カテゴリー「14 やけくそ天使」の記事

はじめに

Asoko
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(WARNING : This is a comedy for adults only)

"Yakekuso Tenshi (meaning : angel who is in her desperation)"

Heroine of this series seems a person with preternatural power, or a kind of superman. But she is not a corrupt "angel" or something. She is (was) a nurse, and nurse is commonly called "an angel in a white robe" in Japan, so that she is called "angel" in this series. Heroine's name is "Asoko (a family name) Soko (given name)". This name reminds Japanese grown-up people, of words that woman tells where is her erogenous zone in the middle of sexual intercourse. This absurd name is suitable for her very much, because the heroine leads a awful dissolute life for inquire into "freedom". (It might be next to impossible for any adult film company on this planet to make a movie of this crazy series, you bet.) Asoko the heroine wins her freedom from all authorities, all sorts of physical laws and even death ! Nevertheless, Asoko has an experience of depression for once. Did freedom have nothing to do with happiness for her ...... ?
And there are various parodies of science fiction. This is another property of this series.
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A0003 この作品は秋田文庫から発売中で入手に困難は無いと思われる。とはいえ「失踪日記」でも何度か言及があり知名度も高いようなので当ブログでも扱ってみることにした。
 連載当時、確かとある雑誌(みのり書房「OUT」昭和53年7月号?)はこの作品のヒロイン"阿素湖素子(あそこそこ、と読む)"を「超人」の1人として紹介していたようだ。実際シリーズが進むにつれて阿素湖は超能力者のような活躍(?)を始め、はては不老不死になってしまったりしている。これがために途中からこの作品を読んだ人は、主人公が人間ではなく"堕天使"か何かの超人間的なキャラクターという設定なのだろうかと考えるかも知れない。しかし連載第1話を読む限りこのヒロインは、美貌の持ち主ではあるが常軌を逸して好色な看護婦さん(=白衣の天使)といった普通の人間として登場しているようだ。連載が続くにつれて構想がふくらみ、設定が加筆修正されていったのではないかと思われるが、定かではない。作者としてはこのヒロインの"正体"を『メチル・メタフィジーク』シリーズ、『⑨アララテ山のむこうに恐山』で解明を試みたようで、合わせて読んでみるのも一興かと思う。
A0004 何でもあり、で盛り込まれた要素の中にはSF小説に関するギャグやパロディが多くあるようで、連載当時に出た単行本の表紙にはそうしたSF色を前面に出し、武部本一郎による「火星シリーズ」の挿画を模したようなものも出現した(画像参照。そしてこの表紙画は秋田文庫版第1巻の口絵となり収録されている)。マニアでないと見抜けないSFネタについて解明するのはとても僕の力の及ぶ所ではないのでそこに言及するのは一切敬遠し、このブログでは普通にあらすじのみを紹介してゆきたい。
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 なお、無敵と見えるヒロイン阿素湖素子ではあるが、終盤では虚無感にとらわれて一度「うつ状態」になっている(「阿素湖たんたんファンタジー」)。彼女のこのきわめて人間くさい部分は特筆されるべきではないかと思う。また最終回では、阿素湖が(血のつながりは皆無だが戸籍上は家族となっている?)進也を抱く、という禁断の世界を描いたくだりがちょっとある(画像参照)。仮に"ボーイズラブ(少年たちの同性愛)"マンガの起源が竹宮恵子あたりにあるとすれば、"ショタ"(まだ年端もゆかない少年)と"おねえさん"が登場するマンガの起源は、この作品にあるのだろうか……?
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 ちなみに、『やけくそ天使』は他にも、プレイコミックシリーズスペシャル(秋田書店)でA5版の単行本が存在する。1986年に発行されたこれは2巻から成るものなのだが、別に「選り抜き」編集をしているわけではないらしく、収録内容からみると刊行が途中で中断したかのような印象をうける(詳細不明)。カバーを飾るヒロインの肖像は連載当時よりもいくぶん写実的な容姿になっており、連載終了から6年後、この単行本の為に描き下ろされたものらしい。
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白衣の天使

001_1(プレイコミック 1975年1月11日号)
"hakui no tenshi (meaning : an angel in a white robe)"

An animated cartoon film is telecasted. A nurse, Asoko the hiroine of this stories, watches it alone. She is asked help, and goes to operating room. She is beautiful, but amorous a bit much. Asoko is dismissed in the end, and becomes desperate ......
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 TVで「グレートマジンガー」が放送されているが、その台詞はどうもおかしい。子供向けアニメのはずなのに18禁映画のような感じがする。実は控室(?)でこれを観ていた1人の看護婦、阿素湖が、出鱈目(でたらめ)な"アフレコ"をして遊んでいる(?)のだった。しかしそこへ呼び出しがかかり、彼女は手術室へ急ぐのだが……。

どーしました?

002_1(プレイコミック 1975年1月25日号)

 病院をクビになってしまった阿素湖にはカネが無く、このままでは家賃も払えない。「からだで払」おうとしたあげく、しかたなしに再就職先となる病院を探すのだったが……。

こげめがおいしいチン○焼き

003_1(プレイコミック 1975年2月8日号)

 どうにか病院で働けるようになった阿素湖であったけれど、さっぱり患者は来ない。なにせ院長が院長だから、というわけで阿素湖は院長の"部分的な"治療を試みる。しかしそんなおり、前を通りかかった病室の奥から、苦しそうなうめき声が聞こえてきて……。

誰ぞ進也に愛の手を

004(プレイコミック 1975年2月22日号)

 きょうは休日なのか自宅でラーメンをすすりつつTVを観ている阿素湖。画面に映った美少年アイドルの気を引こうと努力していたらおかしな事になってしまい(注:とてもじゃないが書けません、直接読んで下さい)、そこへ「となりのガキ」が味噌を借りに来たので助けてもらう。彼、進也は、両親がともに駆け落ちして、今や孤児となった身の上だった……。

*(警告:以下、結末に言及しています)
最終回まで(さらにその後も!)ヒロインの相棒となる少年、進也が初登場。万事に無茶苦茶な阿素湖ではあるが情け深い(?)という長所も垣間見せている。とはいえ彼女の行なった届出は、けだし役所に受理はされず書き直しをさせられたのではないかと思われる(そうでないと進也の年齢がリセットされてしまい、通学などでややこしい事になったり、いろいろ問題が発生するだろうから)。……などと余計な事を推理するのは野暮であろうか、やっぱり?

小学生もなかなか

005(プレイコミック 1975年3月8日号)

 阿素湖と進也の同居生活が始まった。しかし一体どっちが大人なんだか分からないありさま。阿素湖は進也について学校へ行き、担任に挨拶しようとするのだが……。

*この回で阿素湖は「進也の母でございます」と自称している。

インラン1番 電話は2番

006(プレイコミック 1975年3月22日号)

 本日、阿素湖はデート中。清純な女性が好みの青年に合わせるため必死で猫を被っているのだったが、「日本の性教育がなってない」という結論に到達して……。

*この回あたりから阿素湖の職業が何なのか不明瞭になってくる。デートは休日の昼間だったとしてもその後のことは、平日の昼間に自由時間が無いと実行不可能だろう(夜勤の看護婦をしているのかも知れないが)。「後楽園遊園地」というのは東京都に実在する(現在では名称が変更されているが、かつてTV映画「ウルトラQ」(「2020年の挑戦」)のロケが行なわれたりした場所)。「ホッカホッカだよおっかさん」というのは当時放送されていた温湿布薬のCMにあった台詞。淳子、百恵というのは桜田淳子と山口百恵の事だろう。

太めの恋のお話

007(プレイコミック 1975年4月12日号)

 窓辺でピアノを弾く少女の横顔を見、進也が溜息をついている。どうも恋におちたらしい。そこで阿素湖のとった行動は。

ウーワンワン キャウン

008(プレイコミック 1975年5月10日号)

 進也が、怪我をした小鳥を連れてきた。看護婦の阿素湖はどうにかその治療に成功する(?)。やがて評判が広まって……。

*阿素湖の背中に進也が貼り付けているのが、「インラン1番 電話は2番」で台詞のあった湿布薬。

虹の彼方へ行ったきり

009(プレイコミック 1975年5月24日号)

 駅前。阿素湖が独りで雨宿りしている。「進也のお迎えおそいわね」と待っていると、中年男が声をかけてきた。「よかったらお送りしましょう」と言われるが「ブ男ばっかり」なので次々と断る阿素湖。やがて1人の渋い美男子が「送りましょうか?」と言ってきたが……。

ああ~ 野生が呼んでいる

010(プレイコミック 1975年6月14日号)

 動物園へ来ている阿素湖と進也。しかしここでもどちらが保護者なんだか分からない。次々とイタズラを思いつき実行する阿素湖だったが、しまいには……。

*「およよ」という台詞があるが、これは驚き(または意外に思う、呆れる、などの意)を表す当時の流行語で、桂三枝がTVで使っていたようだ。

ドキュメンタリー 麻雀大会

011(プレイコミック 1975年6月28日号)

 第四回秋田書店麻雀大会の会場。吾妻ひでおはボロ負けのあまりとうとう錯乱する。傷心で仕事していたら阿素湖がやってきて「ネームまだかしら」と急(せ)かす。ヤケクソ状態ではかどらない作者に、阿素湖は……。

*「ネーム」というのはマンガ原稿において、下絵を入れる一歩手前、台詞とコマ割りが決定した段階のものを言うらしい。

眠られぬ夜のために

012(プレイコミック 1975年7月12日号)

 しどけない格好でうたた寝していた阿素湖は蚊に食われる。驚くべき方法(注:書けません)で蚊をやっつけたところへ、進也が担任の吉田先生を連れて帰宅。「今日は家庭訪問にうかがいまして」と言われ、阿素湖はもてなしに努力するのだったが……。

*担任の吉田先生は『小学生もなかなか』の回で既に登場しているが、少し顔が変化しているようだ。カール・ヒルティの著作に『眠られぬ夜のために』というのが本当にあるが、もちろん内容とは全然関係無い。

海は広いけどシマリいいのよ

013(プレイコミック 1975年7月26日号)

 水着の季節になったからと品定めする阿素湖だが、難癖をつけて店員をからかう。結局自作したのは良かったが……。

*阿素湖は自分で洋裁ができるらしい。かつ自分でデザインをしているあたり、美感覚にうるさいほうなのだろうか。台詞にある名前は芸能人とすれば、山口百恵、桜田淳子、岡田奈々、木ノ内(西崎?)みどり、西城秀樹、野口五郎、郷ひろみ、を指すかと思われる。なお今回、阿素湖は或る怪獣が攻撃に使うような技(注:書けません)を披露している。だんだんSFになってきた!?

くくく… 苦節25年

014(プレイコミック 1975年8月9日号)

 吾妻ひでおが泣いている。やってきた阿素湖がわけをたずねたら、「こんどカラーテレビを買った」というのでうれし泣きだったらしい。狂喜乱舞している最中にしかし、突然TVが映らなくなった。「アンテナじゃないの」と阿素湖が言うので調べに行くと……。

*今回は作者が主役となり活躍(?)している。あまりにも情けない有様なのが読んでいて最初から最後まで爆笑ものだが、時代が出ている点も興味深い。今でこそTVはカラーのものしか売っていないし価格も安いだろうけれど、当時はまだ「白黒」のTVが多く使われており、「カラーテレビ」はやや贅沢な家電製品だったのである。

ヒダ呼吸困難

015(プレイコミック 1975年8月23日号)

 真夏。海岸の岩陰に独り、水着姿で物思いにふける阿素湖。と思いきや実は男をひっかけるための待ち伏せなのであった。進也の臨海学校へ無理してつれてきてもらっていたのだったが、おとなしく授業参観しているわけもなく……。

*進也の台詞に「林間学校」とあるが、これは誤植ないしは彼(進也)が言い間違えたものと思われる。

銀行はお金もち、して~

016(プレイコミック 1975年9月13日号)

 晩ごはんの買い物に行こうとする進也だったが、金は無いと阿素湖が言う。仕方なく貯金をおろしに2人で銀行へ出かけるものの、ことは簡単ではなかった、なぜなら……。

*トビラは「赤ずきん」のパロディらしいが、特に内容と関係はない? 「こどもちょきん 1ねん2くみ あそこ そこ」と書かれた通帳が出てくる。平仮名ではあるけれど阿素湖のフルネームが明示されるのはこの回が最初のようだ。
 阿素湖たちはだいぶ広い部屋に住んでいるらしいことが分かる。また部屋にあるソファとテーブルは『海は広いけどシマリいいのよ』の時に登場した物とは形状が異なり、これは別の部屋にいるか、或いは家具を買い換えたと見るべきか?
 台詞に出てくる「うぐいすだに(鶯谷)」とは東京都台東区にあるJRの駅名。

空飛ぶ阿素湖-前編-

017(プレイコミック 1975年9月27日号)

 大泉航空のスチュワーデスに転職した阿素湖。「ガラは悪いし英語もダメ」なのに採用された事を進也は不思議に思うが、とにかく今日は初フライト。こわいもの知らずの自己流で仕事をこなす(?)阿素湖だったのだが。

*「母ちゃん死ぐのいやだ」という台詞は実在する図書ないしはその映画化作品をもじっているものと思われる(「かあちゃんしぐのいやだ」1961年、松竹映画、原作は平林良孝)。
 当時の日本ではまだ航空機の利用が現在ほどには普及しておらず、庶民にとって高嶺の花の交通手段だったようだ。のちの回で明らかになるが、ここで阿素湖の搭乗しているのは国内線であるらしい。

空飛ぶ阿素湖-後編-

018(プレイコミック 1975年10月11日号)

 なぜか屋台で焼とうもろこしを売っている阿素湖。しかし売り口上に問題があって客は去ってしまう。一体どうなっているのかと読み進むと、担当編集者がやってきて……。

*このマンガのヒントになったかどうかは定かでないが、旅客機を扱った映画が1970年代からハリウッドでは幾つか作られている(「大空港」(70)、「エアポート’75」、「エアポート’77/バミューダからの脱出」、「エアポート’80」、「エアポート2000」など、以上邦題)。いつかは飛行機に乗ってみたいがまだ機会が無い、という人が当時は多く、旅客機の旅というのは憧れと興味の対象であったのかも知れない。

ドロン 今い、いくわ

019(プレイコミック 1975年10月25日号)

 羽田発パリ行き旅客機で阿素湖は初めての国際線勤務についている。進也は機内まで見送りに来ていたのだが、結局1日休んで阿素湖の「おもり」をすることになった。無事に離陸したのは良かったが、乗客に助けを求められて……。

*この当時まだ成田国際空港は無く、東京の羽田空港に国際線が発着していた。SF(あるいはオカルト)調のネタが出てくるが、これはこの頃にちょっと流行した話題だったように記憶する。国際線勤務になったからか、阿素湖の制服が国内線のそれとは異なっている。台詞に「大泉小学校」とありこれは実在する学校名だが、進也の"通学先"がこの小学校だったのかどうか明言は無い。
 既に書いたけれど、このマンガの2年後には「エアポート’77/バミューダからの脱出」なる映画が公開されており、5年後には「エアポート’80」というのが公開されその主演はアラン=ドロンだった。吾妻ひでお恐るべし。

大空の雀鬼

020(プレイコミック 1975年11月8日号)

 なおもスチュワーデスとして活躍中の阿素湖だが、機内に家財道具一式を持ち込んでいたりするので機長に叱られる。逃げるようにして機内を見てまわったら、麻雀に熱中している乗客がいた。面白がってちょっかいを出す阿素湖だったが。

*冒頭に出てくるヒデキというのは歌手の西城秀樹らしい。阿素湖の制服がまた少し変化しているが、合服(春・秋用)から冬服になったと見るべきか? 機長はずっと同一人物のようだ。

つけものも生ものも好き!

021(プレイコミック 1975年11月27日号)

 八百屋へ買い物に来た阿素湖。「おふくろの味 秋の味覚 冬でも野菜が食べられる日本の伝統的保存食 つけものこそ日本の美よ!」とのたまい作業にとりかかる。帰宅した進也も驚き「意外と家庭的なこともできるんだね」と感心する。しかし……。

*珍しく阿素湖はパンツルック(ジーンズ?)で登場し、1度も脱がない。こんな回もある。

プッシーヘラヘラトーク

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(プレイコミック 1975年12月11日号)

 先生の自宅を進也が訪問する。しかし阿素湖がついて来ていた。御歳暮を届けにやって来たのだったが、その御歳暮はちょっと変っていて……。

*阿素湖が冒頭で変な特技を披露しているのだがこれは伏線で、後になって意味をなす(わずか7ページの作品でこうした仕掛けが隠してある構成は巧みだと思う)。1975年のフランス映画に『プッシー・トーク』(Pussy Talk)というのがあり、それがヒントになったのかも知れない。犠牲者となっているのは進也の担任の吉田先生ではないかと思われるが『眠られぬ夜のために』の時とはアゴなどに変化が見られるようだ。

チュチュチュ チュ~

023(プレイコミック 1975年12月25日号)

 通行人に向け、いきなり矢が放たれる。阿素湖が「クマ狩り」をしているのだ。毛皮でコートを作ろうというたくらみだったのだが、帰ってきた進也に見つかって止められる。しかしそれで諦める阿素湖ではなかった……。

*今回、阿素湖はコスプレ(?)をしている。雪降る中に肌もあらわな服装で登場するあたり、寒さには強いほうなのだろうか。台詞にある「誠さん」というのは、1973年から1976年まで週刊少年マガジンに連載され、映画やTVドラマにもなった『愛と誠』の登場人物にひっかけているものと思われる。

天翔るチン○追う阿素湖

024(プレイコミック 1976年1月15日号)

 正月。阿素湖は「今年の干支(えと)にちなんで龍の滝のぼり」を描き、進也に見せる。自信満々の阿素湖なのだが、描かれた龍は絵の中から出てきて「もっとかっこよく描きなおせよ!」と怒る。阿素湖は龍を引きとめ、料理で歓待するのだったが。

*「畫龍點睛を缺く(がりょうてんせいをかく)」の中国故事にからめた出だしであるけれども、後半は意外な方向へパロディが展開している。この回から判断すると阿素湖には絵心があるようだ。進也が紋付袴(もんつきはかま)の正装で登場しているあたり、この2人の暮らし向きはけっこう裕福なのだろうか?

天使の羽はどどめ色

025(プレイコミック 1976年1月29日号)

 スキー場へやって来ている阿素湖。しかしスキーの経験は無いようで、通りがかりの男に助けられる。進也も一緒に来ていたのだが、折悪しくふぶきが強くなり、はぐれてしまった。雪山をひとりさまよう阿素湖の運命は?

*スキーをやったことがないとすると、阿素湖は北国の出身ではないのかも知れない。台詞に「五郎」とあるのは歌手の野口五郎か。歌っているのが替え歌だとすれば小阪明子の「あなた」が元歌だろうか。解説する場面はTV番組の「ウイークエンダー」(1975年~1984年)がヒントになっているのかも。今回、変な形で阿素湖のたくましさと無敵ぶりが明らかになっている。

チン相みるならナメながら

026(プレイコミック 1976年2月12日号)

 阿素湖が路上を歩いていると、テントの中にいる手相見から声をかけられた。なんだかんだで結局乗っ取ってしまい、阿素湖はインチキ占い師となる。そこへ客がやってきたが、その客の中には……。

*のちに有名キャラクターとなる「不気味」が、このシリーズでは今回初めて登場する。「あたし祈ってます~」という台詞は当時の流行歌(「わたし祈ってます」)のもじりか。それにしても「こんな経験二度とない」で「行ってみよー」と決断する阿素湖の無鉄砲ぶりは、いかにも主人公らしい性格と言うべきだろうか。

またまた天使

027(プレイコミック 1975年4月26日号)

 救急車で患者が運び込まれ、中島医師が執刀することになった。ただちに手術、と思ったのに看護婦がいない。「早くしたまえ!」と呼んだら手術台の上、シーツの中に隠れていた阿素湖が飛び出す。「病院一のハンサム中島先生と一緒にお仕事できると思うとうれしくって 一番きわどいネグリジェ着てきちゃったの」と言う……。

*阿素湖は再び看護婦として就職したようだ。トビラに描かれている各種の記号は、医師を主人公としたアメリカ製TVドラマ「ベン・ケーシー」(1961)のオープニングがヒントになっているのではないかと思われる。

阿素湖 悶絶空手編

028(プレイコミック 1976年2月26日号)

 「中山空手道場」へ阿素湖がやって来た。と、いきなり木材で先生に殴りかかる。「強い先生をさがしていたもんですから……」とのことで、「早速ですが一手指南を」となった。しかし……。

*作者は格闘技の観戦には実際に興味を持っているらしい。だからかどうか、この後2回にわたって格闘技ネタのお話が続いている。「講道館の矢野」というのは、富田常雄の小説『姿三四郎』に登場する人物(嘉納治五郎がモデルであるという)のパロディだろうか?

あなたも闘魂 プロレス編

029(プレイコミック 1976年3月11日号)

 「プロレス特別興行 カントン猪本 Mr.ズルムケ」の立て看板が路上にある。これを見た阿素湖は大喜び、「あのたくましい肉体がわたしのからだせめさいなみに来るのよ!」と何やら誤解をしてしまった。進也がさとしても聞く耳を持たぬ阿素湖はトレーニングを始め、ついに試合の日がきて……。

*言うまでも無く、国会議員にまでなった或る有名プロレスラーをパロディにしているようだ。しかし敵の覆面レスラーにモデルがいるのかどうかは分からない。「大泉学園 南口広場」なるものが実在したのかどうか詳細不明。

みんな幻 ボクシング編

030(プレイコミック 1976年4月8日号)

 「オシクラボクシングジム」へやってきた阿素湖。「輪島さんみたいになりたいんです」と泣いて頼んで入門するが、繰り出すのは反則攻撃ばかり。しかもそれではおさまらずに……。

*なぜか効果音の描き文字が裏返しになっている箇所がある。「次はアリだ」というのは1976年6月26日(だからこの作品発表の約3ヶ月後)に行なわれた、ボクサーであるモハメド=アリとの異種格闘技戦を指していると思われる。「真空斬り」というのは『赤胴鈴之助』(原作:武内つなよし)で主人公が使う技のようだ。

ヌルヌル星のプリンセス

031(プレイコミック 1976年3月25日号)

 二重星ヌルヌルのプリンセス アソコは、エロ本を読んでいて家臣(進也)に叱られる。「だってあたしこの年でまだ処女なんだもん」と言うアソコだが、「プリンセス アソコ様の処女をうばった者は永遠の命と宇宙を支配する力をえられる」ので、「相手はしんちょうにえらばなくてはなりません」といさめられてしまう。何とかして処女を捨てようと必死になり、あの手この手と試みるアソコだったのだが。

*これを宇宙SFと呼んで大丈夫なのかどうか分からないけれど、作者にとって得意な領域なのかスムーズな展開になっているようだ。二重星という設定はTVアニメ「宇宙戦艦ヤマト」が元ネタであろうか。

今日もいくいく教育者

032(プレイコミック 1976年4月22日号)

 新学期。進也も中学1年生、学生服を着て登校することになった。「みんなおねえちゃんのおかげです」と感謝する進也に、阿素湖が進級祝いをくれるという。しかしそれは何だったかというと……。

*(以下、わたくしごとで恐縮ですが)連載当時、アシスタントだった沖由佳雄さんに僕は冗談半分で阿素湖の陰口を言った、「ああいう女と暮らしていると進也は将来ひどい女ったらしになるかホ●になるかどっちかだ(と思う)」。すると沖さんは(今回出てくる台詞を引用して)「"環境のわりにはボクぐれもせずよくやってるほうだな…"って(進也が)自分で言ってるじゃない」と苦笑していた。沖さんから吾妻先生へこの雑談は伝わってしまい、先生は、その予測ももっともだなぁと語っておられた由。こうしたいきさつが作用したかどうかは全く不明なのだけれど、後々になって進也は或る災難を経験している(『変態と言えなくもないけど正常!』1979年6月14日号)。以来どうも、不用意なムダ口をたたいてしまったのが進也くんに申し訳なかったという後悔が続いている……。
 それはさておき今回の台詞にある「一条さん」というのはたぶん、映画『一条さゆり 濡れた欲情』(1972年日活 / 監督・神代辰巳)で主演をつとめている人をさし、「わかんねえだろうなー」というのは漫談家の松鶴家千とせによる決め台詞(当時、流行語になった)のパロディではないかと思われる。

青春のタンパク質 しかも濃いめ

033(プレイコミック 1976年5月13日号)

 "大泉学苑高校"へやってきた阿素湖は、ネグリジェ姿で廊下を歩いて教師(だろう)に呼び止められる。男子生徒たちをひっかけるのが目的だったらしいものの、なかなか思い通りに事は運ばず……。

*トビラにある野球のコスプレは内容にあまり関係ないかに見えるのだが、結末で(以下書けません)。

200号記念の夜はふけて

034(プレイコミック 1976年5月27日号)

 なぜか屋外に布団を敷いて、これから阿素湖が就寝しようとしている。進也に引き止められるのだが「言い伝えによればプレコミ二百号記念の夜 天から巨大な(以下略)」と言い張る阿素湖。その時、夜空にUFOが現れた。進也がカメラを取りに屋内へ急ぐと、そのあいだになぜかUFOは墜落して……。

*台詞に"宇宙戦争"の語があるが、"オチ"はH・G・ウェルズ(Herbert George Wells)による同名小説(The War of the Worlds)のパロディらしい(?)。

迷え!子羊

035
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(プレイコミック 1976年6月10日号)

 学校という場所が気に入ったのか、教師を装って(?)校内へ潜入し、非行少年たちを更生させようと(?)努力する阿素湖。男子学生たちはわりにたやすく扱えるのだが、1人の非行少女が阿素湖と出あう。阿素湖はあきらめずその女子生徒の不良化をとめようとしてつきまとう……。

*1970年代に"スケバン"という俗語が使われるようになったが、そうした世相を反映している回と言えようか。

ちょっと売春

036(プレイコミック 1976年6月24日号)

 とある高校で、売春をしている女生徒がいるという不名誉な噂が立っていた。なぜかそこで先生をしている(?)阿素湖は、その摘発のために自らさぐりを入れに乗り出す。意外ないきさつから真相はつかめたのだったが。

*「担任の阿素湖先生」という台詞があるので、どうやら本当に教職についたらしい(?)。なぜかここ数話にわたって、阿素湖といい勝負になるような女性キャラクターがゲストで登場している。なお、この回で初めて阿素湖は同性と対決(?)しているようだ。

やけくそ全部日記

037(プレイコミック 1976年7月8日号)

 吾妻ひでおの日記で始まる。「○月○日 喫茶店でコーヒー飲んでいると すごい美少女に声をかけられる」等々、モテまくっている作者。しかしそこへなぜか阿素湖が現れて……。

*トビラに描かれているとおり、吾妻ひでおは"かぶらペン"を使っていたようである。いつだったか、アシスタントの沖由佳雄さんとペン先についての話になった時、こんな事をきかせてくれた。「(吾妻)先生は1ページ描くとペン先を交換しちゃうらしい。俺はもったいないから作品1本描くのに(ペン先を)1個で通しちゃってるけど」(注:ペン先はけっこう高価な画材だった)。かぶらペンで描線に抑揚をつけるのはGペン等でそれを試みるのに比べるとかなりの筆圧が要るようで、磨耗も早かったかも知れない。今思うと、吾妻先生の仕事場の机の上にやたらとたくさん使い古しのペン先が散らかっていたのは、この"1ページ毎に1個"のペースでの交換が一因だったのだろうか。

くくく… アグネス

038(プレイコミック 1976年7月22日)

 学校の昼休みか、阿素湖は木陰に腰を下ろし、進也の作ってくれた弁当を食べようとする。そこへボールが飛んできて大当たり。校庭でテニスをやっていたのだ。阿素湖はテニスの経験が無かったが、すすめられてやってみることになり……。

*なにゆえにこういうサブタイトルかというと、アグネス=チャン引退のニュースによって作者が大ショックを受け、話の途中で泣き出してしまうからなのだった……。

美しき赤貝の歌

039(プレイコミック 1976年8月12日号)

 プールへ来ている阿素湖と進也。しかし阿素湖の水着は素肌にペンキで描いてあるだけ。「いざとゆー時そのままできるし便利なのよ」と言うのだが、呆れた進也によってプールへ無理に入れられる。しかし「しばらく泳いでないから水が恐い」。無料の水泳教室が開かれている看板を発見し、行ってみる阿素湖だったが。

*進也が阿素湖のパニックぶりを見て「狂犬病かな?」と言っている。これは現実にあることにひっかけたギャグのようだが、ちょっと分かりにくいかも。それゆえか、アシスタントだった沖由佳雄は自作品『ひどい巨塔』の中で"狂犬病→恐水病とも言う"と欄外脚注を付している。
 舞台は"年増園"となっているが、平仮名がきの同名ならば東京都に実在し、そこがモデルになっているのかも知れない。

人類死すとも 阿素湖は死せず

040(プレイコミック 1976年8月26日号)

 「おねーちゃんが花作りなんて意外だな」と驚く進也。阿素湖は植物を育てるのに凝りだしたらしい。だが成長したのは奇妙なものばかり。そのなかでも極めつけは、"動く食肉植物"だったのだが……。

*ウィンダム(John Wyndham)のSF小説『トリフィドの時代(The Day of the Triffids)』のパロディらしい。「恐竜百万年」という台詞があるがこれは1966年の英映画『恐竜100万年(One Million Years B.C.)』の事らしく、阿素湖が着ている衣装はその主演女優ラクエル・ウェルチ(Raquel Welch)が着ていた原始ファッションを模しているのではないかと思われる。

台風 淫風 とりまぜて

041(プレイコミック 1976年9月9日号)

 もう九月だというのに暑い。扇風機はまともに動かない。「暑くて勉強できないや」と困っている進也に阿素湖が「風でもふかそうか」と言う。「ちょうどあたしの飼ってる23号が近くにいるから」と指笛を吹くや、なんと台風がやってきて……。

*台風を思うままに操るというこの話はSFなんだろうか、そうではないのだろうか??? 台詞にある『サンダーボーイ』というのは横山光輝によるマンガの題名らしい。

脈絡なき秋

042(プレイコミック 1976年9月23日号)

 夏は終り、秋が来た。もうスズ虫が鳴いている。進也はそれに聴き惚れているが、阿素湖は素早く捕まえ焼いて食ってしまう。悲しむ進也をなだめようとする阿素湖だったが。

*だいぶ久しぶりで"フキナガシ"(吾妻マンガ初期から見られる、大気中を泳ぐ魚)の子孫らしきもの(?)が1コマ登場している。

運動するから運動会

043(プレイコミック 1976年10月14日号)

 今日は小泉中学校運動会。徒競走で進也は2位となり、阿素湖がそれを叱る。なんとノミ屋をしており、カネを払わねばならなくなっていたのだった。子供のころには運動会で活躍したらしい阿素湖だったが……。

*いつだったか吾妻先生のお仕事場にお邪魔していたさい、畳の上に1冊のノートがほっぽってあるのに気づきました。はて何だろうと思ったのですが(前後の事を覚えていないのですけれど)部屋には誰も居なくて質問できず、表紙には何も書いてない。僕はこっそりそれをめくってみました。すると中は無地の白紙で、先生の手になるものらしいメモがあったのです。
「運動会(カキながら走るとか)」
だの、
「××(注:人名)から電話、アシスタント1名臨時で世話してくれないかと頼まれる、無理だろうと言う」
だのと書かれていました。もしかするとあれは先生が備忘録にしておられたノートで、あれに書き留めてあったアイディアが今回のお話で使われたのかも知れませんね。

(秋田文庫『やけくそ天使 1』は、ここで終わっている。)

文化なくとも文化祭

044(プレイコミック 1976年10月28日号)

 「今日はあたしがバイトしてる高校の文化祭」だと言う阿素湖につれられ、進也も見学に来ている。しかしなぜか入口で避妊具を配布されたりするので「こわい学校だな~~」と怯える進也。校内をとにかく見て回るのだったが、この高校ではどこへ行っても……。

*トビラに作者が登場し、「今回は綿密な取材のもとにストーリーを構成いたしました」と語っている。学校の文化祭というものは、えてして学術的な内容にはならず単なる遊びを集めたお祭りになってしまいがちなのも現実で、そうした事への風刺ギャグか?

スローモーション

045(プレイコミック 1976年11月11日号)

 阿素湖は起床、進也は料理、作者はトイレ。そして1日が始まる……。

*実験的な試みのなされている回。1ページを均等に分割して12コマとし、全ページをその様式で通してある。そのため映画のフィルムを見ているような感じがする。スキャナで取り込んでさらに加工とかを行なえば、短いGIFアニメが作れそう?

夜と朝に摑まれ

046(プレイコミック 1976年11月25日号)

 作者が独りで部屋にいたら、夜が「よいしょっと」窓から入って来た。「何してたの」「仕事」「本当はコイてたんでしょ」うるさく思っていたら今度はアグネスが入ってくる。大感激していたら次は千葉の兄さんが入ってきて……。

*当時アシスタントだった沖由佳雄さんから聞いた話では、この回は『ガロ』だかに載った前衛的なマンガ(つげ義春の作品)のパロディになっているという事だったと記憶している。「おまえの漫画は思想がない!」という台詞は、『コスプレ奥さま』にもよく似た言い回しで出てくるようだ。

スキーもよいけどストックも

047(プレイコミック 1976年12月9日号)

 デパートのスポーツ用品売り場へ来ている阿素湖と進也。スキーを見に来たのだったが、おとなしく買い物をする阿素湖ではない……。

*何度かリメイクされている米国製怪獣映画がこの年にも公開されており(監督はジョン・ギラーミン(John Guillermin))、そのパロディらしき部分がある。

きよしこの夜

048
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(プレイコミック 1976年12月23日号)

 クリスマスのパーティが真面目に開かれている。「ねえ園長先生 サンタクロースって本当にいるのかしら」「もちろんいるとも」しかし1人の少年、健太は席をたち「親のいないボクらにサンタなんてくるもんか!」と泣く。とつぜん作者がひとコマあらわれ「いまエログロになるからちょっと待ってね」と言い……。

*てなわけで(?)今回は阿素湖の登場が中盤からになっている。

吾妻先生おとくいのラブ▽コメよ

049(プレイコミック 1977年1月13日号)

 新年の挨拶をかわす、和服姿の阿素湖と進也。そこへ初詣へ行く約束をしていた美男子、君人がやって来る。しかし……。

*全ページ、当時の少女マンガの手法を取り入れ描かれている。阿素湖の瞳にはいつもと違って「星」が輝いており、全身と顔のアップとを同じコマで見せ、登場する男達はロングヘアの美青年ばかり。背景に花をあしらったり、点描が多用されたり、内面の独白もありあげくはナレーションの口調までが少女マンガふう。ただしコマ割りだけはほぼ青年マンガのそれのようで、これは読みやすさを最優先すべくパロディを制御したのだろうか。
 なおサブタイトルで「ラブコメ」の間に本当はハートの記号が入っているのだけれど、フォントに無いみたいなので逆三角で代用し表記しています。

「ジョ~~~~」

050(プレイコミック 1977年1月27日号)

 学校。朝っぱらからネグリジェ姿で校長に会い、「毛皮のコート欲しいのお手当アップして~~」と頼む阿素湖。しかし断られ、教室で生徒たちに向かい「今日はあたしの汚れたパンティー売りたいと思う」と商売を始めた……。

*なぜこういうサブタイトルになっているのか? は、読めば分かる。生徒からも校長からも阿素湖は「先生」と呼ばれているけれど、担当教科が何なのかは不明。

酸味スルドイチョコレート

051(プレイコミック 1977年2月10日号)

 進也は阿素湖からバレンタインデーのチョコをもらう。しかし開けてみたらそれは「型をとって冷や」したある"複製"だった。ハンサムな英語の城戸先生に同じものを贈ろうとするのだが、女生徒たちもたくさんチョコを贈ってくるので競争になり……。

街角にて……

052(プレイコミック 1977年2月24日号)

 進也と2人で街を歩いていた阿素湖は、雑誌記者らしき男女に声をかけられ写真のモデルとなる。しかしわざわざパンツを見せるようなポーズをとるので敬遠されてしまった。進也と映画を観るために外出した阿素湖だったのだが、いつしか男漁(あさ)りが目的となってしまい……。

*「アンノン」というのは当時有名だった女性誌2つの名称を合成したものと思われる("アンノン族"なる流行語もあった)。

まだ生まれてない阿素湖みどりのお話

053(プレイコミック 1977年3月10日号)

 阿素湖みどりは中学生だが、タバコを吸ったかどで「お母さんのようになりたいのか!」と教師(だろう)に殴られる。「こうなりゃてってーテキにグレてやるんだから」と中学生売春を決意し、街へ出てゆく彼女を待ち受けていたのは……。

*非常に謎めいた回。本来の主人公である阿素湖は今回全く登場せず、何の説明も無しにいきなり「阿素湖みどり」があらわれ、そしてこれっきり2度と(この『やけくそ天使』シリーズの最終回まで)姿を見せないようなのだ。阿素湖の娘、という設定なのかも知れないのだが、なんら明言は無く、それと断定できるような描写も見当たらない。ふと気になるのは教師で、その風貌(ふうぼう)は進也が成人したかのようにも見える。しかしこちらも何ら説明は無い。またトビラには羽根が舞っているのだが、空に見えるのは羽ばたく翼だけで、それが鳥なのか何なのか良く分からない。"不気味"くんが国も時代もさだかでないような服でゲスト出演しているせいか、ますますもって「???」なお話になっているようだ。
 なお、平成12年4月10日初版の単行本ではp.81とp.80が逆になっている。さては担当編集者までが「???」と思ってページノンブルを間違えたのであろうか?

とくいのアグネスまんが

054(プレイコミック 1977年3月24日号)

 銭湯へ行き、またも騒動を起こす阿素湖……と思ったら、なぜか作者の日記がその上にかぶさっていてよく読めない。アグネスが芸能界に復帰し5月には来日すると知り、大喜びする作者。そしてとうとう『アグネス・チャンLPふきこみ記念特別まんが アグネス・チャンとひでおちゃん』が途中から始まってしまうのだった……。

*「めんが生きてる」「油であげてないからね」という台詞は、当時あった即席めんCMの言い回しのパロディと思われる。
(注:以下、物語に関係ありません)
 この頃にアシスタントだった沖由佳雄さんから、「アグネス・チャンの写真とかない? (吾妻先生に)あげると喜ぶよ~」と言われた事がある。しかし沖さんが笑いながらそう語っていたこともあって、僕はこれを冗談なのだろうと考えていた。なぜなら仕事場であった無気力プロにはアグネス・チャンの写真は1枚も飾ってなかったし(美少女の写真ポスターは2枚ほど室内に見られた。でも林寛子の写真は無く、つまりは作品中に出てくる部屋の描写は、吾妻先生の自宅はいざ知らず仕事場においては現実とずれがあった)、だいいち当時まだ先生は新婚だった(?)ので、そういうコレクションをして喜んでいたら奥様にお仕置きをされるであろうと十代の僕は考えたのだ。しかし今になって思うに、どうやら沖さんは本当のことを言っておられたのかも知れない……。
 (2007年4月20日付記:当時に発行された書籍や雑誌を見ると、無気力プロ室内にはアグネス・チャンや林寛子のミニポスターが先生の机の前方と右側に、本当に貼ってあったみたいです。間違った事を書いてしまってごめんなさい。なお僕が上に書いた"美少女の写真ポスター"というのは、他の記事で既に書いたかも知れないのですけれど、銀行だかからもらったらしいドレス姿の日本人少女が写っている全紙大くらいの大きな1枚ものカレンダーと、たしか本棚の上、沖さんの机の斜め上方に飾ってあった、『少女アリス』のヌードのパネルの事です。)

人格 かわり玉

055(プレイコミック 1977年4月14日号)

 学校で、新入生を迎える式典がおこなわれている。担任のあいさつとなり、一年A組阿素湖先生が壇上に立つ。それが、どうしたことか、あまりにも清純でつつましい様子なので、同僚の教師達はいぶかる。だが、せかしてみれば赤面し、とうとう泣き出してしまった。どうやらカマトトぶっているわけではないらしいのだが……?

*かわり玉というのは駄菓子の名称で、いくつかの層からなっているゆえ、なめているうちに色がかわるようになっているもの。

結婚が恐くてオ○ンコできるかクソ

056(プレイコミック 1977年4月28日号)

 ウエディングドレスに身を包んだ阿素湖が、結婚披露宴の会場に現れる。いろいろトラブルも発生するがどうにか披露宴は進む。と思いきや「あ おねーちゃん時間だ」と進也に言われて……。

*"阿素湖素子"というフルネームが漢字で表記されるのはどうもこの回が初めてらしい。だからかどうか、「阿素湖さん」と呼ばれて本人が「素子よ~~」と(周囲に知らしめるかのようにして)返答している。
 なお、普通の人間には決してできないような真似を結末直前にやってのけており、SF的な(?)要素がこの頃には定着していたように思えるが、どうだろうか。

阿素湖がいっぱい

057(プレイコミック 1977年5月12日号)

 結婚し新妻となった阿素湖。しかし専業主婦は朝から家事で忙しい。どうにかこうにかダンナを送り出すまでにはこぎつけたが、普通ではない結婚をした阿素湖には、まだ他にもやらねばならないことがいろいろあって……。

*冒頭ナレーションは紙芝居の口上を模したものと思われる。"ドップラー軍団"というのはTVアニメ『惑星ロボ ダンガードA』(1977~78)に出てくる悪役の名称。独特の化粧はロックグループ"KISS(のThe Starchild)"を真似たらしい? なお今回、当時はまだ実験段階だったろうとある科学技術を、阿素湖は使いこなしている。

そして誰もいなくなった チ○ポも

058(プレイコミック 1977年5月26日号)

 そうじ・せんたく・お料理と、主婦業を忙しくこなす阿素湖。一眠りしてから買い物に出かけるのだけれど、なんだか様子がおかしい。フラフラしながら横断歩道を渡り、車にひかれそうになって……。

*推理小説みたいなサブタイトルだが、科学考証(本当にあること)とフィクションとを取り入れている回。SF色がこの『やけくそ天使』における基本要素の1つとして定着しつつあったのがこの頃なのかも知れない?

豪華!あらすじつき!

059(プレイコミック 1977年6月9日号)

 「あなた おかえりなさ~~い」と阿素湖が出迎える夫は三人いる。生活リズムがてんで噛み合わない(あたりまえだ)三人の夫と一人の妻。「あっちこっち出かけるのがめんどうで三人の夫集めたんだけどいやはや」」と疲れ果てる阿素湖。しかしそのややこしい日常をさらにややこしくする事件が待っていた……。

*連載59回目にして、登場人物の紹介と共に『前回までのあらすじ』というコーナーが付されている。その文面によれば本当に"担当の編集の人"が書いた文章であるらしい? 「天才漫画家の、吾妻ひでおの頭に"そうだ、ひとりの女をとおして、自由とはなにか、ということを考察してみたい"という考えが天の啓示のようにひらめいた」のがこのシリーズのはじまりだったという。阿素湖のことは「悲劇の運命に翻弄される薄幸の美少女」と説明がある。

空をこえて

060(プレイコミック 1977年6月23日号)

 遠い宇宙のかなた、とある星で、阿素湖の産んだ赤ん坊は母親のオッパイを欲しがり泣いていた。父親はこれを不憫に思い、子供だけを太陽系第三惑星へ送ることにするのだったが。

*母乳で育てると「オッパイのかたちがくずれる」というのは、この当時に言われていた説であったように記憶する。赤ん坊をコインロッカーに捨てるという事件は1975年に起きたようで、それが関係しているのだろうか。なおサブタイトルは日本初のTVロボットアニメの主題歌の出だしをもじっているのではないかと思われる。

じりじり自立

061(プレイコミック 1977年7月14日号)

 なぜか阿素湖はメドレーで歌いまくっている。そのあとちょっとワケがあって、「とにかくしばらくアレをひかえることです」と作者から言われる。が、それによって平穏無事な日々がやってくるかと思いきや、ますますもってややこしい事件が起きるのだった。

*『ふたりと5人』でデビューした"ポルノ虫"がこっそり出ているコマがある。それはさておき、この回で阿素湖は本当に自立(ありていに言えば離婚)してしまったらしく、3人の夫たちはこのあと出演していないようだ。

「スナックあそこ」大開店

062(プレイコミック 1977年7月28日号)

 「スナックあそこ」に1人の客がやってきた。そこへ「血だ! 血だ!」と全裸で大騒ぎしている阿素湖があらわれる。「あたしアンネの日は少しおかしくなっちゃうの」と言うのだが、客の災難はまだこれからだったのである……。

*「あそこ」というスナックバーは長崎に実在したそうで、『吾妻ひでお大全集』にはその証拠写真が載っている(p.244)。1980年10月5日に確認したらしいのだが、はたして現存するだろうか。店の屋号がこのマンガと何か本当に関係があるのかどうかは不明。

とーとつですが

063
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(プレイコミック 1977年8月11日号)

 「にっき あづまひでお ……7月31日 暑さのせいか頭が痛い またスケベまんががかきたくなってきた ぬとぬと いけない あああ ぼくはやっぱりダメなおとこだ とーとつですがアルジャーノンにはなたばをあげてやってください」

*『アルジャーノンに花束を』(Flowers for Algernon)というのはSF小説の題名。『失踪日記』p.141に言及されているくだりはこの回を指しているようだ。リトルピンクというのは当時のTV児童番組『おはよう!こどもショー』に出演していた少女歌手。「ニューヨーク市……大停電」という台詞は1977年7月13日に本当にあった事件が元ネタらしい(闇に乗じて犯罪が頻発するなどいろいろ大騒ぎになったという)。

阿素湖 地獄変 ずぶぶ

064(プレイコミック 1977年8月26日号)

 大混雑の列車に乗ってお盆の墓参りに行く阿素湖と進也。めんどうになった阿素湖は列車を止めてしまい、降りて帰ろうとする。怒ったのは他の乗客たち。その解決の為とんでもないアイディアを実行し、列車は北海道に来たものの……。

*阿素湖の両親が登場するが、あまり細かいことは明らかにされていないようだ。阿素湖はどうやら"あの世"でも顔が利く(!)らしい。

阿素湖 昔ばなし あああ

065(プレイコミック 1977年9月8日号)

 ある日おじいさんは、ワナにかかっていた鶴を助けてやる。しかし鶴はおじいさんをブチのめし、その荷物をかっぱらって逃げた。鶴は神様に叱られて「すぐ恩がえしに行って来い!」と人間の姿にされる。しかしそれはおじいさんにとって、不幸の始まりだった……。

*日本の昔話の他、とある有名な日本映画も途中からまぜこぜになり、もうむちゃくちゃ。日本人ならこれは笑えます。

タイム スナック

066(プレイコミック 1977年9月22日号)

 短い夏、長い雨の異常気象。だからかどうか、阿素湖はヘンなところでマツタケの養殖に成功した。しかし営業している店に客は来ず、家賃が払えない。あの手この手でなんとかしようと必死になる阿素湖だったが。

*(警告:以下、結末に言及しています)
 藤子不二雄『ドラえもん』で有名な"どこでもドア"に似た発明が登場。しかし機能が少し異なるようで、それゆえかパロディであるといった明言は無い。アイザック・アジモフ(Isaac Asimov)によるSF小説に類似のものが出てくるそうだが、はて? なお雑誌『COM』に掲載された石森章太郎の自伝マンガ(1970年頃?)では、"トキワ荘"で部屋の戸を開けると廊下を蒸気機関車が走っているといった場面があったと思う。"ドアの向こうに……"というのは、SFとしてはわりにしばしば描かれる幻想なのだろうか?
 最後のコマにある台詞は、当時にTVで流されたある文庫(およびそれの映画化作品)のCMパロディと思われる。

くるか!秋

067(プレイコミック 1977年10月13日号)

 「スナックを追い出されてから住むところも金もなし……」で街をさまよう阿素湖と進也。どうにかしようと努力するものの、阿素湖の出す案にロクなものはない。しかし季節は実りの秋、他人の家にある果樹は実をつけている。これをいただこうとして阿素湖は……。

*普通の人間には無いような機能が、阿素湖の肉体には備わっているようだ。最後にある宣伝マンガはたぶん、当時のTVで流れていたある日本酒のCMのパロディだろう。なおトビラのカレンダーには「やけ天映画化! 主演は」として、ある女優の名前があげられている。もし実写であったら阿素湖の容姿は、この女優がイメージにあてはまるのであろうか。

阿素湖の肖像

068
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(プレイコミック 1977年10月27日号)

 「私」は巨匠となる以前、名もなく貧しいころ、ひどく幼い娼婦(?)と出会う。カネを持っていなかったため、阿素湖と名乗るその少女と縁が切れなくなり、あやつられてしまう破目に陥るのだったが……。

*沖由佳雄さんから、「『ジェニーの肖像』(注:"Portrait of Jennie" ロバート・ネイサン(Robert Nathan)の作品)って知ってる?」ときかれ、「さあ? ドリアン・グレイ……なら知ってますけど」と答えたら、「いやワイルドじゃなくって……。今度、先生それのパロディを描くらしいんだ」と事前に教えてもらった事があります。『やけくそ天使』におけるSF(的な)小説のパロディは、この頃に定着しつつあったのかも知れません。

ウェイトレスです

069(プレイコミック 1977年11月10日号)

 "スナックいもむし"でウェイトレスを募集したところ、阿素湖がこれに応募してきた。採用はされたものの、注文されてもスパゲッティーが作れない阿素湖。どうにもトンチンカンな反応をするうえ、およそ戦力にはならず……。

*沖由佳雄は似顔絵で、客として出演している(この頃が吾妻マンガでの初登場か)。
 氏は、この回の制作裏話で、刺青(いれずみ)の点描をさせられたのがすごく大変だった事や、最後のコマでナチスドイツの6輪装甲車が出てくるに至ったいきさつなどを話してくれました。「先生の下絵には普通の車が描いてあったけど」、あえて現実離れしたこの車両を描いたとのこと。ミリタリーマニアでないと識別できないような冗談を、氏がいろんな吾妻作品でこっそり描き込んでいるのはご存知のとおりです。

秘境北海道を行く

070(プレイコミック 1977年11月24日号)

 「とうとうこんな所まで流れて来てしまった 日本のさいはて北海道」と語る阿素湖に、「寒いよ おねーちゃん!」と進也が寄り添う。のちに進也が明らかにしているところによれば「農家は嫁不足だからうまくもぐりこめば ただめし食えるって」判断した阿素湖がこれを実行したらしいのだが。

*阿素湖は嫁になっている(?)が、どうも"後妻"となったのではないかと思われる(そうでないとすると生物学的にも時間的にも無理があるのではないか?)。「キンタ・クンテ~~」という台詞はアレックス・ヘイリー(Alexander Palmer Haley)の『ルーツ』(Roots: The Saga of an American Family)に出てくる主人公の名前"クンタ・キンテ"から取ったものだろう。トビラで阿素湖が持っているのはウィンチェスターM73という、アメリカ西部劇によく登場するライフルで、そういう骨董品が小道具に選ばれたのもこのゆえか?
 (『ルーツ』というのは当時たいへん話題となった小説で、TVドラマ化されたものも日本で放映されました。余談ながら、僕は沖由佳雄さんの下宿へお邪魔していて雑談しつつ一緒にこれを観ていたのでしたが、沖さんは、「あんまり面白くないなぁ……身を入れて観てないからかなぁ?」と語っておられたようです。氏の直感が的中したか、この作品は日本では、大ヒットはしなかったように記憶しています。)

狭いと思えば狭い広いと思えば広い

071(プレイコミック 1977年12月8日号)

 けっきょく北海道から東京へ帰ってきた阿素湖と進也。アパートの一室を借りての生活が始まった。真面目な進也はつつましくも平和な暮らしを夢見る。「進也にばかり苦労をかけるな……」と感じ入った阿素湖は、「あたしも協力するか……」と行動を開始するのだったが。

*(注:以下は雑談で、あらすじと直接関係ありません)
「新聞紙28枚撃ち抜くTMガン」なるものが出てきますけれど、これは実物が無気力プロにあったらしいです。僕はそれを見た事は無いのですが、それの射撃用の"マト"を作ってくれないかと沖さんから頼まれました。
 沖さんの計画は、紙工作で戦車の模型を作り、それをたくさん並べて射的をやるというものでした。紙であれば(その展開図がB4で1枚におさまっているなら)コピーによって安く量産できるだろう、というわけです。
「ただ、」と沖さんは僕におっしゃいました、「(吾妻)先生も俺も飽きっぽいから、もし作ってもらえるんなら、早くお願いね」。僕は光栄に思ったものの、慌てました。紙工作の戦車の模型を超特急で開発(←おおげさ)せねばなりません。ちょうど学校の文化祭の時期(11月初旬、「文化の日」の頃)であり、僕はその展示で店番みたいなことをしていたので、紙やらペンやらを学校へ持って行き、そこで下絵描きだの仕上げだのをやって、どうにか数日で"コピー用原稿"をでっちあげ、沖さんに渡す事が出来たのでした。
 しかし問題はそのあとだったのです。
 吾妻先生はなんと、僕のインチキな提出物に対し「お礼だって」と沖さんを通じ、生原稿を1枚下さったのでした。見るとB4の上質紙にちゃんとペン入れされたもので、美少女の全身像が描かれています。それは少女歌手『リトルピンク』の似顔絵で、『わたしはタバサ』の衣装を着た構図でした。僕は、思いがけない事に驚き喜ぶと同時にぎくりとしました。なぜかと言うと、沖さんへ渡したコピー用原図は僕の完全なオリジナルなどではなく、『世界の戦車』(誠文堂新光社)という紙工作の本を殆ど丸写ししており、せいぜい部品を減らし製作過程を単純化したりした程度だったのです。これはもう原稿としてはまるっきりイカサマで、とてもではないけれど御褒美に生原稿をいただけるような働きは何もしていなかったのでした。沖さんにこれをちゃんと自白したかどうか記憶がありません(たぶん黙秘したと思う)。オリジナルの要素があるとすれば、それはコピー用原図の空白の穴埋めに、下半身だけヌードの、女のドイツ戦車兵(もちろんそんなもの実在しなかった)の寝そべっている絵を描き、オマケのマトとした事くらいでしょう。しかし沖さんのお話ではこの人物は「撃つにしのびない」という吾妻先生のご意見でマトには使われなかったそうです(先生が本当に暴力と無縁なかたであった事がこんな点からもうかがえます)。でもこの下手くそで品のない人物落書きはきっと作業中に仕事場の畳の上にあふれかえって散らかり、吾妻先生たちをヘンな気分にしてしまったんだろうな。
 吾妻先生、(きっとこの紙工作を手伝わされてしまったであろう)みぞろぎさん、そして沖さん、どうもすみませんでした、とほほ。

何でも出てくるサンタの袋

072(プレイコミック 1977年12月22日号)

 クリスマスイブらしい夜。1人の男が路上で、箱に入っており手付かずのクリスマスケーキを発見する。男は「あ もーけた」と喜んでこれを持ち帰り、妻と一緒に食べようとナイフを入れるや、ケーキの中から阿素湖が出現した。「クリスマスケーキの妖精」だと名乗る彼女は「神の御慈悲によりおまえたちに幸福をあたえにやってきました 何でも願い事を言うがよい」と語る。夫婦は狂喜するのだったが。

あなたもわたしもスター・ウォーズ

073(プレイコミック 1978年1月12日号)

 奇妙な太陽が浮かぶどこかの惑星で、青空ロボット市が開かれている。阿素湖(?)と進也(?)はそこで、二個一組の中古ロボットを購入するが、使ってみたらまるで役に立たない。しかしうち1体には、助けを求める姫の映像が入っていた……。

*このころ米映画"STAR…"がたいへんな前評判になっており、アシスタントだった沖さんに「やけ天でもパロディをやってましたね」と言ったら、「スティアー・ウォーズと言って欲しい」と、苦い顔。実際あとでトビラを見直したら確かに"STIR WARS"となっていたのでした(STIR は「かき混ぜる」などの意)。当時の読者はトビラからもう始まっているこのパロディを読み飛ばさずちゃんと気づいただろうか。
 "タモリ(森田一義)"に似たイモリ(?)が"ウランちゃん"に似た(?)幼女ロボットを売っていたり、"デスヘルスセンター"(関東では有名だった"船橋……"(1977年に無くなったらしい)のパロディか)なんてのが出てきたり、いろいろ冗談が隠してある。「80円区間」の鉄道切符の自動販売機らしきものまで描かれているけれど詳細不明。

飛行機もマックィーンもレッドフォードも手づくりよ

074
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(プレイコミック 1978年1月26日号)

 部屋にはストーブをつけ、そのうえコタツに入っているのだがそれでも寒い。阿素湖は「そーだハワイでも行こ!」と思い立ち、二人乗り小型飛行機をあっさり自作、完成させてしまう。阿素湖と進也を乗せた自作機はどうにか空へ飛び立ったが。

*(注:以下は雑談で、あらすじと直接関係ありません)
 アシスタントの沖さんは聖悠紀の『超人ロック』がお好きで単行本も入手され読んでおられたようです(僕にも貸して下さいました)。その作品の中に「第三波動」というのが登場したと記憶します。阿素湖が操縦する小型機には「第三……」というボタンがあるようですけれど、もしかするとこれに関係があるのかも知れません。

阿素湖一景

075
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(プレイコミック 1978年2月9日号)

 お金持ちの家でお手伝いさんとして働くことになった阿素湖。しかし彼女は他人の心が読めるようで、家の主人が帰宅するやいきなり怯えだして……。

*これはどうも筒井康隆『家族八景』のパロディらしい?
(秋田文庫『やけくそ天使 2』は、ここで終わっている。)

野菊の墓守り

076(プレイコミック 1978年3月23日号)

 今日は卒業式。そこで演じられる舞台劇『野菊の墓』では進也が主役をやるので、阿素湖も父兄席にやって来た。しかし彼女は何を勘違いしたやら、劇にエロティックな場面があると思い込み、あれやこれやとちょっかいを出し、とうとう……。

2.26も5.15も昔の話

077
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(プレイコミック 1978年2月23日号)

 お金持ちの家に住み込みのお手伝いさんとしてとどまっている阿素湖だったが、或る夜、大きな地震にみまわれる。そしてなぜか突然、みんなの前から阿素湖の姿は消えてしまった。阿素湖が気づくとそこは雪の降る屋外で、どうも1936年2月26日の東京であるらしく……。

*(以下、あらすじと直接関係ありません)
 第二次大戦がらみの場面があるので「さては吾妻先生へ沖さんが何か進言したのでは?」と僕は思い質問してみたのですけれど、沖さんのお返事では別にそういう事は無く、吾妻先生がご自身でこうしたエピソードを選ばれたようです。この回がプレイコミックに掲載された後、仕事場でファンレターを読んでおられた吾妻先生が、「アシスタントを褒めてあるよ」と微笑しつつ1通の手紙を沖さんに渡されました。それを受け取って読んだ沖さんは、「こういう人がいると描き甲斐があるなぁ」と笑顔。僕も読ませて戴いたのですがそこには、劇中に登場する軍艦の測距儀(そっきょぎ=艦橋の頂上にある機械)と砲塔が"連動"しているのに感心したという趣旨の言葉がありました。精密な絵を描くのは資料の写真などがあれば誰でもある程度はできるとしても、こういった正確さは艦船の仕組みについての知識が無いと不可能でしょう。「オレには読者に褒めてもらえるような長所が何かあるだろうか」と考えさせられたのをおぼえています。

さらに時は乱れて

078(プレイコミック 1978年3月9日号)

 前回、わけあって原始時代へタイムトラベルしてしまった阿素湖は、くじけもせずひたすらあれに熱中する。しかしそこへ氷河期が到来した。阿素湖は自ら冷凍冬眠に入り、長い長い時を眠り続け、ついに現代へと生還するのだったが。

*あまりにも意表をついた、最後のページの"解決方法"が笑える。こんな手で時間旅行をやってのけられるのは、阿素湖のほかに誰もいないだろう(?)。

オレたちには明日があ~る~さ~♪

079
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(プレイコミック 1978年4月13日号)

 一体どういういきさつなのか、阿素湖は警察の交通課へ就職したらしい? ところがミニパト運転中に横断歩道で歩行者をはねるわ、追突事故は起こすわで……。

*終盤になって「実はこういう事情だった」の種明かしがあり、加えてとんでもない結末へと至る。本当はパトカー車体側面には「警視庁」や「○○県警」などの文字が入るが省略されている(トビラでは描かれているようだ)。このへんは自粛であろうか。阿素湖が例のアニメのコスプレ(台詞では「扮装」と言っている)をする場面がある。サブタイトルは映画『俺たちに明日はない』(1967)と、坂本九の歌『明日があるさ』の合成か。

で た ら め

080(プレイコミック 1978年4月27日号)

 小学生時代の阿素湖のお話かな? と思いきや、苦悩している作者が登場。電車に乗り出版社へおもむいた作者は担当さんの机へ来て一言、「何のアイデアもうかばんのだけど」。

*(注:以下、あらすじと直接関係ありません)
 このころだったか沖由佳雄さんが、「時折オレ、漫画家になれたとしてもやっていけるだろうかって心配になるんだよ。(吾妻)先生アイデア出ない時は本当に苦しそうだもんねー……」と真顔で語っておられた事があります。こうした不安は、自分でも何作かオリジナル作品を完成させていた沖さんなればこそだったのでしょう。アマチュアというよりも「読むだけ」に近かったような僕のごときはそうしたお話を聞いてもあまりびびっていませんでした。もしイラストばかり描きちらしているのではなく"作品"を何十本も完成させていたら、僕にも沖さんと同様の恐れを少しは共感できていたのかも知れません。無知ほど人に蛮勇を与えるものはないようだ、と当時の自分を振り返ってつくづく恥ずかしくなるのですが……。

これがうわさの天狗さし

081(プレイコミック 1978年5月11日号)

 進也と一緒にハイキングをしている阿素湖。しかしどうにも体力が無い。進也が先に頂上へ行って待っている事になったが、独りになった阿素湖は道草を始める。見るとあちこちにアベックがいて……。

*映画『ミスター・グッドバーを探して』(1977)の題名パロディらしき台詞がある。
 冒頭、作者の一言メッセージについて。当時プレコミでは松本零士『宇宙海賊キャプテンハーロック』が連載(1977年1月~1979年6月)されており、それにつられた未成年の読者がどっと集まってきていた。1978年3月にTVアニメ版が放送開始されるとその読者エネルギーはどんどん上昇し、(僕の記憶が正しければ)フルカラーの似顔絵ハガキが大量に届いて、プレコミ編集部はそれらをカラーページで特集し掲載したりしていた。ついには「プレイコミックをのっとって少年マンガ雑誌へ路線変更させよう」という動きまで一部に発生したようである。結局プレコミは青年誌のままで存続したのだが、そのへんの事情から出た冗談が、今回の冒頭の主張になっているらしい?
 サブタイトルの『天狗さし』は落語の題名にひっかけているものと思われる。

お気にメスまま

082(プレイコミック 1978年5月25日号)

 交通事故に遭い重傷をおった阿素湖は、気がつくと病院のベッドにいた。彼女はサイボーグ手術によって生還できたのではあったが。

*当時放映されていた輸入TVドラマ『地上最強の美女バイオニック・ジェミー』("The Bionic Woman"1976~1978年)がヒントか。メカニックの図解は"スタジオぬえ"が挿絵で時折こうしたものを公開し人気を博していたのをパロディにしているのではないかと思われる(もっともこうした図解は、1960年代の週刊少年マンガ雑誌で毎週のように巻頭カラーの特集記事で見られたようなので、或いはそちらが元ネタかも知れない?)。「リアベの実」というのは『宇宙からのメッセージ』という和製SF映画に登場したアイテム。

新創世紀

083(プレイコミック 1978年6月8日号)

 二〇三六年。宇宙パトロール アソコ号は人々の平和と幸せを守るため今日も戦い続けていた。そして作者から一言、「そこの人真剣に読まないよーに」……。

*(注:以下、あらすじと直接関係ありません)
 「隊長 不死人 阿素湖」という字幕が出ているのですが、"不死人"という概念は、この回が執筆される以前から吾妻先生の脳裏にはあったようです。
 いつだったか"純喫茶カトレア"で、吾妻先生と沖さん、そして僕がそこに同席させて戴いていた時のこと、沖さんが阿素湖のキャラクター設定についてツッコミだか質問だかをされました。すると吾妻先生は苦笑されつつ、
「阿素湖は不死人(ふしにん)なんだ」
とおっしゃられたのです。僕はこの単語に思わず反応してしまい、
「ラザルス・ロングですねぇ~」
とくちばしをはさみました。吾妻先生が意外そうな表情をされたのを覚えています。
 ラザルス・ロングというのはロバート・A・ハインライン(Robert Anson Heinlein)のSF小説『愛に時間を』("Time Enough for Love"1975)で登場する主人公の名前でした。なぜ僕のような門外漢がその名を知っていたかと言うと、その少し前に早川書房の『SFマガジン』で単行本の紹介記事が出たばかりだったからなのです。しかしそのような付け焼刃はすぐに限界が来ます。このあと"クローン"についての話になり、吾妻先生は僕のほうを見、
「ハインラインの(小説での)クローンは……(どういう方法だったっけ)?」
とおっしゃられました。しかし僕は詳細を知らず、まともな返答ができません。博識な沖さんは、その当時に実験されていた現実のクローン技術について知識があり、それを説明して下さったように記憶します。SFは僕にとって、常にコワイ(難しすぎる)話題でした……。

ぬにょろー

084(プレイコミック 1978年6月22日号)

 「たいくつだなー雨の日は」と、独りで家にいる阿素湖がつぶやく。「誰か電話でもかけてこないかしら」と言い、電話に向って「えい」とやったら電話がかかってきた。「手が勝手にこの番号をまわしてしまった あなた誰ですか」と問う相手に「いいから遊んでよ」と言う阿素湖だったが……。

『としまあん』という食堂は『チョッキン』にも登場していて("としま庵"という表記になっている)、気になったので調べてみました。すると1979年の地図ではこの店(? 字はちょっと異なる)が当時の吾妻家および無気力プロの近所、川の近くに実在したようです(2006年現在の地図では別の建物になっている)。

生きかえり死にかえり

085
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(プレイコミック 1978年7月13日号)

 セミの鳴く水辺で、阿素湖は足先を水に入れ涼んでいる。と、そこに何やら流れついた。調べてみたら「なんだジジイか」と分かり、また流し去ろうとする阿素湖。しかし老人は気がついて彼女に問う、「なぜ なぜ助けたんだ!」「いや そーゆーつもりじゃ…」どうも彼は入水をくわだてたらしく……。

*流石にもと看護婦だったからか、阿素湖が手際よく、かつ情け深いところを見せているのが興味深い。

せーじゅん!

086(プレイコミック 1978年7月27日号)

 なぜか新人歌手としてデビューした阿素湖素子。「わたしアメリカ長く留学してたそれで日本語ヘタ」と自己紹介する彼女を「カタコトがかわいいじゃないの」とマスコミは好意的に評価する。デビュー曲は『おひがん花』だというのだが。

*なぜ歌手デビューなのか? という理由は、後で進也がお祝いに訪ねて来て全て明らかとなる。芸能界を風刺した内容となっている!?

ゲゲゲの阿素湖

087(プレイコミック 1978年8月10日号)

 いやに寝苦しい夜。進也は人魂が浮かんでいるのを発見して驚く。しかし阿素湖は幽霊をみても全く動じない。そこへ今度は河童が出現した。これはいったい?

*いろいろなオバケが今回登場するが、よく見ると『タバコおばけ』も出演しており、ほかに『ぐるぐるメダマン』でレギュラーだったキャラクターに似たものたちもいる。

愛するがゆえの屈折したアグネス漫画

088(プレイコミック 1978年8月24日号)

 空港。ついにアグネスは日本へ帰ってきた。しかしそこに全く人けは無く、ファンの姿は見えない。出迎えたのはただ1人、「こんどからおまえのマネージャーをやる阿素湖だ」と名乗る女で……。

*今回はトビラに以下のような文言が、ちゃんと活字で明記されている。「この物語はあくまでフィクションであり特定の国家、団体、アグネス、三上寛、百恵、昌子、淳子、イクエとは関係ありません!!」

ププププリティーベイビー

089(プレイコミック 1978年9月14日号)

 押入れの掃除をしていた進也が、阿素湖の写真と日記を見つける。それは中一の時のものだという。「可愛らしかったんだね」と微笑む進也。日記に残る阿素湖の中学時代がどのようなものだったかというと……。

*のちに阿素湖は『やけくそ黙示録』(1981)で読者の前に帰ってくるが、これは私立中学へ転校したところから話が始まっている。してみると彼女は中学時代を少なくとも2回は経験していることになる? サブタイトルは映画『プリティ・ベビー』(1978)のもじりか。

むちゃくちゃ

090(プレイコミック 1978年9月28日号)

 新聞社をたちあげたらしい阿素湖は紙面の推敲をしている。が、「これじゃあ三大新聞の一角にくいこめん!」と判断、「せめて芸能欄だけでも充実させなくては……」と出かけてゆく。進也が「またアグネスだな」と危惧したらはたしてその通りで……。

*進也が持っているのはポラロイド(インスタントカメラ)と思われる。写したその場で数分のうちに現像・定着がなされ写真を見ることができるので、デジタルカメラ普及以前には特定分野で非常に重宝したと聞く。
 なお冒頭の表札にある『練馬区西大泉町二〇三六番(新聞社)』というのは、この頃の吾妻家の住所であったことが地図で確認できている。

ダイヤモンド ほ ほしい!

091(プレイコミック 1978年11月9日号)

 カネを作ろうとして(?)宝石店へ行く阿素湖。しかしうまくゆかず、磁気ネックレスをすすめられる。その効果たるやてきめんだったが……。

あなたと私の内宇宙

092(プレイコミック 1978年10月26日号)

 バス停に並んで待つ人々を撮影する進也と、その監督をしているらしい阿素湖。「復興のきざし見えてきた邦画界にいま大作をもってなぐりこむ阿素湖素子事務所です」と彼女は名乗り、みんなに協力を求めるのだったが。

*後半で某有名怪獣映画のネタになり、阿素湖流の珍妙な映画制作が進められてゆく。怪獣を、要素としてではなく主役キャラクターとしてその内面を描写し掘り下げてみよう、という前衛的な試み(?)の結果やいかに。

気持ちいい色はいつも透明

093
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(プレイコミック 1978年10月12日号)

 進也と街を歩いていた阿素湖は、いきなり"透明人間"を捕まえようとし始める。「このへん多いとゆー話だから」。阿素湖にそう言われても信じられない進也だったが、なんと本当に阿素湖の言ったとおりになって……。

*ピンクレディーの歌がヒントらしい。"透明人間"はもともとH・G・ウェルズ(Herbert George Wells)のSF小説"The Invisible Man"が起源であるようだ。

無理心中……うれしい

094(プレイコミック 1978年11月23日号)

 進也が帰宅すると、阿素湖の姿が見えない。探していたらコタツの上に遺書があるではないか。大慌てでひき止めに家を飛び出す進也。そのころ阿素湖は、男と心中すべくダムのある貯水池にいた……。

*ショッキングなネタであるが、"心中もの"は日本の古典に見られる独自のジャンルであるとも言えるだろう。トビラで阿素湖が手に持っているのはどうやらキュウリであるらしい(理由は、読めば分かります)。

夢見ごこちで

095(プレイコミック 1978年12月14日号)

 進也のバイトでやりくりしているため、阿素湖たちの家計は苦しい。「おねーちゃんがそろそろ何か仕事する気になってくれれば……」と言われて阿素湖は「あいつに借りよ」となぜか天井裏へ。するとそこには貧乏神の一家が住んでいた。

*古典的なよくあるオチ(真相)を、逆手に取ったようにして独自のヒネリを効かせてある。作劇テクニックの面でとても興味深い回だと思う。

ないよりましな馬の尻

096(プレイコミック 1978年12月28日号)

 阿素湖のもとへクリスマスプレゼントがたくさん届いた。その中に1つ、すごく大きな箱がある。開けたら、なんと本物の馬が入っていた!……下半身だけではあったが。「どうやって生きてるんだろ?」と不思議がる進也は「複雑な郵送の途中で時空間がねじれ 輸送中の馬とプレゼントがいれかわったんだと思うな」と推理。とにかく飼うことにしたが。

*これはSFかも知れないが"不条理"また"ナンセンス"にもなっているようだ。シュールレアリズム風の光景がこれだけはっきり描かれるのは『やけくそ天使』ではこの回が初めてなのではないか?

ふるい予言だけど当たってたかなー?

097(プレイコミック 1979年1月11日号)

 正月となり、阿素湖は今年(1979年)がどのような年になるかをいろいろと予言(?)するのだったが。

*言うまでも無く、真面目な未来予測じゃありません、念のため。「●3月● こともなし」のせわしない食事場面は、つげ義春『長八の宿』のパロディか。

真贋の本質に迫って

098(プレイコミック 1979年1月25日号)

 「有名な一流品があっとおどろく大安売り」と叫び、露天商をしている阿素湖。いぶかりつつ客が話を聞いてみれば、有名人の"複製"を売っているのだった! その商売は大繁盛するが、はたして……?

えすえふハンター そら来た

099(プレイコミック 1979年2月8日号)

 平和な家庭。そこへ突然、吸血鬼みたいな装束の女がやって来る。「この家はえすえふに呪われている 私の名は阿素湖素子 人はえすえふハンターとよぶ」むろん家の人は関係無いからと断るが「えすえふの害毒は意外に根深くあらゆるところに蔓延しているのです」と説明が始まり……。

*(以下、あらすじと直接関係ありません)
 1970年代末にSFの流行があって、僕も人に作文をお願いし、アンソロジー形式で同人誌を作ったことがあります。題名は『私とSF小説』という芸の無いものでしたが、更に恥ずかしい事にはその裏表紙が『私と空想科学小説』になっていました。僕の級友で作文原稿をくれた、べらぼうなSFマニアだった男はこれを見て苦笑し、"空想科学小説"っていうのは昭和30年代のセンスだなぁと言いました。えー、そうなの!? と僕は慌てたのですが、ホンの表紙も裏表紙もイラスト装丁にしていたため修正は困難でした。平仮名で(同じ4文字の)"えすえふ小説"ってするとか? と彼は苦笑しつつ提案してくれましたけれど、僕はしらを切り通す事にしました。この同人誌では沖さんにも、第三次世界大戦ものについて寄稿をお願いしていたので完成品を1冊届け、題名表記で失敗したくだりを白状したのでした。
 さて、後日、無気力プロでお手伝いさせて戴いていた時、僕がヘマをやりました。スクリーントーンに"ぼかし"を入れるのに、(カッターの刃の背で削るのではなく)"ケシゴムをかけて上からホワイトを塗る"というやり方をしてしまったのです。吾妻先生がこれに気づかれ、沖さんにやり直しを頼んでおられました。沖さんは僕に、それは古いやり方なのだと教えてくれました。僕は、
「すみません、昭和30年代の頭ですから……」
とヘンな言い訳をしてしまい、沖さんは、
「どういう意味じゃ?」
と怪訝な表情をされました。僕が、
「例の、"空想科学小説"の……」
と言ったら沖さんが笑い出し、吾妻先生に、
「(彼は)SFを"空想科学小説"と言って、昭和30年代のセンスだと言われたそうです」
と説明されました。すると吾妻先生は苦笑しつつ、
「まあそれは言えるけど」
とおっしゃられたのでした。
「あ~! 先生にも言われた!」
と僕は嘆いて無気力プロの笑いものとなり……いや、なさけない話はともかく、SFに対する認識の古い世間のありさまに、吾妻先生はずっと失望させられてこられたんだろうなぁと思います。

百回記念はティー・パーティー

100(プレイコミック 1979年2月22日号)

 「今回は「やけ天」百回記念とゆーことでマッド・ティー・パーティです」と、帽子屋に扮した進也が司会をする。アリスに扮した阿素湖は拍手するが、他の出席者達はどうにも気力がなくて……。

*『不思議の国のアリス』のパロディ。
 この時のキャラクターデザイン画(おそらく)と思われるものは、沖さんがもらいうけて下宿へ持ち帰ったようで、僕にも見せて下さいました。イモムシの顔のデザインは本編のそれと少し異なり、つながった眉は無かったように記憶します。沖さんは"アリス"シリーズの研究もしておられたようで、「テニエルによるオリジナルの挿絵はやや写実的に過ぎるし、ディズニーのアリスはどうもヤンキー(Yankee=アメリカ人)娘ふうで(イメージと)違う」等きびしい意見。自分の理想に最も近いアリスはやはり自分で描くほかないのではと僕が言ったら「いや実はもう描いてみたんだけどさあ」と苦笑しておられたようです。アリス関連の洋書さえも入手しておられたみたいで、氏の研究熱心さはそのころ既に始まっていたと言えましょうか。

かくてーしんこく お早めに

101_1(プレイコミック 1979年3月8日号)

 阿素湖は税務署へ出向き、確定申告をするも全くメチャクチャ。進也がかわってきちんと手続きを済ませたのだが、阿素湖はそれが気に入らず……。

*トビラでアンドロイド阿素湖(?)の点検パネル内側が下手くそなのも、この回に限って進也くんの学生ズボンが真っ黒で間違っているのも、税務署員の背広の点描が雑なのも、アシスタントのアシスタント(僕)がヘマこいたからです。吾妻先生、読者のみなさま、どうもすみませんでした……。コンピューターの背面に「単三2本」と書いてあるのは沖さんの茶目っ気によるもので、最初は「星2つ描こうか」などと笑いながら僕に言ってました(田宮模型のロゴのパロディ)。しかし、それはプラモデルの趣味がある人にしか通じないですよぉと僕が苦笑したらさすがにこれは中止になったみたいで。大型コンピューターの表面にある市松模様は最初、白と黒だけだったのですが、ひととおり完成した後で吾妻先生みずから灰色部分のアミ線を加筆されたようです。最後の最後まで推敲と修正をしておられるあたり、今にして思えばまさにプロならではの丁寧さでした。吾妻先生のそうした真摯な態度を眼前にしていながら、僕の如き愚かなアマチュアはそれを見習うことが出来ていなかったわけで、思い返すとまことに恥ずかしいです。

侵略するなら こっちにも考えあるよ

102_1(プレイコミック 1979年3月22日号)

 コインゲームに熱中しすぎてカネも体力も使い果たす阿素湖。とうとう頭にきて機械をぶち壊してしまい……。

*このころ『インベーダーゲーム』がものすごく流行し、日本中の老若男女がカネをつぎこんでいた。ここでは架空の事として描かれているが、その"未来予測"はある程度本当になり、パーソナルコンピューターの普及と同時にいわゆる"エロゲー"が登場し、現在に至っているようだ。これは"侵略されてしまった"と言うべきか?

行く川の流れはあっちこっち

103_1(プレイコミック 1979年4月12日号)

 ライン下りで観光中の阿素湖と進也。楽しんでいる進也とは対照的に阿素湖はふてくされている。「この船じーさんばーさんばっかしで若いの一人も乗ってないじゃないか」と不満たらたらの阿素湖に、乗り合わせていた老婆がおにぎりをくれた。しかし直後に往生してしまい、別のおにぎりや酒をすすめてくれた老人達もまた……。

*船頭である不気味くんが着ている法被(はっぴ)には『大泉川下り』と書かれている。

知性一山30円

104_1(プレイコミック 1979年4月26日号)

 進也の世話で学校図書館の司書となった阿素湖。しかし彼女にとっては退屈な職場だった。結局やりたい放題の運営管理を始めるのだったが……。

*SF映画『2001年宇宙の旅』(2001: A Space Odyssey)がこの頃リバイバル上映され、それからパロディにされたのではと思える部分がある。
(注:以下、あらすじに直接関係ありません)
 台詞に「人類以前」という語句が出てきますけれど、これと同名の書籍が無気力プロに1冊所蔵されていたようです。内容は、人類が登場する以前に生息していたさまざまな生物の図鑑で、原著はたしかソ連のもの。それを徳間書店が和訳し、4500円くらい(これは当時としてはかなり高価でした)で出版していたものと記憶します。物凄く写実的で臨場感のあるフルカラーの図版がほぼ全頁にわたって収録されている分厚い大判の図書で、沖さんもしきりに感心され「この本は4500円でも高くない」と評価、僕も全く同感でした。無気力プロには作画資料として児童向けの和書の図鑑がいろいろ本棚にあったのですけれど、恐竜についてのそれを開いてみると、どうもこの『人類以前』をお手本に描いたのではと思える絵が何葉もあって(これは沖さんが気づき、僕に教えてくれました)、こうした分野のタネ本としては有名な書籍だったのかも知れません。吾妻先生がご自身で購入されたものだったようなので、もしかすると今もまだ、先生の書斎にあるのかも?

芸がのたうつ温泉芸者

105(プレイコミック 1979年5月10日号)

 ほろほろ温泉へ男の1人客がやって来た。「なんでしたら野生の芸者でも呼びましょうか」と番頭らしき男が言う。そしていきなり窓から阿素湖と進也が、大蛇と共に飛び込んで来て……。

*作者の出身地である北海道十勝郡の浦幌は温泉地のようで、そこに元ネタがあるらしい!? SF映画『惑星ソラリス(Солярис)』(原作『ソラリスの陽のもとに』)のパロディではと思えるくだりなどがある。

性格むつかしい少女漫画

106(プレイコミック 1979年5月24日号)

 月刊プリンプリン編集部をたずねる阿素湖。「しょーじょ漫画家になりたくて来ました」と原稿を編集者に見てもらうのだったが。

*(注:以下、あらすじに直接関係ありません)
 吾妻先生は少女マンガもいろいろ読んでおられたようです(むろん、プロとして当然なのでしょうけれども)。僕の記憶では純喫茶カトレアで沖さんと、大和和紀『はいからさんが通る』に描かれているギャグの部分でいろいろ話しておられた事があって、「あっても見せるな殺意と財布」とかの格言(?)がイイとか、談笑しておられました。

変態と言えなくもないけど正常!

107(プレイコミック 1979年6月14日号)

 カゼで熱があるのに出かけようとする阿素湖を進也は必死にひきとめる。すると阿素湖は脳だけを体外へ出し(!)進也の身体をのっとって……。

*あれのためなら万難をものともせず、とんでもない特殊能力を発揮する阿素湖。しかし独白では「ここで進也の行動に汚点を残しちゃいけない 一日楽させてやろうとかわりに学校に来たんだもん」と言っていたり、愛情深いところもうかがえる。ただし彼女のそうした動機は必ず災難を招いてしまうのだが……。

そら来た夏

108(プレイコミック 1979年6月28日号)

 梅雨で、急きょ雨宿りするカップル。「どこかに喫茶店でもないかな」と見回したら、『夏あり』ますと奇妙な表記をした風鈴が民家の玄関に吊ってある。「どーゆーことかしらこれ?」と不思議に思いつつ、2人が中へ入ってみると。

*(注:以下、あらすじに直接関係ありません)
 沖由佳雄さんが教えて下さったところによればこの回では、実在する家の屋内をモデルにして背景を作画したようです。今でこそ簡単な3D-CGのソフトもあり、建築物のモデルを作ってマンガの下絵の参考にするといった事もたやすいでしょうけれど、そうしたものがまだ無かった当時、屋外の場面よりも室内の背景を描くほうが大変だったのかも知れません。

むし暑い夜にはスーパーマン

109(プレイコミック 1979年7月12日号)

 「うーむし暑い 空でも飛びたいなー」と考えた阿素湖は、道行く人に「あなたクラークさん!?」と声をかける。一般人に変装しているスーパーマンを発見したと思い込んだらしく……。

*冒頭、ゴキブリに扮した沖さん(その後ろにいるのは先輩アシスタントである、みぞろぎさん)が、そろって通行人で出演している。
 オチは、後日談があっても良さそうなそれになっているが、このあとの回でそれらしいエピソードは特に無いようだ。

フーぞくインラン海 人魚

110(プレイコミック 1979年7月26日号)

 海水浴場へ来ている阿素湖と進也。ひょんなことから気絶した進也を、突然現れた大きな魚がさらっていった。やがて進也が気づき、目を開けるとそこには……。

とっつきに来ましたー

111(プレイコミック 1979年8月9日号)

 男が帰宅すると、家には客として阿素湖が来ていた。しかし妻も男も、彼女と面識は無い。「あんたにもてあそばれ捨てられた女子社員に頼まれ かわってうらみをはらしにきた うらみ屋阿素湖~~」と自己紹介。妻と男は呆れかえり、その家の幼い娘にはウケているのだが……?

うちわ鳴く夏

112(プレイコミック 1979年8月23日号)

 残暑きびしい中、進也が買い物から帰宅すると、阿素湖が窓際で「人間クーラー」をやっていた。進也はうちわを差し出して、「省エネ時代の先端をゆく冷房器具」だとこれを使わせるのだが。

*最初のページで進也は"買い物かご"を持ち、出かけていた事が分かる。これはプラスチックバッグをコンビニ等でくれるようになる以前、ごく一般的な買い物のスタイルだった。

ブキミな洋館にはなんかいる

113(プレイコミック 1979年9月13日号)

 吸血鬼狩りを始めた阿素湖と、それにつき合わされている進也。"ブキミな洋館"を発見して入り込み、「捨て値で売っても10万はする」という吸血鬼を探すのだったが。

*今回、進也が着ているのは「しぼり染め」のシャツではないかと思われる。「しぼり染め」はもともと和服の為の技法だったが、これが洋服のTシャツにとりいれられて流行したのは1970年代に始まるようだ。
 "ナハハ"に似たコーモリが出現するが、その声は「なきき」となっている……。
 キャラクターとしての出演が定着してきた沖さんに、今回初めて(?)台詞がちょっとある。

あら極限状況

114(プレイコミック 1979年9月27日号)

 突然の大地震。地下鉄に乗っていた阿素湖と進也は、車両ごと地下深く生き埋めとなってしまった。はたして2人と、他の乗客たちの運命は……?

*映画『地震列島』(東宝)のパロディかと思ったのだが、この映画の公開は1980年8月30日だったようなので、そのほぼ1年前に執筆されたこの回が、映画と何か関係があるのかどうかは不明。阿素湖がとんでもない超能力(?)を見せ、シュールな展開となっている。

阿素湖たんたんファンタジー①

115(プレイコミック 1979年10月11日号)

 朝から元気の無い阿素湖に、進也が声をかける。すると「人生に 疲れてしまったの」という返事。「ふと すべてがむなしくなってしまった」と語る阿素湖だったが、とりあえず進也は学校へ。「どーせ世の中感動すべきことは何もないんだ すべてたいくつでむなしいんだ」と独りごちる彼女の所へ……。

*シリーズ全体を通じて、"3号連続"のお話になっているのがこの回だけなら、かくも重い台詞を阿素湖が語るのもこの回だけである。いきなり変質者の役で、眉のつながった男(蛭児神建がモデルであるらしい)がこのシリーズに初出演(?)している。

阿素湖たんたんファンタジー②

116(プレイコミック 1979年10月25日号)

 異世界へ行ってしまった阿素湖は、なおも折にふれて内省にふける。「結局あたしって することしか考えられないアホな女なんだろうか」。男を反射鏡として自分を見つめる彼女を待つものは。

*アーさん(作者自画像)が1コマ登場し、藁(わら)人形に五寸釘を打ち込む"丑(うし)の刻参り"をやっている。これは或るアイドルの結婚が近づいて、作者が失意を味わっていたということであろうか?

阿素湖たんたんファンタジー③

117(プレイコミック 1979年11月8日号)

 女王にまでなった阿素湖だったが、苦難に見舞われる。「罰だわ 快楽におぼれ過ぎた罰なんだわ さよなら美しき人生」。身を震わせる阿素湖の頬には涙が伝って……。

*いったいどういう結末になったかは読んで戴くとして。
 「タマネギおねーさん」という台詞は、黒柳徹子が(その髪型から)「タマネギおばさん」と呼ばれ、CMで子供に理由を質問されて答えたくだりが話題になったことのパロディか。

しゅうしょく

118(プレイコミック 1979年11月22日号)

 「おねーちゃん今度はまともに就職したという話だけど」と、進也は阿素湖の様子を見に行く。すると驚いた事には『阿素湖KK』なるビルが建っていた! 「あたしも一応OLめざしたんだけど どこもまぜてくれないから」、いきなり会社をつくったという。廃墟のような所ではあったが、そこに会社訪問の若者が訪ねて来て……。

*阿素湖が意外な才能と手腕を発揮している。日本社会とりわけ都会での人生には特有かも知れない閉塞感を察知した主題で、今現在にも通じる問題を取り上げているのは興味深い。

けがわー

119(プレイコミック 1979年12月13日号)

 主婦が3人集まって、寒さゆえの苦労話をしている。そこへ全身をミンクで包んだ阿素湖が高笑いと共に登場。主婦達は嫉妬しまくるが、なんとそれは「地毛」らしい。「化け物!」と驚く一方、「貧しいサラリーマンの主婦がミンクを着られるチャンスなんてめったにない」と興味をそそられて……。

*トビラで動物コスプレ(?)をしている阿素湖が、何ともあやしい世界へご招待の1本(?)。

いよいよ次が最終回

120(プレイコミック 1979年12月27日号)

 食事中、突然に予感があって、阿素湖は作者のもとへと駆けつける。果たして思ったとおり、次は最終回なのだった。「こっちから願い下げだ」と出てゆく阿素湖は、「あたしくらいの名優になればどこ行ったって仕事はあるんだから」と、他の役の練習をいきなり始め……。

終わりだけど終わんない

121(プレイコミック 1980年1月10日号)

 全ては夢なのか……と思えるような霧の中に、阿素湖と進也がいる。ふたりとも一糸まとわぬ姿で、拒む進也の身体を阿素湖が抱き寄せた。初めて触れる女体のぬくもりに、進也の意識は弱まってゆく。阿素湖に導かれ、ついに進也は目覚めてしまうのだろうか?

*登場する「創作ノート」は半分本当だったのか、自費出版の『産直あづまマガジン』で、いくつかのシリーズの続きが発表された。
 このあと阿素湖は複数の作品で突如出現しているのだが(これから先だって、いつか出現するかも知れない!?)、それらの話はその都度にまた紹介しようと思う。

特別ふろく ゲキガのつもり

122(プレイコミック別冊 デラックス・マガジン 1977年4月25日号)

 連戦連勝していたプロ雀士のヒデは、雀荘にいた客から勝負に誘われる。あっさり勝てそうだと思いつつ打ってみれば、どうにも雰囲気がおかしくて……?

*発表時期から言えば『人格 かわり玉』『結婚が恐くてオ○ンコできるかクソ』の間の頃のお話。麻雀のルールを多少とも知らないと読んでいて少し分かりにくいかも? とはいえ、ここで題材になっているのは麻雀がどうのというより、自分が常識また正しいと信じてきた事柄が突然通用しなくなった時、どうすればいいのか分からず道化になってしまう人間の姿のようである。
 僕らが日常生活において社会に共通の土台とし、時にはそれにしがみついて生きている様々な決まりごとがもし「通用しない」となったら、僕らもやはり慌てふためくことだろう。しかしその一方で、いつも必ずついてまわるそうした約束事はまた、僕らをしばりつける桎梏(しっこく)にもなっている。だから、時にはそういうもの全てから解放されたい、と、心のどこかでは願っているのかも知れない。
 あらゆる決まりごとをあっさりぶち壊してしまうムチャクチャな能力を持つ阿素湖に僕らが奇妙な痛快さを感じるとしたら、それが理由なのだろうか。
 社会通念はもとより、遺伝子法則にも、重力にも、時間の流れにさえも(!)阿素湖は拘束を受けることが無い。おそらく吾妻マンガのなかで阿素湖は、最も自由な女性キャラクターなのではあるまいか。

(『やけくそ天使 3』(秋田文庫)は、ここで終わっている。)

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