カテゴリー「18 ふたりと5人(前)」の記事

はじめに

Futa5_se 『失踪日記』p.129から記述のある『ふたりと5人』は、(作者としては複雑な思いが伴っていたにしてもやはり)吾妻ひでおの出世作と言えようか。連載は週刊少年チャンピオン1972年10月9日号から始まって1976年9月6日号まで続き、秋田書店の少年チャンピオンコミックスでは全12巻になる(画像はその背表紙)。残念ながら現在は絶版のようなので、ここで紹介してみようと思う。
 ただし、全12巻の単行本にさえ収録されていない話が2本あるようだ。1つはCMマンガの『ヒモつき ふたりと5人』(少年チャンピオン 1974年7月22日号)なのだが、もう1本はなぜ収録されていないのか理由が分からない(『ふるさとへ帰ろう』少年チャンピオン 1976年2月23日号。時期としては少年チャンピオンコミックスであれば第11巻、『カモナベ食べてスタミナを!!』の次に発表されたもの)。
 アシスタントであった沖由佳雄さんが当時に聞かせてくれたところでは(僕の記憶が正しければ)、「嫁さんもらえるようになったのは単行本が出てからだ」と作者(吾妻ひでお)が語っていたとか。この『ふたりと5人』の第1巻こそがそれ、吾妻ひでお最初の単行本だったのである。週刊誌に連載を持つまでになっても原稿料というのはまだそんなに高額ではなく(しかもアシスタントを雇わねば原稿が間に合わず、その人件費は馬鹿にならない)、決して裕福などではなかったらしい。ただ(プライベートな事だが)単行本の出版は作者の挙式より後だったようだ。沖さんに語られたことは、"家庭を持ってやってゆくうえで収入にいくらかゆとりができ、明るい見通しが立ったのは単行本が出てからのこと"という意味だったのかも知れない。実際、単行本により作者にもたらされる印税というものは、マンガ家にとって冗談ぬきで本当に死活問題であると聞く。
 (私事にわたって恐縮だけれども、)僕が最初に吾妻ひでおへファンレター(というより抗議の手紙?)を出したのはこの『ふたりと5人』連載中のことだった。およそ1年ほど読んでみたところで僕の頭に浮かんだのは、この作品が赤塚不二夫『おそ松くん』(1962-1967)と永井豪『ハレンチ学園』(1968-1972)を足して2で割ったようなマンガで、しかもマンネリ気味になってきたという感想だったのである。つまりは「吾妻ひでお作品らしい個性と魅力が不足している」といった不満だった。連載開始までのいきさつを知ってみれば全く無理もないことだったのだが……。とはいえ僕よりも後に生まれた読者は『おそ松くん』も『ハレンチ学園』も知らず、全く新鮮な気持ちで『ふたりと5人』を読むことができ、大喜びできたのだろう(だからこそかくも長く連載が続いたのだと思う)。この作品の連載当時に小中学生だった読者にとってはとりわけ懐かしいマンガなのではないか。僕にとっても今読み返してみると、クラス会に出席しているような独特の気持ちがこみあげる。あの日のまま少しも歳をとっていない登場人物たちと再会できるのは、まさにマンガなればこその幸福な魔法だ。

美女・美女・美女の巻

0101(少年チャンピオン 1972年10月9日号)

 学友であるらしい少女に告白し、あっさりふられる少年、おさむ。彼の先輩はそれを「ことしにはいって八人目だろ?」と言い当てた。「どーやったらモテるか」を教えてもらおうと、おさむは先輩にラーメンをおごり、下宿で話を聞こうとする。と、その時、隣へ引っ越してきたらしい美少女が窓の外に見えた。しかしその美少女は奇妙にも、容姿がそっくりな"四つ子"であるらしく……。

0100*この第1話では、主要登場人物たちの人柄や立場が一発で分かるよう紹介されている。しかし設定説明にはとどまらず、菊地家の人々が最初は4人しか登場しないなど、巧妙な演出と構成がなされており面白い。画像は単行本第1巻の表紙。

愛してる~っの巻

0102(少年チャンピオン 1972年10月16日号)

 またも(?)恋におちた、主人公おさむ。その相手は隣へ引っ越してきた一家の長女、ユキ子だという。しかし彼女は同じ顔が5人いるうちの1人、どうやって見分ければ良いのやら。とにかく手紙を書き、デートに誘うことにしたけれど……。

*主人公のフルネーム(平竹(ひらたけ)おさむ)と、菊地家の全員の名前および年齢、そして「哲学的先輩」という呼び名が今回明らかにされている。ヒロインのユキ子はこの時13歳の中学生。少年の恋愛において、女の子の家族が"障害"として立ちはだかるというのは定番の苦労かも知れないが、かくもややこしいケースはもちろんフィクションならではだろう。とはいえ、好意を寄せられたと知ったユキ子がそれを喜び(?)つつも、家族と一緒におさむをからかって(じらして)楽しんでいるみたいな描写がさっそくあり、現実味も感じられる。

美女鑑別法の巻

0103(少年チャンピオン 1972年10月23日号)

 恋の目標であるユキ子を識別できるよう、哲学的先輩が作戦を練った。それを実行し、ついに5人を見分けられるようになった……はずだったのだが、どうも失敗したようで……。

*おさむが先輩に向って「さすが東大哲学部8年生!!」と言う台詞がある(ただしこの肩書きは、後にちょっと齟齬(そご)が出るようだ)。ユキ子さん宅は3階建て(?)のビルなのだが、これはマンション等ではなくて丸ごと全部が家(!)であるらしい。またトイレは庭にあって(?)便器は水洗に見えるが建物外観は古風な汲み取り式に見える。終盤で少女が2人、とある所で出てくるが、この後の回での登場は特に無いようだ。

ハイキングでせまれの巻

0104(少年チャンピオン 1972年10月30日号)

 菊地家の5人組とハイキングへ行くことになった、おさむ。哲学的先輩も同行するが、おさむは5人に利用され放題。「あいつぐらい女にダマされやすいのもめずらしいね」と哲学的先輩も呆れるが……。

*第1話で既に見られた要素だけれども、おさむが5人組によってさんざんな目に遭うというマゾヒスティックな喜劇パターンが少しずつ日常化してゆくのが読み取れる!?

ライバルを殺せの巻

0105(少年チャンピオン 1972年11月6日号)

 朝、おさむは登校する途中、ユキ子さんに呼び止められる。「こんどおさむくんの学校に転校するの いっしょにいきましょ」と告げられて大喜びするおさむ。しかし弟も同じクラス、あまつさえパパもママもおばあちゃんまでも、全員が学校へ行くことになってしまったようで……!?

*実に70年代らしいと言うべきか、ドタバタのめちゃくちゃパワーで話が進む。読んでいて、作者の若いエネルギーが伝わってくるようだ。それにしても菊地家のパパ(友紀子)は働きにも行かず、娘と一緒の中学へ通ってしまうのだからすごい。家が3階建てのビルであったりするし、菊地家は不労所得がそうとうある、とてつもない富豪なのかも???

恋人はわが胸にの巻

0106(少年チャンピオン 1972年11月13日号)

 おさむは学友から「五つ子の家」を教えてくれるよう頼まれるが、断る。恋のライバルを増やしたくないのだ。しかし哲学的先輩は1回百円でそれを教えまくっていた。おさむのためを思ってやったことで、「あんな異常人種」である5人に接近するなと彼は忠告するのだったが、おさむは聞く耳を持たず……。

*このあとワケがあって、おさむ達「ふたり」は菊地家の「5人」と戦うことになる。その大騒ぎはバカバカしくも楽しい。なお、今回のロマンチックなトビラ絵は内容に全然関係が無い。

愛の読書週間の巻

0107(少年チャンピオン 1972年11月20日号)

 ユキ子の顔を見に、おさむは菊地家をたずねる。すると全員が読書中だった。文学青年になればモテると考え、がぜん読書欲がわいた、おさむ。そこへ貸本の屋台をひいている先輩と出くわす。おさむは「これを読めばもうバカにされないですむぞっ!」と読み始めるが。

*おさむは「あ 哲学的バカ」という一言を口にしている。これは菊地家の言い草が、おさむにうつったと考えるべきか? あるいは自分の恋が思うように進展しないので、哲学的先輩も頼りにできないと感じ失望が出始めたのだろうか。

愛すればこその巻

0108(少年チャンピオン 1972年11月27日号)

 ユキ子といっしょに登校しようとする、おさむ。しかし菊地家の全員が同じ顔なので見分けがつかない。「毎日これじゃユキ子ちゃんをさがすだけで狂っちゃうよ~~っ!!」と嘆くおさむに哲学的先輩は、第六感をフルに使うという秘策を授ける……。

*透視ができるよう訓練するというあたり、超能力テーマのSFにもなっている? トビラ絵にはブラックユーモアが見られるものの、本編ではちょっぴりロマンティックなコマもあって、思春期の読者には強く印象が残ったかも。

死のアルバイトの巻

0109(少年チャンピオン 1972年12月4日号)

 哲学的先輩がおさむの部屋をおとずれる。家賃を滞納し追い出されたという。しかし、おさむは父からの送金が無く絶望的。ふたりはアルバイトで金をつくろうと仕事を探す。ちょうど菊地家でおてつだいさんを募集していたため、ふたりとも採用され、住み込みで働き始めるが……。

*みなさま、今年もどうぞよろしく。当ブログの質の向上に努力したいと思っております。 管理人拝

モテモテ・ハゲめの巻

0110(少年チャンピオン 1972年12月11日号)

 おさむの父が北海道から出てきた。息子のようすを見に来たのだったが、菊地家の5人組に招かれ、行ってしまう。「うちのおやじは生まれながらの色情狂」なので「ユキ子さんのテーソーがあぶないっ!!」と、おさむは菊地家へのりこもうとする。

*「社会の窓」を開けっ放しで初登場するおさむの父は、『きまぐれ悟空』の三蔵が黒メガネ等を外し、そのまま現代へ現れたような容姿だ。

すべてをのぞけの巻

0111(少年チャンピオン 1972年12月18・25日号)

 双眼鏡でユキ子さんの部屋を覗いている、おさむ。哲学的先輩は「あ いってやろ」とたしなめる。しかしおさむは「愛する女(ひと)ユキ子ちゃんのすべてを知りたい!」から「あくまでも純粋なのっ!!」と主張。結局、菊地家のぞき見のため秘密通路を作ることになって……。

*えらく危ない行動に出ているが、現実離れしているうえに主人公がひどい目に遭うのでOKだった? ユキ子さんの入浴場面がページ半分の大ゴマで描かれ、いよいよエッチ路線になってきたことがうかがえる(?)。

ボインてなーにの巻

0112(少年チャンピオン 1973年2月26日号)

 「またあそんであげるわね~~っ!!」と菊地家から送り返されてきた、おさむ。あまりにもイタメつけられたせいか記憶喪失となってしまった。哲学的先輩からさとされて責任を感じたユキ子は、おさむの治療に協力してくれる事になったが。

*収録順序が連載順序とは少し変更されているようだ(1・2月の連載ぶんは単行本の2巻冒頭にある)。「お元気でーすかー」という台詞は当時の生保CMのパロディと思われる。

みんな仲良くおふろにはいろうの巻

0113(少年チャンピオン 1973年3月5日号)

 おさむは、ユキ子さんたち5人が銭湯へ行くのに出会う。「うちのフロがこわれちゃったのよ」ということだ。「これはおそろしいことがおこりそう」と予測したおさむは、哲学的先輩もさそって同じ銭湯へ行くが。

*「ちがいがわかる男の年齢」という台詞は、当時のコーヒーCMのパロディらしい。

恐怖の「みもだえ湯」の巻

0114(少年チャンピオン 1973年3月26日号)

 「五週間ぶりにフロでもいくか……」と、おさむは銭湯へ。ふと見れば入口には哲学的先輩と、以前会った風呂屋の番台の男がいる。「せっしゃがたのんで哲学あふるるものを設計してもらったのでゴザル!」というのだが、その「哲学的おフロ」とは……。

*おさむの台詞(五週間)がちょっと妙なのは、雑誌連載だとこの間に2話あったかららしい(「アホな訪問者いらっしゃいの巻」および「郷ひろみとハワイへ行こうの巻」、第2巻に収録)。

20世紀の大天才退学か? の巻

0115(少年チャンピオン 1973年4月2日号)

 「ゲロ」という喫茶店の席で、勝手に酒を飲んでいる哲学的先輩とおさむ。店の人ともめていたら、大学の教授と出会った。「きみこのままでは退学になるよ!」と警告され、先輩は研究成果を発表せねばならなくなった……。

*流行していた歌『学生街の喫茶店』(ガロ)のパロデイだろう。哲学的先輩の台詞には、1973年1月27日にベトナム和平協定が調印された事にちなんだ部分がある。

(少年チャンピオンコミックス『ふたりと5人』第1巻は、ここで終わっている。)

お見合いをブッコワセの巻

0201(少年チャンピオン 1973年1月1日号)

 菊地家の一同が、人目を忍んで出かけた。おさむと先輩はこれを発見し後をつける。ユキ子がお見合いをするらしいのだが、実は「婚約だけすませて…相手の土地と財産をそっくりこっちのものに」という計画だった。おさむは「お見合い」と知ってこれをぶち壊す決意をする……。

0200*はじめはユキ子1人が対応する予定だったものの、相手がハンサムだったため家族全員が「交代」を要求するというアクシデントが発生、ややこしい展開となる。また、単におさむが嫉妬心からお見合いを壊すとすれば利己的な干渉に過ぎないだろうが、菊地家に悪巧みがあるため期せずして正義(?)の役割も果たす事になっている。他愛無いドタバタと見えて、構成と演出にいろいろ計算が隠されているように思った。画像は単行本第2巻の表紙。

愛は愛よりも強し?の巻

0202(少年チャンピオン 1973年1月8日号)

 菊地家の5人組に痛めつけられたおさむに、1人の美少女が薬を差し出した。中野由美子と名乗る彼女は「かげながらおさむくんをおしたいしておりましたのよ…」と告白し頬を染める。「うまれて十二年一度もモテたことのない」おさむは信じられないが感激と興奮で失禁。相思相愛の関係となるが、ユキ子は……。

*とってもためになりかつ現実的なオチになっている(いや、本当に)。それにしてもおさむは、自ら不幸な運命を選択してしまう性格のようだ(それが主人公として相応しいと言えようか!?)。

しあわせの哲学の巻

0203(少年チャンピオン 1973年1月15日号)

 「金なくしては哲学も語れない」ことを痛感し、哲学的先輩はバイトをしようと決めた。八百屋の店番をまかされたのは良かったが、あまりにも俗世間を超越したような(?)対応をするので、事態はとんでもない方向へと進む……。

*「血ぐるま組合」というのは『変身忍者嵐』(1972-1973放送のTV番組、原作は石森章太郎)に登場する悪の組織『血車党』のパロディか。

芸術のテクニックの巻

0204(少年チャンピオン 1973年1月22・29日号)

 天才的新進カメラマンとして世に出たらしい哲学的先輩。ヌード専門のようだがモデルを脱がせる腕前はすごい。「この手でユキ子ちゃんも」というおさむの頼みからこれを試みるが、ユキ子は拒絶。かわりに菊地家の残りの4人はすっかり乗り気となって……。

*このころカメラマンというのは若者たちの間で人気のあった職業で、写真を趣味にする少年も結構いたようだ。

コーヒーは西部劇スタイルでの巻

0205(少年チャンピオン 1973年2月5日号)

 哲学的先輩がスカートをはき、喫茶店の前で客寄せをしている。おさむも雇われ同様にしていたら、菊地家の5人組が通りかかった。「あんたらそれでも女装のつもりなのっ!?」とあきれた5人は協力してくれる事になり、店を改装。完成したそれはアメリカ西部劇に出てくる酒場みたいになり……。

*1960年代、日本ではTVでも映画でもアメリカ西部劇がもてはやされていた。日本の映画会社がもどきの西部劇映画(?)を作ったり、後にはイタリア製「マカロニウエスタン」を輸入したりしていた。作者はそうした諸作品を観ていたのかも知れない?

おさむくん大好きよ!の巻

0206(少年チャンピオン 1973年2月12日号)

 哲学的先輩の新しい下宿をたずねる、おさむ。なんと先輩は中古の潜水艦を改造、地中を航行できるようにして艦内に住んでいた。しかも彼の発明はそれにとどまらず、「ホレ薬」などもあって……。

*「上野のアメ横で購入」という台詞がある。これは東京都台東区上野にアメヤ横丁というのがあって、米軍が放出した中古の軍服や軍装品を売る店がそこに複数存在したことに引っかけているものらしい?

愛すスケートの巻

0207(少年チャンピオン 1973年2月19日号)

 おさむは菊地家の5人と一緒にスケートリンクへ行ったのだが、大混雑でとても滑るどころではない。おさむに相談された哲学的先輩は、一千平方メートル四方を凍らせることができる冷凍光線を使い、「町じゅうをスケートリンクにしてしま」う……。

*ちょこっとSFマンガになっており、作者の本領発揮というところだろうか。とっても綺麗で幻想的なトビラ絵だがこれも本編内容にちゃんと合致したくだりがあって、充実している。

アホな訪問者いらっしゃいの巻

0208(少年チャンピオン 1973年3月12日号)

 ひとりの青年が、ユキ子とデートするため車で迎えに来た。しかしそこにおさむが現れ「きょうはふたりで映画へ行く約束だよーっ!!」と言う。すっかり忘れていたユキ子は困ったあげく、おさむをペットだと偽って同行させる。おまけに菊地家の他の4人もこっそりついて来て……。

郷ひろみとハワイへ行こうの巻

0209(少年チャンピオン 1973年3月19日号)

 ユキ子たち5人組は、おさむと哲学的先輩がアルバイトしているというTV局へやってきた。が、そこで「ミス ティーンコンテスト 優勝者はカップルで郷ひろみとハワイへ招待!!」という大きな立て看板を発見する。「あたしたち5人で出れば……コンテストの優勝なんかかるいもんよ!」と出場を決めたのだった。しかしこれが普通のコンテストではなく……。

*完全にあっちの世界へ片足突っ込んでいるような審査員達のクレージーなありさまと表情が笑える。司会をしている3人組はレツゴー三匹の似顔絵と思われるがよく似ている。「ちょっとだけよ~ん」というのはドリフターズの加藤茶がやっていたギャグのパロディだろう。

なんかイーコトありそうなの巻

0210(少年チャンピオン 1973年4月9日号)

 膨大な資料を分析し、五人のなかからユキ子さんを見分けようと必死になる、おさむ。しかしついに発見したと思えた識別方法は……。

*発明品が複数登場したり、SFマンガの要素がある回。そのメカニックデザインも独特で面白い。これは前編で、翌週に物語が続いている。なお今回が、「タバコおばけ」の初登場ではないかと思われる。

六人目はだれだの巻

0211(少年チャンピオン 1973年4月16日号)

 突然6人となり、「ニセ者がひとりまじってる」と大混乱に陥る菊地家の人々。あれやこれやと試みるが、どうしても決着はつかない。もうどうしようもなくなって……。

*哲学的先輩がおさむを観察し、「心のそこではマゾヒスチックなよろこびにうちふるえてイジメられている」と判断。おさむがこれを自分で認めるくだりがある。『ふたりと5人』がSMギャグ(!?)であることが宣言された回というべきか?
 「タバコおばけ」の呼び名が今回初めて明らかにされているようだ。

おさむくん大評判の巻

0212(少年チャンピオン 1973年4月23日号)

 ある日、おさむがテストで百点をとった。それだけでもクラス全員びっくりしたのだが、当のおさむは「テストの点数で人間の価値が決められるわけじゃないぜ!!」と一言、女生徒たちはうちのめされ、おさむは大モテとなる。おまけにスポーツもケンカも無敵というカッコ良さ。ユキ子さんたち5人組も、これは一体どうしたのだろうと不思議がるが……。

*しっかりSFマンガになっている回。「マジンゴーッ」という台詞は永井豪のマンガからのパロディだろう。

ついに見わけた五人組!の巻

0213(少年チャンピオン 1973年4月30日号)

 ユキ子さんが見分けられなくて苦しむ、という悪夢に毎日悩まされる、おさむ。「こんなんじゃそのうちに死んじゃうよ!!」と五人組の前でとうとう泣き崩れる。さすがに菊地家の人々も同情してか、「確実に五人を見分ける方法」を教えてくれる事になった。ただしそれは「わたしたちのイジメに耐えぬくこと」という恐怖の条件付きで……。

*なぜかは不明なのだが、この回からおさむは「ユキ子さん」と、「さん」づけで呼んでいる(それまでは「ユキ子ちゃん」だった)。彼の内面に何らかの変化があったのだろうか?

チャンスを逃がすな!の巻

0214(少年チャンピオン 1973年5月7日号)

 「いなかのおばさんの病気みまい」で、菊地家の人々は出かけてゆく。そして、ユキ子ただ1人が家に残り、留守番することになった。「こんな時おさむくんに来られたらたいへんね!」と思っていたら、その通りおさむが来てしまう。自分だけしか家にいない事がバレればおさむにせまられてしまう、と慌てたユキ子は、5人そろっているフリをする。しかしおさむは半信半疑で……。

*本棚に「タバコ」「する?」という背表紙が見えるが、これは当時のCMからとった言葉らしい。

どこか遠くへの巻

0215(少年チャンピオン 1973年5月14日号)

 いつも5人組にやられて生傷がたえないからと、ひとり旅に出てみた、おさむ。ところが何と言うことか、哲学的先輩が旅館にいる。「オレなんか生活のために番頭やって労働しているとゆーのに!!」と、大激怒した先輩はおさむに八つ当たり。そのうえ更に不運なことには……。

*大抵いつも味方として行動を共にする哲学的先輩が、珍しく全然助けてはくれず、おさむが孤立無援となる。不運ギャグとでも言うのだろうかこれは?
(少年チャンピオンコミックス『ふたりと5人』第2巻は、ここで終わっている。)

男の夢を掘り下げる!の巻

0301(少年チャンピオン 1973年5月21日号)

 本屋でエロ雑誌の立ち読みをしていたおさむは店主に泣かれ、やむなくてきとうに選んだ本を買った。『世界の秘宝』というその書籍によれば、なんと5人組の家の地点に莫大な黄金が埋められているらしい! おさむと哲学的先輩は穴掘りを開始するが……。

0300*これより単行本の第3巻となる(画像はその表紙)。今回のエピソードは、あとになってちょっと真実味を帯びてくるようだ。菊地家の家柄を考えると、もしかしたら埋蔵金などが本当にあるかもと思えなくはない(『わらわはユキ子姫じゃの巻』参照)。現在の菊地家の暮らしぶりを見てもその財力はかなりのもののようだし、真相はどうなのやら? 「大五郎三分間待つのだぞ!」という台詞は、時代劇をもとにしたレトルトカレーのCMパロディだろう。「おかみさん時間ですよ~~」というのは銭湯を舞台とするTVドラマで言われていた台詞と思われる。

孤独な旅行をもう一度!の巻

0302(少年チャンピオン 1973年5月28日号)

 おさむは孤独を求めて一人旅のやり直しをする。もしやまた、知っている顔に出くわすのではと不安になるが、今回は成功したようだった。が、そうなると拍子抜けしてしまい、「ユキ子さん… きょうはどうしてたかな~~」とつい想像してしまって……。

ぼくはおばさんだ!の巻

0303(少年チャンピオン 1973年6月4日号)

 下北沢のおばさんが病気だというので、ユキ子ひとりがお見舞いに行くことになった。おさむはこれを知り、このチャンスを利用してユキ子にせまろうとする。あれやこれやで先回りし、おさむはおばさんになりすますのだったが。

*トビラにあるとおり『赤ずきんちゃん』のパロディ。連載開始直後はただ恋に苦しむ少年だったおさむが、すっかり色情狂の一歩手前といった行動に出ている。今回ユキ子は彼を「世紀のインラン人間」と呼び、「このマンガ オフロの場面がやたら多いわね!」と言うのだった……。

わらわはユキ子姫じゃの巻

0304(少年チャンピオン 1973年6月11日号)

 「自動オッパイモミモミ機」を作るつもりが、間違ってタイムマシンを作ってしまった哲学的先輩。おさむは先輩のいないすきにこれを使い、過去へと旅立つ。なぜ菊地家の人々がいつも女装しているのか、彼らの先祖を調べようとするのだが。

*『ふたりと5人』シリーズでも珍しいであろうSF時代劇(?)の回。ここに出てくる下北沢(しもきたざわ)は東京都世田谷区に実在する地名だが、かつてそこに城があったかどうかは……。

ハレハレ・ファッションの巻

0305(少年チャンピオン 1973年6月18日号)

 ユキ子は哲学的先輩に夏服のデザインと仕立てを頼んだ。「きっときみを世界一の美女にする」という先輩にはしかし、おさむが助手についてきている。結局のけ者にされたおさむは「ユキ子さんのために 先輩に負けないデザイン考えるぞー!!」とはりきって……。

*あからさまなSMギャグの部分もあるのだが、もしかすると(全然無関係かも知れないが)根本においてこの回は、大和和紀『モンシェリCoCo』(TVアニメは1972年に放送)のパロディか? 大和和紀は"ぐらこん北海道支部"で作者の仲間だったという。

ユキ子はドレイだっ!の巻

0306(少年チャンピオン 1973年6月25日号)

 哲学的先輩とユキ子さんが、なんと手をつないで歩いている。これを見たおさむは半狂乱となるが、実は先輩が制作した、ユキ子さんそっくりのロボットなのだった。毎日ユキ子さんにイジメられてきたうっぷんを晴らすべく、おさむはロボットに八つ当たりするが。

*おさむの歌っている「ツマヨウジ~~」というのは、あのねのね『赤とんぼの唄』の替え歌かと思われる。

海はひえるなぬれるやろなの巻

0307(少年チャンピオン 1973年7月2日号)

 おさむと哲学的先輩、そして菊地家の5人組はそろって、海釣りに来ている。最初は真面目に釣りをしていたおさむだったが、途中からイタズラを始め、とうとう海に落ちる。すると海底には、ユキ子によく似た「人魚の国のユキ姫(ひめ)」がいて……。

*ユキ姫は人魚であるらしいのだが脚はちゃんとあって、吾妻オリジナルのユニークな姿をしている。

愛と死をみつめて!の巻

0308(少年チャンピオン 1973年7月9日号)

 ユキ子がひとりで留守番しているのに気づいたおさむは、菊地家へあがりこんで、やりたい放題。しかしユキ子の反撃は全く無い……? 実はユキ子は高熱で寝込んでいたのだった。大慌てしたおさむが先輩に頼んで診てもらったら、風邪であるらしい。おさむは必死で看病を始めるが。

*「このマンガはエロだけでもってる」という作者の分身(吾妻ひで子)の台詞に対し、もうひとりの分身(アーさん)は「ストーリーの必然性ちゅうもんが…」と反論。作者の内面の葛藤が吐露されている!?

おさむくん変身!の巻

0309(少年チャンピオン 1973年7月16日号)

 TVで芸能人を観て熱中する、菊地家のママ。それがきっかけで全員が自分の理想のタイプについて話し始める。ユキ子の理想を知ったおさむは哲学的先輩に相談し、なんとかしてそれに自分を近づけようと努力するのだった。

*「肥柄杓(こえびしゃく)」が登場するが、これは今時の読者には説明が必要か!?

おさむくん妊娠!の巻

0310(少年チャンピオン 1973年7月30日号)

 おさむは自分が妊娠したと大真面目で思い込む。最初はこれに爆笑するユキ子だったが、赤ん坊は自分とおさむの間にできた子だということになってしまいパニックとなる。なんとかおさむを流産させようとあの手この手で死に物狂いとなるが。

*この回は最初から最後まで"えっちい"場面は1コマも無く、ドタバタだけで成立している。妊娠した恋人を流産させようとする男の話は数多くあれど、逆に女であるユキ子が半狂乱でそれを試みるというのは、ギャグマンガならではの展開というべきか。

恋人志願!の巻

0311(少年チャンピオン 1973年8月6日号)

 風呂をのぞいてユキ子に叱られる、おさむ。「ねえユキ子さん ぼくの気持ちをわかってくださいよー 恋人になってよ」と泣いて頼まれ、ユキ子は「わたしとずーっといっしょにいて なにもしなかったら恋人になったげるわ」と条件を出した。大喜びしてはりきるおさむに、ユキ子の挑発と誘惑が次々と押し寄せる。

*おさむが動きを封じられ、いつもと立場が逆転しているのが新鮮な回。

愛があれば!の巻

0312(少年チャンピオン 1973年8月13日号)

 ユキ子がおさむの部屋に来るなり一言「結婚しましょうか?」。おさむは反射的に承諾するが、式の準備の全てをまかされたからさあ大変。狂喜乱舞してばかりもいられない。そして重大な問題に気づいたおさむだったが……。

*この回も、えっちい場面は皆無。準備に東奔西走するおさむの、ワンマンショーのような展開となっている。
 舞台になる結婚式場は、内装(独特の天井や、正面に見える祭壇背後のガラス窓のデザイン等)からして、東京都に実在するある場所がモデルになっているのではないかと思われる。ちなみにその"ある場所"で、このマンガに深い関係のあるご夫妻が挙式したようだ。ここが舞台となったのはそのゆえか。

ハッスル精神修養!の巻(その1)

0313(少年チャンピオン 1973年8月20日号)

 鬱蒼(うっそう)と樹木のしげる山奥へやってきた、5人組とおさむ。先輩の山小屋へ精神修養のため登山してきたのだったが、先輩のシゴキは全く容赦がない。あまりのきびしさに次々と脱落し、ユキ子とおさむだけが残ったが。

*"バンジージャンプ"は今でこそ広く知られているが、この当時はまだ海外旅行さえ現在ほど普及していなかった。よって、ここに登場するそれは、他国他民族の習慣についての作者の教養から出たアイディアだろうと思われる。

ハッスル精神修養!の巻(その2)

0314(少年チャンピオン 1973年8月27日号)

 やっと夕食の時間になったけれど、出てくる料理はゲテモノばかり。露天風呂のあと就寝し、どうにか生き延びて最後の仕上げにたどり着くユキ子とおさむだったのだが……。

*明確な目標が存在すると人並みはずれて我慢強いのは、おさむの長所と言えようか。

(少年チャンピオンコミックス『ふたりと5人』第3巻は、ここで終わっている。)

バースデーへの招待!の巻

0401(少年チャンピオン 1973年7月23日号)

 哲学的先輩がおさむの部屋を訪ねると、ソロバンで何やら計算の最中。きいてみればユキ子さんの誕生日プレゼントの予算を考えているらしい。「スポーツカーにしようかドレスにしようかダイヤにしようか……」と本気で悩んでいるおさむをよそに先輩は昼寝してしまうが、おさむの空想はとどまるところを知らず……。

0400*これより単行本の第4巻。
 今でこそ105円で電卓が売られているものの、1972年には最低でも12800円、1975年にやっと4800円まで価格が下がったといった状況だった。それゆえ、おさむならずとも当時はソロバンを使うのが普通だったのだ。

ロマンポルノに大挑戦!の巻

0402(少年チャンピオン 1973年9月3日号)

 先輩がアルバイトで映画を作る事になった。ユキ子は主演に選ばれよろこんで引き受けたものの、台本を読んでみたらその題名に『必殺のぞき人』の文字。驚き腹を立て、やめようとするユキ子だが、「契約をやぶった場合はホンコンに売りとばす」という書類を作ってあったためさからえない。とうとう撮影は始まって……。

*当時まだビデオは普及しておらずフィルムでの撮影が一般的だった。副題にある「ロマンポルノ」というのはこの頃に存在した"成人映画"のブランド名。ホンコン(香港)はまだ中華人民共和国に返還されておらず、独特のイメージや先入観が広まっていたのかも知れない。『必殺のぞき人』というのは、流行していたTV時代劇の題名パロディだろう。きわめて珍しい事に、ユキ子の顔の崩し方には黒鉄ヒロシの画風を模したらしい部分がある。

先輩ひとりがなぜモテるの巻

0403(少年チャンピオン 1973年9月10日号)

 TV番組『結婚したけりゃよっといで』は、「ウエタ色ガキども」なる視聴者男女の参加による集団お見合いのような内容だった。その会場であるホテルのプールには、おさむと哲学的先輩も来ている。「いい歳こいて一人身はかわいそう」だからと「先輩の見合い」のためにおさむが連れてきたみたいなのだが……。

*いろいろなドタバタが詰め込まれている回。しかし副題にあるとおり先輩の活躍が目立つ。「きみのは(太い)」という台詞はシャープペンシル(の替え芯?)CMのパロディだろう。"粉末ジュース"というのは1970年代初頭あたりまで売っていたようだ。

ウヒウヒ家庭教師!の巻

0404(少年チャンピオン 1973年9月17日号)

 先輩がアルバイトで、ユキ子たちの夏休みの宿題を教えるらしい。おさむは羨ましがってついてくる。はじめは順調だったが、先輩は午後によそでも教える予定があるとの事で去ってしまい、おさむが後を引き受けたが。

*クーラーはこのころからあった筈だが、今よりもはるかに高額な家電品で、扇風機ほどには普及していなかったと思われる。汲み取り式の便所も珍しくはなかっただろう。

アトリエ・おさむの巻

0405(少年チャンピオン 1973年9月24日号)

 「アトリエ・おさむ 美人モデル多数! 入会金500円」なる看板を見、哲学的先輩がおさむの部屋をたずねる。しかしこれがインチキ商売で、およそ儲かる見込みは無い。かくておさむと先輩は、ユキ子をモデルにやとおうとするのだが。

*ちょっと写実的に描かれたユキ子が裸身をおがませてくれる回。髪の長さが少し違っているのはカツラを着用しているという事か? 劇中データを信じるならば彼女のスリーサイズはB80・W40・H90らしい。鼻血は谷岡ヤスジの表現のパロディだろう。

色グルイ刺客の道!の巻

0406(少年チャンピオン 1973年10月1日号)

 刺客ユスリ狼こと公儀料理番おがみたおす(哲学的先輩)は、その息子であるチン五郎(おさむ)と共に旅をしている様子。藩の秘密をにぎって逃げた女忍者(ユキ子)を始末するよう依頼され、これを引き受けるのだったが。

*これは大流行した時代劇『子連れ狼』のパロディ。シリーズ中いきなりこんなお話をやっても大丈夫なのがギャグマンガの楽しさだろう。

相談室にきたれ!の巻

0407(少年チャンピオン 1973年10月8日号)

 「悩める者よ! きたれ!! 下半身の相談室 東大哲学科 先輩医院」という看板を見て、ユキ子がやってきた。と、なぜか助手という事でおさむもそこにいる。先輩は真面目に相談にのってくれるのだが、おさむは暴走し……。

*僕の記憶が正しければ、雑誌掲載の時には看板の文言が「目大(もくだい)中退」という肩書きになっていたと思うのだけれど、詳細は不明。「日劇ミュージックホール」は1984年に無くなり、現存しない。今回もユキ子がやや写実調の画風で描かれているコマがあるが、これでみるとたしかに美人、恋に狂うおさむの気持ちが分かる!?

赤ちゃんはどこから!?の巻

0408(少年チャンピオン 1973年10月15日号)

 「諸君はくだらないまんがなんかでまちがった性教育をうけている!」と、日本の将来を深く憂えた哲学的先輩は決然と立ち上がり、自らが教育指導を開始した。生徒は大喜びのおさむと菊地家の5人組なのだが……?

中古ブロでのぞこう!の巻

0409(少年チャンピオン 1973年10月22日号)

 おさむが中古の風呂を買い、部屋に設置する。「ユキ子さんと二人で」入ろうと考えたのだ。「最初はぜひユキ子さんにはいってもらいたいと思いまして」と誘ったら、ユキ子は承諾。一緒に入るのはあっさり断られるも、おさむには更なる計略があった。

*トビラは何やら幻想的な絵だが、これは当時TVに流れていた浴槽CMのパロディと思われる(かつこのトビラは伏線になっているようだ)。電話BOXのように狭い、浴室まるごとワンセットになった風呂というのは、このころ本当に発売されており、日本の住宅事情に合っていたのかそこそこ普及したようである。「Goちゃんに負けてられないもん」という台詞は、同じチャンピオンに連載中だった永井豪を指すらしい(いっぽう永井豪は自作品の中で『チャーミング学園』という校名を説明するくだりで自画像に化粧をさせ、それに矢印を付して「吾妻調」とコメントしていたと記憶する)。

サーカスで猛ハッスル!の巻

0410(少年チャンピオン 1973年10月29日号)

 「きまぐれサーカスきたる!!」というチラシを見たユキ子は入団を決意。「この美ぼうならスターは確実!」と考えたのだ。これを見たおさむは後を追ってサーカスに加わる。なんとユキ子はおさむと組まされてしまい、練習することになったのだが。

*はりつけ状態にされたユキ子が恐怖のあまり失禁し、おさむは……。

体育の秋!の巻

0411(少年チャンピオン 1973年11月5日号)

 おさむとユキ子さんの中学校で、体育祭が近づいていた。女子は全員体操をするらしいが、そのコーチは哲学的先輩、そしておさむが助手だと判明。女子の体操ユニフォームはレオタードにフィッシュネットタイツで、何だか妙に色っぽく……。

*このころNTV系で『11PM』という深夜番組があり、その中に『ベッド体操』というコーナーがあったので、そのパロディなのかも知れない。今回ゲスト出演の「田吾作」と呼ばれているキャラクターがスケベ根性丸出しの脂ぎったケダモノおやじで、そのすさまじいエロ人間ぶりは読んでいて爆笑もの。イカれた人物もここまで徹底的だと、マンガで見ているぶんには非常に楽しい。

避難訓練の巻

0412(少年チャンピオン 1973年11月12日号)

 哲学的先輩の提唱により、おさむと菊地家の5人組は避難訓練をすることになった。先輩としては真面目なようだったのだが、助手のおさむは相変わらず下心があって……。

*70年代前半にパニック映画の流行があり、そのへんがヒントになっているのかも知れない?

オー!ロウ人形!の巻

0413(少年チャンピオン 1973年11月19日号)

 いろいろなロウ人形を作ることに熱中している、おさむ。「健康にはやはりこれがいちばんだ」と、完成した人形で遊んだりしているのだったが、「ユキ子さんのヌードがなくては意味がな~い」と考えて……。

*日本国内の観光地には"秘宝館"等と呼ばれる施設があり、その中にはロウ人形を展示しているところもあるらしい。そうしたものはこの当時にも既にあった(東京都なら新宿区など)ので、もしかするとおさむはそれらに触発されてこの趣味を始めたのかも? しかし人体彫刻なり彫塑(ちょうそ)なりを作るにはデッサン力も表現力も必要なはずで、それをこなしているおさむにはそうした実力や才能があるのではないかと思われる(誰にも褒めてもらえてはいないが……)。最後のコマに登場するオチは、偶然かも知れないが当世風な妄想に類似しているようで、驚かされる。

あなたのセンスをリードする!の巻

0414(少年チャンピオン 1973年11月26日号)

 「あなたのセンスをリードする 女性下着専門店 せんぱい」と、表に書かれた店がある。どうも哲学的先輩が店主で、おさむは助手をしているようだ。客は入ってくれるものの、おさむの対応は相変わらずなので……。

*先輩のモチモノがかなり大きいらしい事がギャグネタで出てくる。エピソードとしてはこれで2度目かと思われるが、のちに"この事"は彼の特徴のひとつとしてより派手に取り上げられるようになったようだ。

夜回わりご苦労さまの巻

0415(少年チャンピオン 1973年12月3日号)

 人けの無い夜道。いかにも変質者といった風采の男がさまよい、通りがかった女に抱きつく。それを救ったのは哲学的先輩。おさむと2人で町内の自警団をつとめているのだった。しかしおさむにこの役割は……。

*冒頭の変質者はかなりインパクトがあるが、同時期の作品『吸血鬼ちゃん』でも同一人物(?)が出演している(『第11話 晴れ着ドロボーに気をつけろ』)。ワケの分からないヤツが登場し笑いを誘う事は後の吾妻マンガで特徴の1つとなるようだが、今回の話などはその予兆であったと言えようか?

有名になろう!の巻

0416(少年チャンピオン 1973年12月10日号)

 「あなたもスターになれる! 先輩芸能プロ 第1期生募集」という看板が出ている。たくさんの応募者が集まるが、その中にはユキ子とおさむの姿も。プロダクション経営者らしき哲学的先輩は……。

*素人の視聴者を出演させる歌手オーディションのようなTV番組が当時は毎週放送されていたので、そのへんがヒントか。日本で歌謡曲が今よりもはるかに流行し市民権を得ていた時代ならではの番組だったようだ(現在では、お笑い芸人の領域で似た現象が歴史を繰り返している?)。

個人授業!の巻

0501(少年チャンピオン 1973年12月17日号)

 おさむの学校へ新任の先生がきた。「こんど算数を教える熊藤子です」と自己紹介した彼女はすごい美人、男子も女子も皆が一目で憧れる。おさむはさっそく仮病(?)を使い、彼女にまとわりつくのだったが。
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0500*これより単行本の第5巻。トビラでおさむが歌っているのはフィンガー5(ファイブ)の曲の一部か。「妻は夫をいたわり中学」という表札にどうも見覚えがあると思ったら、『二日酔いダンディー』で似たような名称の高校が出てくるのだった。今回ユキ子(?)は2コマしか登場せず、おさむがいかにこの新任女教師におぼれていたかが分かる(?)。

欲望という名の満員電車の巻

0502(少年チャンピオン 1973年12月24日号)

 喫茶店で哲学的先輩の話を聞く、おさむ。「いやー昨日電車に乗ってたらさー 美女が近よってきて」それが痴女だったという。おさむは羨ましくなり、ベントー持参で電車に乗る。ところが痴女は現れず、やがて……。

*このころの鉄道切符は磁性体の塗膜が無い普通の紙片で、駅員が改札において1枚ずつ手作業でパチンとやって切り欠きを作っていた。

大発見!ポルノ虫!の巻

0503(少年チャンピオン 1974年1月1日号)

 哲学的先輩が何やら必死になっている。おさむがたずねてみると、どうやら虫を探しているらしい。「我が輩が全世界に先がけて発見したポルノ虫とゆーやつなんだが こいつに取りつかれると」その人は色情狂のようになってしまうのだとわかる。おさむは大喜びしてポルノ虫を一匹千円でゆずってもらい……。

*"かくも読者が、エッチ漫画を喜ぶ飢えた色ガキどもばっかしなのは、原因があるに違いない"、そうした疑念から出発し、作者のSF的推理によって到達した仮説がこれ……かどうかは定かでないが、読んでいてフトそんな気持ちになった。ポルノ「虫」とはいうが腕2本に脚6本、胸には人間のような乳房を持つ。どちらかというと宇宙生物みたいに見える!?

冬山讃歌の巻!

0504(少年チャンピオン 1974年1月14日号)

 冬山を登っている先輩、おさむ、そして菊地家の人々。相変わらずおさむは災難続きで、そのうえ天気までがあやしくなってきた。山小屋でやりすごそうとする一行だったが吹雪となり、やがて焚き火に燃やす物も無くなってしまう。「しかたない もえるものはなんでも もやすんだ」と先輩は判断、服を脱ぎ始めるのだったが。

*ポルノ虫が登場し「もうすぐ もうすぐ」と言っている。この謎めいた珍生物は狂言回し的な役どころで準レギュラーとなり(?)、この後も出没するようになった。
(注:以下は雑談です)
 いつだったか、吾妻先生のお仕事場である無気力プロへお手伝いさせて戴きにお邪魔していた時、部屋に流れていた深夜放送のラジオで女性アナウンサーが笑いながらこんな事を言いました、
「(不景気だから)今日までにボーナスもらえなかった人は今年はあきらめたほうがいいかも」
すると沖由佳雄さんがこれを聞いて、
「げ」
と一言。吾妻先生は苦笑されつつ、
「やる、やる」
とおっしゃられたのです。僕はすかさず(ご想像のとおりに)口を挟んでしまいました、
「もーすぐ、もーすぐ、とか言って」
……仕事場に寒々しい沈黙が一瞬流れたのは申し上げるまでもありません。とほほ。

ポルノを読もう!の巻

0505(少年チャンピオン 1974年1月7日号)

 書店(だろう)でポルノを立ち読みしていて叱られた、おさむ。それでも懲りずに、捨ててあるエロ雑誌をあさる。「需要はあるのだがやはり風当たりが強いですね」と先輩にこぼしたら「やはり見たいものは見せてやらねば」という返事。かくて『先輩教育出版』がたちあげられ、「青少年のための雑誌」として『わかりやすい算数』が創刊される。しかし題名とうらはらにその内容は、盗撮してきたユキ子さんのヌードなどが載っていて……。

*おさむが、白く四角いポストから雑誌を拾う場面があるが、これは「悪書追放」のためにと当時に駅前などへ設置されていたもので、いわばエロ雑誌・エロ本・エロ新聞に特化したゴミ箱。
(注:以下、結末に言及しています)
 今回は同人誌をテーマとしたお話だが、『美しい小学生』なる図書が1コマ出てきたりしている。このへんから推すに、『シベール』発行の構想は、この頃すでにあったのだろうか?

おさむくん!カイボーの巻

0506(少年チャンピオン 1974年1月21日号)

 先輩と外を歩いていて、とあるいきさつから頭をうつ、おさむ。先輩は医者へつれていってくれたのだが、その『必殺医院』は何だか変なところだった。美人の看護婦に世話をされ、大喜びするものの……。

*年上の女性しかも看護婦さん、というのは少年の身勝手な憧れの定番のひとつであろうか。彼女の登場は今回のみのようで、名前は不明のままになっている。

お正月は晴れ着で!の巻

0507(少年チャンピオン 1974年1月28日・2月4日号)

 おさむの下宿に、実家から小包がきた。中にはモチやらコマやらタコやらが入っており、おさむは正月を堪能する。先輩の正月はいささか非凡(?)であるものの、ユキ子さんは晴れ着で羽根つきに興じるという純和風スタイル。おさむは新年早々、暴走を始めて……。

おさむの漂流記!の巻

0508(少年チャンピオン 1974年2月11日号)

 波打ち際で目を覚ますと、無人島に流れ着いたことに気付く、おさむ。クイズが当たってみんなでハワイへ、という途上で旅客機が墜落してしまったのだった。さいわいユキ子さんも先輩も無事だったが、助けを待つより手立ては無い。何日もつのだろうか、島には水も食料も無いのに?

*カップめんが登場しているが、これは1971年に発売され、1972年頃から全国に出回って普及したようだ。「しあつの心~ハハ心~」というのは、浪越徳治郎(なみこし とくじろう)の台詞のパロディだろう。

ウヒウヒパーティー!の巻

0509(少年チャンピオン 1974年2月18日号)

 ユキ子のもとへおさむから手紙が届いた。「新年ウヒウヒパーティーしょうたい状 みなさまとともに楽しく飲んで踊りましょう」とある。ステキなパーティになるかと期待し、おしゃれして会場へ行くユキ子。しかし客は自分だけだった。帰ろうとするものの、おさむが泣き出し「死んでやるーっ」と暴れるので「じゃ少しいてもいいわ」と、とどまるユキ子だったのだが。

*トビラで「キッカイ~・ポルノ虫 ポルノ科・エッチ類」と、解説が明記されている。すっかりレギュラーとなったこの虫は人間の言語をある程度話せる(「もーすぐ もーすぐ」という声で"鳴く"、というわけではない)ようで、今回はおさむ以上に大活躍している。
 当時まだCDとかは無かったので、アナログ式のレコード盤が登場している。

先輩の大予言の巻

0510(少年チャンピオン 1974年2月25日・3月4日号)

 おさむが戸外で先輩と出会うや、なぜか手を打ち鳴らし「お答えいたします」とやりだした。どうも哲学的先輩は予言を始めたようで、これがどういうわけかけっこう的中する。そこへユキ子さんもやってきたのだったが、先輩は不吉な予言を口にして……。

*「お答えいたします」というのは、この頃に夜のTV番組で毎週出演していた女性霊能者の仕草のパロディと思われる。その番組では、登場した視聴者カップルの将来を占うという趣向だったと記憶するのだが、先輩の予言はすこし方向が異なるようだ。
 石油ショックによる商品価格の値上がり、買占め、売り惜しみといった騒動が1973年11月あたりに国内で発生していたので、そうした世相を反映しているのかも知れない。

ラブ・フォトでホットに!の巻

0511(少年チャンピオン 1974年3月11日号)

 先輩が路上で客引きをしている。「二人でヌード写真を! よい記念になりますよ」というふれこみだ。トリック写真による、ユキ子さんと自分のヌードを見たおさむはこれに惚れこみ、「ユキ子さんと本物の写真とりたいよ~」と興奮。「しかしたのんでもぬぎっこないしな~」と涙するおさむに先輩は「じょじょにせめましょう」と提案し……。

テニスでのぞこうの巻

0512(少年チャンピオン 1974年3月18日号)

 テニスを猛練習しているユキ子。こんど学校でテニスの選手に選ばれたのだ。そこへやってきたおさむは「テニスのスカートって色っぽいねっ」と、そこばかり注目。しまいには先輩からもさとされるのだったが。

*劇中の台詞からすると、おさむはテニスウェアのアンダースコート(これは肌着ではない)について知らなかったのかも。およそありきたりではない作戦が始まり、どんどんムチャクチャになってゆく展開が笑える。

おさむの素行調査の巻

0514(少年チャンピオン 1974年3月25日号)

 ユキ子が帰宅すると家族から、明日お見合いだと告げられる。「よくツヤ出しといてね」と言われてユキ子が風呂に入るや、さっそくそれをのぞいている、おさむ。先輩に発見され、「ユキ子さんのお見合いの相手から素行調査を依頼されてんだ」と弁明するのだが。

*おさむの目測によればユキ子のスリーサイズは「バスト80 ウェスト40 ヒップ90」らしい。「千葉の兄さん元気ですか」という台詞があり、これを信ずるなら、おさむには兄がいることになる? しかし最も気になるのは、ユキ子の着用しているのがパンティではなくズロース(!? ガードルではないと思われる)という点で、この当時ならまだ絶滅はしていない衣類だったかも知れないが……。

さわりサワサワ大決闘の巻

0515(少年チャンピオン 1974年4月1日号)

 あの手この手でユキ子にまとわりつく、おさむ。しかしユキ子も慣(な)れているので巧妙にかわされてしまう。ゆきづまって悩んでいるおさむに先輩が指南してくれることになったが、落ち着いて行動できないおさむは失敗ばかり。おさむとユキ子の攻防戦はついに決闘へと至ってしまうのだった。

*話がとんでもない方向へころがってゆくのが笑える。『ふたりと5人』は、ありきたりなエッチまんがで終わってはいないのだ。「押してくださる?」という台詞は、この頃に新発売されたエアーポット(それまでは魔法瓶(まほうびん)と呼ばれ、全体を持ち上げて傾けることで湯を注ぐ型しか出回ってなかった)のCMパロディと思われる。

消防隊で猛ハッスル!の巻

0516(少年チャンピオン 1974年4月8日号)

 消防士として活躍(?)している先輩とおさむ。逃げ遅れた女性は火災とおさむの二重苦にさいなまれるありさま。「できればユキ子さんのハダカも火事のどさくさに見たいですね」と言うおさむは、悪巧みを実行に移し……。

*消防車側面の表記によれば、おさむと先輩が所属したのは「目黒消防署」らしい(目黒区は東京都に実在する)。先輩が消火活動をしているコマにはなにかコメントがあったらしいのだけれど、写植が剥がれ落ちてしまったのか矢印だけが残っており、残念(なおこの冒頭の変なくだりは、結末直前でちゃんと伏線として作用している)。

ヌーディスト・クラブ入会の巻

0517(少年チャンピオン 1974年4月22日号)

 菊地家の人々はヌーディスト・クラブに入会した。4人はてんで平気なのだが、ユキ子だけはやはり恥ずかしい。おさむはこれを知って大騒ぎ、先輩と一緒に同じクラブへ入会しようとするも受付で断られてしまう。あきらめず潜入したおさむと先輩だったのだが。

*哲学的先輩はかなりムラがある性格なのか、女性に全く興味関心を持たない時もあれば(『先輩ひとりがなぜモテるの巻』参照)、今回のようにおさむといい勝負のスケベ人間になっている時もある。「哲学者とは気まぐれなものなのだ」と自身で語っているのだが(『しあわせの哲学の巻』参照)、はかり知れない人物ではある……?

フェンシングVS日本武道の巻

0518(少年チャンピオン 1974年4月29日号)

 陽気のせいか発情した(?)おさむは、通りがかりのユキ子に抱きつく。しかしユキ子は「最近フェンシングやってるのよ」と、その剣の腕前を披露。菊地家へむりやり招かれたおさむは練習相手にされてボロボロに。おさむが先輩に泣きつくと、「外国かぶれどもめ! 日本には日本の武道があるのだ 剣の強さを思い知らせるのだー!」といたく激昂。はたして剣術勝負の勝敗やいかに?

*哲学的先輩は攘夷(じょうい)論者なのだろうか、彼がかくも感情的になり怒るのも珍しければ、こうした価値観を表明するのも珍しいことに思われる。先輩は実際に強いようで、なかなかカッコいい剣さばきを見せるのだが、御期待通りにちゃんと馬鹿騒ぎへ発展してしまい、笑わせてくれるのだった。なお、今回の冒頭に出演している作者自画像(?)は"アーさん"に近い容貌で、第1話から登場してきた"吾妻ひで子"ではない。
(少年チャンピオンコミックス『ふたりと5人』第5巻は、ここで終わっている。)

ユキ子さん悩むの巻

0601(少年チャンピオン 1974年4月15日号)

 何やら悩んでいるユキ子。おさむがたずねてみたら、「あたしパパとママの本当の子どもじゃないんじゃないかと悩んでるの」という返事。「お化粧してる時はみんなそっくりだけど」素顔になったら「どう見てもあたしだけ美しいんですもの~~」と泣き崩れる。おさむはあきれるのだったが、家出を決意するユキ子に大慌て。「家出したら会えなくなる」と、真相を確かめるべく先輩をつれてきた。先輩は「血液型調べりゃいいんじゃない」と、提案するが。

0600*これより単行本の第6巻。ゴミ箱として描かれているのは1960年代まで日本各地に見られた様式のもの。

花見で狂う~~の巻

0602(少年チャンピオン 1974年5月6日号)

 花見にやって来た先輩とおさむ。しかし2人だけではどうにも盛り上がらない。腹をすかせたおさむは他人の弁当をくすねようとして野良犬と対決、先輩は飲みくらべ大会に参加、そしてそこにはユキ子さんも花見に来ていて……。

*この年(1974)の3月、東京の銀座でも「ストリーキング(Streaking 全裸で屋外を走ること)」が行なわれニュースとなった。それにひっかけたのでは? と思われるくだりがあるが、劇中で特に「ストリーキング」という明言は、ない。

恐怖の超能力時代!の巻

0603(少年チャンピオン 1974年5月13日号)

 哲学的先輩の特訓(?)によって「超能力透視人間」となった、おさむ。「君こそ二十一世紀をになう新人類となるのだ」と先輩から励まされ、町へ出て実験開始。すると道行く女性たちがみんなハダカに見え、おさむは狂喜乱舞。そこへユキ子がやってきた……。

*今回はSF(いちおう)になっているものの、事態はどんどんムチャクチャな方向へ発展してしまい、笑える。ユキ子が自分からおさむを映画に誘っているのはちょっと意外な感じだが、おさむに映画料金をおごらせよういうのが本音であろうか? このころ香港製カンフー映画の流行があり、日本の映画やTVもいろいろ影響を受けていたようだ。

先輩の恋人の巻

0604(少年チャンピオン 1974年5月20日号)

 おさむの下宿へ先輩がやってくる。「紹介しよう クリ子ちゃんだ」といわれて登場したのはたいそうな美人だったが、なんと先輩の恋人だという。「今日はおさむに見せつけにきたんだー」という先輩は、おさむの眼前でいちゃつき放題。完全に頭へ来たおさむは先輩たちを追い出し、「ちくしょーバカにされたー ぼくにも恋人がいればなー」と泣く。そして一念発起したけれど……。

*たいへん展開が速く、逆転につぐ逆転で結末に至る構成は非常に面白い。いつも味方の哲学的先輩が敵(?)になる等、新鮮味のある点もいい。結末手前の大逆転は、このシリーズでもきわめて珍しい状況なのではないかと思われる。
 壁の貼り紙に「『ふたりと5人』第1巻大好評発売中!」の文字が読める。

夫婦になってフーフーの巻

0605(少年チャンピオン 1974年5月27日号)

 部屋いちめん、壁にも天井にもヌード写真を貼りまくって「ハダカの部屋」を完成させる、おさむ。と、折悪しくそこへ父親がたずねてきた。「おまえは学校いってもムダだ くにへ帰れ! くにで結婚して家業の百姓をやるのだ!」と命ぜられて、おまけに「もう嫁も決めて連れてきている」という。紹介された千千子(ちちこ)はすごい美女で、おさむと夫婦になる事にきわめて乗り気だった。父親が帰ってしまうや「いずれ夫婦だから」と千千子に迫られるも、「ここでゆーわくされては一生 百姓やらされる」と必死で抵抗するおさむ。この上なく甘美な苦行はどんどんエスカレートしつつ続いて……。

*羨ましい(?)ような災難にみまわれるおさむの周章狼狽(しゅうしょうろうばい)が笑える。『逃亡日記』によれば作者は「高校の寮で一年間暮らしてた」のだそうで(p.114)、おさむが1人で下宿生活をしているこの物語の細部に奇妙な説得力があるのは、そうした経験が生きているのだろうか。

危うし!ユキ子さんの巻

0606(少年チャンピオン 1974年6月3日号)

 作者のもとへ「ゴッソリ ファンレターがきた」と思ったら、1つ残らず全部が抗議の手紙だった。「ガキどもめ! おとなをバカにしやがって! 今回はてってー的にマジメにかいてやるかんなー」と怒りにふるえて執筆する作者だったのだが。

*第1話からおなじみの「吾妻ひで子」ではなく、やや写実的(?)な作者自画像が愛犬と共に登場。「そーはさせるか」と、編集者らしき人物もちらりと出てくる。類人猿(?)が出現するあたり、これはSFマンガになるかと思って読み進むと、やっぱり笑わされてしまうのでありました。

おさむくんの遺言の巻

0607(少年チャンピオン 1974年6月10日号)

 おさむが寝込み、苦しんでいる。そこへ訪ねて来た先輩は「どれどれ無免許ドクターの我が輩が診察してあげようか」というのだったが、その診断は「ご臨終が近い」というものだった。「今のうちに遺言がありましたらいいなさい」と宣告され、おさむは「死ぬ前に一度でいいからユキ子さんのハダカをじっくり見たかった」と叫ぶ。これを聞いた菊地家の人々は笑いながらも「見せてあげよーよ最後なんだから」と決めて……。

*おさむの健康状態は本当のところどうだったのかはっきりしないが、先輩の診断については結末で"実はこういうコトだった"という種明かしがある。

原始境で迫ろーの巻

0608(少年チャンピオン 1974年6月17日号)

 「ごはんできたよ」の一声で、吾妻家の朝は始まる。厳しい弱肉強食の世界……。というわけで(?)先輩は「原始にかえるのだ! そして真に力強い人間らしさを取りもどすのだ!」と提唱。菊地家の人々もおさむも一緒に、山のかなたで原始生活を始める。文明を捨て去り、先輩の指導のもと、全てゼロの状態から生活してゆこうと試みるふたりと5人だが。

*関係があるかどうかは不明だけれど、この年(1974)の3月10日、フィリピンのルバング島で旧日本陸軍少尉であった小野田寛郎さんが発見救出され日本と世界を驚かせた。終戦を知らぬまま、ジャングルでの言語に絶する過酷な生活を数十年間にわたり生き延びたその存在は、人々に自分の日常生活を省察せしめたようである。

哲学の夕べの巻

0609(少年チャンピオン 1974年6月24日号)

 露出度の高い服を着てみるユキ子だが「おかしいなーこんなカッコしてたら いつもならおさむくん とんでくるのに」と不思議がる。一体どうしたわけかと、おさむの部屋をたずねてみたら、彼は命より大事にしているエロ本を処分していた。「もうスケベなことはやめてマジメになろーって思ってね」と語るおさむは、どうやら本気らしい。しかし菊地家の人々は「信じられない」と考えて……。

*台詞にあるソルジェニーツィン(Солженицын)とは、1970年にノーベル賞を受賞するも旧ソ連から国外追放されたロシア人作家。おさむが言い間違えているソルティシュガーは日本のフォーク歌手グループ(『走れコウタロー』で有名になった)。また参活(さんかつ)映画とは日活(にっかつ)のパロディらしい(ここのブランドである"ロマンポルノ"は1971年11月に『団地妻昼下がりの情事』を第1作として封切られ、その歴史が始まっているようだ)。

愛の結晶!の巻(前編)

0610(少年チャンピオン 1974年7月1日号)

 ユキ子が着替えていたら、誰かそれをのぞきに来ている。おさむだなと思って迎撃すると、なぜか同じ顔がもう1つ。「おさむが二人いるー」と驚くユキ子だが、片方はおさむを「パパ」と呼ぶのだった。「おさむの子どもの こさむです」と名乗るその少年は、たしかにおさむそっくり。みんなで集まってなごやかにしていたのだが、そこへやって来た先輩が一言。「しかし母親はだれなんだ!?」

*前編・後編から成る、珍しい回。

愛の結晶!の巻(後編)

0611(少年チャンピオン 1974年7月8日号)

 おさむの下宿に住み込んでいる、こさむ少年。「しかしうるせーガキしょいこんじゃったなー」と嘆きつつも必死に世話をする、おさむ。あれやこれやと次々に責任をになわされ、ついにもうどうしようもなくなって……。

*1970年、富島健夫の原作を映画化(主演は関根恵子)した作品やTVドラマ(主演は麻田ルミ)が公開され、その題名『おさな妻』は流行語にもなったようだ。それをもじったらしい台詞が1箇所ある。

おー倹約の巻

0612(少年チャンピオン 1974年7月15日号)

 諸物価の値上がりで生活が苦しく、「少ない仕送りじゃろくな物食えんもんね」とこぼす、おさむ。しかしそこへたずねてきた先輩は「おまえもまだまだ生活にムダが多い」とたしなめるのだった。かくて倹約の努力を始めるおさむだったが。

*「とにかくやろうと思えば金などなくてもけっこーやってけるものなのだよ」という哲学的先輩の台詞は、『失踪日記』を読んだ後だと机上の空論ではないように感ぜられ、強く印象に残るくだりではある。

フシ穴にご用心の巻

0613(少年チャンピオン 1974年7月22日号)

 夏。先輩とおさむは海で脱衣所を経営して金をかせごうと計画する。さらにそこには、のぞき穴をたくさん作っておいて女の子のヌードを見ようとたくらんでいるのだった。取らぬ狸の皮算用でメチャクチャにもりあがっているふたりに、作者さえ呆(あき)れかえってしまうのだったが……?

*今回ユキ子は3コマしか登場しておらず、とくに本編での活躍は無い。おさむと互角なほどクレージーなはしゃぎっぷりを見せている先輩が珍しく、その狂態は笑える。「車はガソリンで動くのだ」というおさむの台詞は、石油会社のCMパロディか。
 (初出時にはこの本編終了後、2ページの広告マンガ『ヒモつきふたりと5人』が掲載された。)

臨海学校の巻

0614(少年チャンピオン 1974年7月29日号)

 屋外で集会が開かれている。これから臨海学校を始めるにあたり、教師が演壇から、生徒たちに諸注意を与えているようだ。引率のアルバイトでこれに同行してきた哲学的先輩は、おさむと菊地家の5人組とを担当すべくまかされる。しかし先輩は準備体操からして独自に考案したものを行なわせ……。

*「最近の海は不潔だから 大腸菌ウヨウヨ」という先輩の台詞がある。いつだったか、大腸菌さわぎで恐怖した民衆が全く海水浴に来なくなって、観光地が大打撃を受けるという事も起きたようだ。昭和45(1970)年には「海水浴場水質保全対策要綱」が作られて海水浴場の衛生状態は改善されたらしいのだが、教養人(?)の哲学的先輩は慎重であるらしい(??)。

民宿よいとこの巻

0615(少年チャンピオン 1974年8月5日号)

 おさむと先輩は2人で海辺の旅をしている。「民宿くそみそ」の案内板を発見した彼らはそこで泊まることにした。宿の主人はいささか珍妙なオジサンだったのだが……。

*のちに人気者というかファンの間で有名人となる吾妻キャラ「ナハハ」の原型とおぼしき人物が、このシリーズに初登場している回(名前は不明)。彼の初登場は『セクシー亜衣』での父親役(別冊少年チャンピオン 1974年6月号)らしいのだが、ここではまだ、笑い上戸でまあ普通(?)の面白いおっさんといった印象だ。彼が後に主役をつとめるまでになる(『シッコモーロー博士』(月刊少年マガジン 1976年1月号))などとは、この時どれほどの読者が予測しただろうか?

海辺のアルバイトの巻

0616(少年チャンピオン 1974年8月12日号)

 おさむと先輩は、まだ旅先にいた。「しかしまいったなー 金はないし 帰るに帰れない」と困っていたところへ「砂ブロ アルバイト募集」という立札があるのに気付いた。ふたりは、そこで働いてかせぐことにしたのだったが。

*今回、ユキ子はトビラにしか登場していない(砂像ではあるものの、おそらくシリーズ中で最も胸が豊かに描かれている?)。

大遠泳の巻

0617(少年チャンピオン 1974年8月19日号)

 海水浴場に来ている菊地家の5人、そして先輩とおさむの2人組。その海岸で、賞金5万円の遠泳大会が開催され、とび入り参加をすることになった。とにかく賞金が欲しい先輩とおさむは……。

*アメリカ漫画風の描き文字が使われているコマがあるが、こうした演出は『エイト・ビート』(少年チャンピオン 1971年) いらい久しぶりで、この『ふたりと5人』では珍しいと思われる。

すもうでヨイショの巻

0618(少年チャンピオン 1974年8月26日号)

 夏祭りの会場へ、荷物をしょい込んだおさむがやって来る。自分の持ち物を売却しようというのだったが、ロクでもない品物ばかりなのでさっぱり売れない。いっぽう、同じ会場で行なわれていた「飛び入り五人抜き大相撲」では、ユキ子さんが連戦連勝していた。先輩はその行司をつとめていたが、おさむの姿を発見して……。

*フリーマーケットといった言葉も概念も当時はまだ無かったと思われるが、家庭の不用品を集めて売却処分するバザーはだいぶ昔からあったようで、おさむはそれをヒントに行動をおこしたのかも知れない。
(単行本『ふたりと5人』第6巻は、ここで終わっている。)

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