晴らしさを語り伝えると同時に、読者ウケを気にせざるを得ないプロならではの矛盾について読者にあらかじめ警告する点は失われていない(石森章太郎は「自分の創造した世界を破壊することの苦しみ」という表現を、あとがきに記している)。
 名著であるのみならず、吾妻マンガの原点を知るうえでも重要な書籍だろうと思う。

(画像は、1998年10月、秋田文庫として再び発行された『石ノ森章太郎のマンガ家入門』の表紙。)

月刊コミック・マガジン COM 1967年 第9号

Com(虫プロ商事株式会社 昭和42(1967)年9月1日)

 吾妻マンガが掲載されているワケではないのだが、プロデビュー前に加わったという「ぐら・こん北海道支部」について記事があり、北海道支部作品会誌『月刊・ミロ』の表紙写真なども小さいが載っている(p.217)。記事内容は以下のとおり(引用者注:実名など個人情報が記されている部分はイニシャルに置き換えたりしています)。
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「この夏休みを利用して、七月二十八日、北海道支部のK・K支部長はじめ、平均十八歳の若さあふれる六人の会員が遊びかたがた上京。到着したその日に休む間もなく、まっすぐ『COM』編集部を訪問。I S 両記者より今後の方針などのアドバイスを受けた。
 六名は、さらに、各まんが家を訪問して八月上旬帰北した。
 なお、ぐら・こん北海道支部の住所が左記の通り変更いたしました。
小樽市花園×の×の× K・K」
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 同じページには「ぐら・こん支部長募集 まんがマニアのリーダー」という記事がある。「ぐら・こん」とは"GRAND COMPANION"の略であるらしい(p.205)のだが、それがどのような組織であったかが分かるので、こちらも以下に引用させて戴こう。
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「「ぐら・こん」本部では、全国のまんがマニアが、よりスムーズにまんがを勉強していくため、「ぐら・こん」支部を全国に設け、各支部に一名の支部長(任期二年)を置きます。支部長に立候補するには、
①作品一点(まんが、またはイラスト)
②最近制作した同人誌。(肉筆、回覧誌を含む)。
③まんがに関するレポート。(四百字づめ原稿用紙三枚以上)。
④住所、氏名、生年月日、職業、略歴、写真。
⑤いままで、はいっていたまんがグループ名。
⑥支部長立候補としての抱負、動機等を百字以内にまとめる。
 以上を「ぐら・こん」本部宛に送ってください 「ぐら・こん」本部では、厳重な選考をおこない、最適と思われる方を各支部から一名選出し、支部長に任命いたします。
 なお、東京、関東、北海道の各支部は決定しています。」
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Cobotan_map_1 その手前のページ(p.218)には「ギャラリー喫茶 コーヒーと洋菓子 コボタン」の広告がある。僕の記憶が正しければ、無気力プロ発行のコピー新聞である「アリス」(1977年9月11日)に発表された『吾妻ひでお伝!』の最後のコマで、この店が登場していた。上京したものの苦しい日々が続いていた吾妻ひでおはこの店でまんが仲間である旧友(『せーしゅんさんか 武蔵野荘のころ』によれば松久由宇だったらしい?)と偶然出くわし、人生の道が開けたらしい(連載は中断したため詳細は明らかにされずに終わった)。広告に店の住所は書いてないが、簡単な地図はある。それによれば、おそらくこの店は現在の東京都新宿区2丁目に存在したようだ。地図には店の前を鉄道が走っている(店は鉄道線路よりも北東側にある)ように書かれており、これはどうも都電(当時まだ存在した路面電車)であるらしい。11系統(新宿駅前~月島通八丁目)と12系統(新宿駅前~両国駅前)がここを走っていたものと思われる(前者は昭和43(1968)年2月、後者は昭和45(1970)年3月まで運行していた)。この「コボタン」は大変有名であったらしく、インターネット上にも当時を知る人々の証言がいろいろ見つかる。上の画像は、広告にある地図を参考に、現在の東京都新宿区新宿2丁目付近を調べ、「コボタン」が存在したのではないかと思われる位置を示したもの。

週刊少年サンデー 昭和44年 3月23日号

Sunday この雑誌は、吾妻ひでおプロデビュー1週間前のものらしい(?)。
 『逃亡日記』(p.130)には「『少年サンデー』に四コマ漫画描いたけど名前も出なかったから、それがデビューかな」とある。この時期の事について月刊OUT昭和53(1978)年8月号(p.48『やけくそインタビュー』)にはより詳しい発言が記録されており、「少年サンデーの普通のマンガの上の方に四コマ漫画をやってて、最初が手塚さんの「0次元の丘」の上でね"あっ、手塚さんの上だっ"って感動した」とのこと。
Zero その、手塚治虫『0次元の丘』(青春シリーズ① 32ページ)が次号に掲載されるという予告をこの号に見ることができるのだ(p.111のハシラにある文言によればこの作品は「読み切りまんが」であって連載長編作品ではない)。よって、吾妻ひでおプロデビューはこの次、週刊少年サンデー昭和44(1969)年 14号(おそらく3月30日号、発売は同年の3月14日、70円)だったらしいということになるのだが……?
Mars1 この頃の少年むけ週刊マンガ雑誌は毎号巻頭にカラーで特集記事を載せていたが(既に書いたかと思うけれど、無気力プロにはそれをスクラップし「SF」と題された手作り製本の作画資料が置いてあった)、この号には『火星大探検!!』という特集があり、岩崎敏二、伊藤展安(画像上)、高田藤三郎、斎藤信夫、長岡秀三(のちの長岡秀星、画像下)、藤田正純、小松崎茂、木村正志、依光隆(掲載ページ順)らの画家たちが絵筆をとっている。以下に引用するのは、特集のトビラにある文言。
「月の次は火星だ!! もうすぐ実現する、火星探検計画のすべてを、大特集!!」
Mars2 しかしご存知のとおり、火星への有人探査は21世紀となった今でもまだ実現していない。人類初の月着陸はこの年の7月20日になってからだったが、雑誌編集者たちはそれさえ成就していないうちにもう、読者の少年たちへ更に先の事を垣間見せようとしていたのである。こうして現実の宇宙開発が進む一方、フィクションの世界すなわちSFの領域では、何か苦境にあったのかも知れない(例えばこの号には横山光輝による超能力者テーマの作品『地球ナンバーV-7』の最終回が掲載されている)。
 SFを得意とする吾妻ひでおは、微妙な世情の只中にそのデビューを果たしているようだ。

まんが専門誌 ぱふ 1980年3月号

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「特集 吾妻ひでおの世界」と題して56ページにわたり特集記事を掲載。内容は以下の通り。
・マンガ(『多目的せーせーかつ入門(ぱふ版)』) 7ページ
・吾妻ひでおへのインタビュー 11ページ
・吾妻ひでお作品リスト 2ページ
・キャラクター紹介 7ページ
・評論など 28ページ

吾妻ひでお大全集

003daizen(奇想天外・臨時増刊号 昭和56(1981)年5月15日)

*資料性のある記事としては以下のようなものが収録されている。

・吾妻ひでおインタビュー
・吾妻ひでお年譜
・新不条理解析(「不条理日記」シリーズの元ネタを推理している)
・明解吾妻ひでお辞典
・吾妻ひでおにおける北海道語の研究
・その他

また、マンガは5編が収録されている。
・「普通の日記」
・「ぬいぐるみ」
・「愛のコスモ・アミタイツ・ゾーン」
・「由紀子の肖像」
・「つばさ」

009futu普通の日記

*作者の当時の日常をコミカルに描いたもの。これによれば「ぶらっとバニー」は編集者が「アイデアからストーリーから全部出してくれる」のだという。

007nuiguぬいぐるみ

「僕」は日曜日の朝、自宅の窓から奇妙な少女を見かける。その数日後、体調不良で早退し帰宅すると、路上でその少女が「僕」を待っていた。「ねえ、おにいちゃん、遊ぼうよ」と言われ、次の日曜日いっしょに遊ぶ約束をするのだが……。

*川又千秋原作。フキダシを一切使っておらず、独特の雰囲気でまとめてある。

008amita愛のコスモ・アミタイツ・ゾーン

大型宇宙船の船内で、「連続胃袋かっ切られ殺人事件」が発生。アズマ旅行保険支払係は容疑者の取調べを行なうが……。

*萩尾望都との合作。作者ふたりは似顔絵で作中人物となり登場している。題名は手塚治虫のアニメ映画「火の鳥2772/愛のコスモゾーン」をもじっているものと思われる。

010yukiko由紀子の肖像
(未発表 1971年の作品)

中年男が夜、家路についている。駆け足で去って行く2人の男とすれ違うが気にも留めず、家へ帰って玄関を開けると、愛娘が何者かに殺害されていた。警察は「流しの強盗でしょう ちょっと犯人たいほは むずかしいかも」と言い、迷宮入りとなった。しかし父親である男は復讐のために、あの夜道ですれ違った男達を探す……。

*最初のページの欄外に「オカルト・ミステリ」とあるとおり、娘が幽霊になって出てくる。吾妻流「あの世」の解釈が興味深い。

つばさ
(カテゴリ"11 ひでお童話集"にて既述のため割愛。最後のページに「ヒント=フェリシアン・ロプス「略奪」」と記されている。フェリシアン・ロプス(Félicien Rops)は19世紀ベルギーの画家。

アップル・パイ 美少女まんが大全集

Ap(徳間書店 アニメージュ増刊 1982年3月30日発行)
 『アニメージュ』は本来アニメーションに関する月刊雑誌のはずだが、こうした増刊を世に送り出した時期があるようだ。普通一般のマンガ雑誌を意識してかサイズはB5、ただし全126ページほどで当時の週刊マンガ雑誌よりだいぶ薄い。紙質はマンガ単行本の基準にならっている感じで、光沢を持つ厚紙のカバーがかけてある。
 表紙に大きく「美少女まんが」と明記されているあたりに、時代がうかがえるといえようか(現在ならば、男性読者を主に想定しているマンガの書籍で主人公が美少女だったとしても、それを断り書きすることはもはや無さそうに思う)。
 この『アップル・パイ 美少女まんが大全集』は出版的に成功したのか、徳間書店は後に単行本『アニメージュコミックス』の1つとして『美少女まんがベスト集成』を発行、これに続けて『プチアップル・パイ』と銘打ったシリーズ(雑誌扱いの単行本?)を3ヶ月に1回のペースで出すようになり、18号(1987年3月10日発行、ただし実物未確認)まで続いたらしい。
 吾妻ひでおはこの『アップル・パイ 美少女まんが大全集』で『ぶらっとバニー番外編 美少女童話集』(白黒16ページ)を発表している。21世紀になって吾妻ひでおが、日本のマンガ文化独自の美感覚のひとつであろう「萌え」の礎(いしずえ)をかためた人、といった紹介をされる場合があるとすれば、こうした時期にこうしたかたちで、可愛らしい画風などがひときわ注目を浴びたゆえか。

ひでおと素子の愛の交換日記

004koukan1_1(角川書店 昭和59(1984)年7月31日)

*これは新井素子のエッセイ集なのだが初出(1981年4月号~1983年9月号の雑誌「バラエティ」に連載)時に吾妻ひでおが挿絵を担当していた。ここではその挿絵のほうに重点を置いて、少し内容から抜粋、紹介したい。行頭の数字は単行本のページを表す。

25 「わたしは旅行がきらいだ」の一言が書いてある。
65 「シッポがない」会長らの似顔絵。
110『吾妻ひでお大豪邸訪問記』(新井素子らが新築の吾妻家を訪問したという記録)
120 アシスタントの面接を受けた翌日から、渋谷でキャバレーのビラ配りのアルバイトをしたという回想(これは脚色され「二日酔いダンディー」でネタに使われている?)。
157 「みにくくエロ同人誌を作る こきたない、おっさんがた」(「シベール」発行当時の事らしい?)
165(206) 保谷(ほうや)に居住しているらしい?
199 吾妻夫人によるイラスト(これは貴重だと思う)

続・ひでおと素子の愛の交換日記

005koukan2(角川書店 昭和60(1985)年2月10日)

*挿絵を担当。以下抜粋(行頭の数字は単行本のページ数を示す)。


40 故郷の小学校・中学校が廃校になること。
117 ファンクラブ会長らの似顔絵。
124 吾妻ひでお漫画大賞発表(「バラエティ」1984年7月号 応募7通?)。
136 仕事場の平面図(1984年8月号 注:仕事場をこのころに変更転居したらしい?)。
205 熱をだして、吾妻夫人が原稿代筆したいきさつ(「ひでおと素子の愛の交換日記」p.199)。

新・ひでおと素子の愛の交換日記

006koukan3(角川書店 昭和61(1986)年7月10日)

*挿絵を担当。以下抜粋(行頭の数字は単行本のページ数を示す)。


129 飼っているペットについて。
137 自作(?)料理レシピ。
175 「小学生の時 盲腸やった」こと。
212 『素子の大泉探訪』(単行本には初出が明記されていないが、このエッセイは「吾妻ひでお大全集」に写真入で掲載されたもの。ここでは写真は無く、吾妻ひでおによる描きおろし(?)の挿絵が収録されている)。
218 『あとがき日記』(吾妻ひでおが文章を書き、新井素子が挿絵を入れている)。

バイバイ スクール

Bbsc01(講談社 青い鳥文庫 1996年2月15日初版)
 小学校高学年くらいの読者を想定しているらしい、児童向け推理小説。吾妻ひでおはカバーイラストと挿絵を担当している。か細い手足など、子供たちの体型はかなり写実的に描かれているようだ。
Bbsc02 版型は173×111mmの新書サイズ。全校生徒がたった6名という小学校が廃校を直前にして……という物語。吾妻ひでおも、高学年と低学年の2クラスしかない(しかも1クラスは12名ほどだった)小学校へ通ったらしいのだが(『吾妻ひでお大全集』p.290『吾妻ひでお・年譜』高沢よしお・編)、どのような気持ちでこの作品の挿絵を描いたのだろう……?

マンガ家のひみつ

Himitu(徳間書店 1997年5月31日)

とり・みきによるインタビュー集。吾妻ひでおへのインタビューは1995年9月2日に行なわれたものが収録されている。脚注によれば吾妻ひでおの休筆期間は'85年から'93年までの8年間だという。「だいたい40ぐらいになったらギャグの場合は限界なんじゃないかと思う」、「短いページのリアルなやつは少しは描いたんですけれども、ギャグ入れなくてもいいという、あれは死ぬほど楽ですね」といった吾妻ひでおの発言がある。

レモンピープル ベストセレクション

Lemon_p(久保書店 2001年11月25日初版)
 吾妻ひでお作品としてはカラーイラスト1葉とマンガ1篇(『みかちゃんのぱんつ』)を収録している。版型は210×150mmで、いわゆる教科書サイズ。月刊マンガ雑誌『レモンピープル』は1982年2月号から1998年11月号までが発行されたようだ。
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Lemon_p2Lemon_p3

comic 新現実 vol.3

Singen1角川書店 2005年2月26日)

 『吾妻ひでおの「現在」』という特集があり、2005年1月13日になされたインタビュー等を収録。ガス屋さんの時に社内報へ投稿し(「失踪日記」p.105参照)マンガが掲載された、そのページの写真など。

秋のHOT HIT 100 ハヤカワ文庫2005

Hothit(早川書房 2005年9月)

 これは書店の店頭にて「ご自由にお取りください」と置かれていた無料の小冊子である。文庫サイズで約64ページあるが販促のチラシ等と同じ扱いだったのか、奥付のようなもの(印刷・発行の年月日の明記)は無い。
Dokutai
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 「私の読書体験記 どくたい」という題で吾妻ひでおによる描き下ろしコミックが2ページ掲載されており、
「中学生の時『路傍の石』を読んで暗澹(あんたん)とした思いに取り憑かれる 名作だけど中学生は読まない方が良いと思う」
という出だしで始まっている。作者が少年時代、SF以前にどんな読書をしていたかその片鱗がうかがい知れる。

出家日記

Shukke(角川書店 2005年11月1日)

 蛭児神建(ひるこがみけん)の自叙伝だが、同人誌「シベール」の頃の事(「失踪日記」p.144参照)などについて言及がある。カバーイラストと巻末の解説マンガは吾妻ひでおによるもの。

月刊COMICリュウ 宣材

Ryu0 9月19日に創刊される徳間書店のコミック雑誌の案内。サイズは181×129mm、44ページ。書店の店頭にて無料配布されていたもので、安彦良和(やすひこよしかず)との対談記事を掲載(両者は月刊COMICリュウの創刊号に執筆し、また「COMIC龍神賞」の選考委員をつとめる)。
 「この原稿は「アニメージュ」06年9月号に掲載された「リュウへの道」の原稿に加筆修正したものです。」「対談そのものも、ここでは書き切れないほどの長時間となり、その内容は北海道の子供時代の思い出話から最近のお互いの仕事の話まで多岐に渡った。」と説明が付されている。

AERA COMIC ニッポンのマンガ

Aeracomic(朝日新聞社 2006年11月1日発行)
 表紙に文言があるとおり「手塚治虫文化賞10周年記念」のムックで、その受賞者たちについてまとめたもの。版型は280×201mmのA4サイズ。吾妻マンガ『墓標』(描き下ろし読み切り、10ページ)のほかインタビュー1ページなどを収録。
 書籍巻末で養老孟司(ようろうたけし・東京大学名誉教授、第1回~3回の選考委員をつとめた)は以下のように語っている。
「よく外国人が、朝っぱらから大人が電車の中でマンガを読んでるのを見て「なんだこの国は」って感じるようだけど、「お前たちの方が足りないんだよ」って言いたいね。」
Grave

逃亡日記

Escape「皆さんこの本買わなくていいです! 漫画だけ立ち読みしてください」と作者自らがまえがきマンガの中で叫んでいる「『失踪日記』の便乗本」。とはいえ、僕は、面白い書籍だと思う。
(画像は表紙と新聞広告。日本文芸社、初版平成19年1月30日第1刷、定価本体1200円+税。)

 巻頭にはカラー写真が16ページあって、作者が被写体に加わり登場している。マンガにおいてならば珍しくないけれど、実写で本人が姿を見せるのはけだしまれなことで、これほど何葉も作者の肖像が収録されている図書は前例が無いのではないか? 『失踪日記』の舞台となった雑木林や公園は現地の写真のみならず地図までが掲載されており、欲するなら読者が"巡礼"を実行できるようになっている(?)。職務質問を受けた交番、はては利用したゴミ集積所まで撮影しているのだからすごい。ただ、勤務していたガス工事会社やその寮とかの写真はさすがに撮っていない。これはいたしかたないだろう。

 オマケ的に『妄想★劇場』なんて写真もうち6ページあって、見ると作者のそばに可愛いメイドがくっついている。最近作のあとがきマンガでは作者と漫才でもするかのように美少女キャラが共演しているコマがよくあるが、なるほどあれを自画像ではなく本物の作者が出演し実写でやったら、確かにこんな感じの光景になるかも知れない。

 さて、書籍の背表紙には「吾妻ひでお」と大きく書いてあるが作者によるマンガ作品の単行本ではなく、1冊まるごと作者へのインタビューを収録したものだ。マンガは、まえがき(『受賞する私』9ページ)と、あとがき(『あとがきな私』4ページ)、ほかは本文中のカット数葉だけである。
 マンガのほうは日記形式のドキュメンタリー的なもの(成人した御息女らしい人が出演している作品は、僕の知るところがもし正しければこれが唯一にして最初ではないかと思われる)。カットはかなり写実的なタッチが入っている点でちょっと異色な感じ。中でもひときわ目を引くのが『ふたりと5人』リメイク版のイメージ(p.135)で、ずいぶんアダルトな雰囲気なのにびっくり(ユキ子の表情とかはどう見ても中学生のそれじゃない気がする)。これが作者本気の"完成予定見本"なのか"ギャグ"なのか定かでないのだが本文(p.144)には「あーホント、描き直したいね、今からでも(笑)。もうネタはかたまっているんだけど。」という発言があり、リメイクが実現したら読みたいものではある。とりあえず試験的に読みきり作品で、といった形ででも執筆と公開とが実現してくれないだろうか。

 本文にはいろいろ貴重なくだりが散見される。これまで語られていなかった、過去の諸作品についての裏話などは興味深い(一部のファンジンなどでもしかしたら触れられた機会はあったのかも知れないが、そうしたものは今となっては発見し読むのがおよそ不可能だろうし)。
 単行本だと巻末に「解説」をつけているものが時折ある。プロの物書きによるそれらの文章は確かに内容の密度はあるだろう。しかし、作者自身による解説ではない、というただ一点においてのみ言えば、僕ら一介の読者の感想作文と違わないのではという気がする。ファンとしてはやはり、作者の話を聞きたい。作者というものはえてして自作の解説を好まないらしい。作品をして全てを語れていないとすればそれは創作者にとって不名誉なのかも知れない。とはいえ読者としては、好きな作品のことはどんな些細な裏話でも聞かせて欲しいものなのだ。しかし作者に負担をかけたくはない。そうした意味で、こういったインタビュー本も僕はありがたく思う。

 驚いたことにこの書籍では、奥様や御息女にまでインタビューを行い、収録している。作品からあまりにもかけ離れて作者の家庭のプライバシーを聞き出す事は望ましくないのではと思うのだが、希少価値を持つ書籍になっているのも確かなのではあるまいか。
(2007年4月19日付記:この書籍にはフランス語版が存在し、ちゃんと向こうで発売されているらしい。)

ひでおと素子の愛の交換日記(角川文庫)

(平成20年8月25日 改版初版発行)
Hmak00

 これは文庫として出ていた同名書籍に加筆修正がなされ、復刻されたもの。初出であった雑誌での連載時に発表されていた、吾妻ひでおによる挿絵も多数収録されている。カラーの吾妻マンガは白黒に比せば非常に少ないので、それが読める点でも希少価値があるだろう。

Hmak01Hmak02 挿絵の他に『まんがクラッシャージョウ』(初出:少年マガジン 特別別冊 クラッシャージョウ アドベンチャー・ワールド 1983年3月30日)5ページ、『21年ぶりのあとがき』(描き下ろし)2ページを収録。なお後者で明らかにされているところによれば、新井素子の似顔絵キャラクターについて本人から「怒られた」ことがあるらしい。
Hmak03 そしてここでは、そうとう久しぶりに「のた魚」が描かれている。

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