(少年チャンピオン 1972年2月21日号~3月6日号)
仙術を会得して故郷へ帰った悟空は、サルたちの英雄また指導者となる。だがそれによって彼の慢心が始まった。海の底にある竜宮デパートへ行ったさいに"キンソウ棒"を見つけた悟空は、それをイタズラして大暴れのあげくに自分も死んでしまう。ところが地獄でエンマに会うや、勝手に細工し、あっさり生き返ってこの世に戻ってくるのだった。それらやりたい放題の乱行はとうとう、異次元に住む神、天帝のもとへ知らせが達する……。
*ここではほぼ原作にならい、悟空が罰せられ、三蔵のお供となって天竺へ向う運命となり、旅の仲間になる沙悟浄や八戒と出会うまでが描かれている。細部には、悟空の年齢が12才とあることの他、当時の流行やニュースにからめたギャグやパロディがみられるようだ。「チョト待テクラサーイ」(ゴールデンハーフの歌から)、ターザン(? TV化された番組が日本でも放送された)、ミノベ(元東京都知事の美濃部亮吉)、二十八年(元日本兵の横井庄一さんら発見救出)、「毛のないエテ公」(岡林信康の曲名)、ヤクザ映画、中国ブーム、五行山(ある人物の横顔?)などにそれがある。
単行本では「コロヒシヤハ! ンヤチスネグア!」という呪文があるが、初出の雑誌掲載時では「リオサキユ! イフイフ! ンヤーオ コキアダワ!」となっていたようだ。これは歌手の由紀さおり、欧陽菲菲、和田アキ子らの名前を逆さまにしているものと思われる。ちなみにこの時(1972年2月頃)、林寛子はまだそれほど有名ではなく、アグネス・チャンは日本デビュー(1972年11月に「ひなげしの花」発売)前だった。
さて……僕の思い入れは別にしても、やはり一番気になるのはこの部分で登場している、観音さまについてではないかと思う。
(注:以下、単なる個人的な思い出とかが混じっています)
たしか喫茶店カトレアで、吾妻先生、沖由佳雄さん、そして僕が同席させて戴いていた時のことです。沖さんが、「観音さまは最初ナ●ョナルの蛍光灯を後光にしょって出てくる」のだと教えて下さいました(この時まだ『きまぐれ悟空』単行本は発売されておらず、僕はその部分を読んだことが無かったのです)。僕が非常に興味深く思って身を乗り出すと、沖さんは「ですよねえ?」と、吾妻先生のほうを向かれました。僕も思わず吾妻先生を見たのでしたけれど、なぜか先生は無言無表情のままだったのです。それゆえ、大変残念ながらこのくだりについて、先生から直接お話をうかがう機会はありませんでした。
単行本では蛍光灯の後光をしょって登場する黒髪の女性キャラが「菩薩さま」となっており、刑務所の場面でいきなり空中から出現する金髪の女性キャラが「観音さま」と(このあと最後まで)呼ばれています。はたして"同一人物"なのかどうか? 髪の色と服装が違うのは一目で分かりますけれど、髪型も(「観音さま」は耳の前、鬢(びん)の毛先が肩にかかる長さで)少し異なるようです。
(「キャラクターデザインが急きょ変更されたため齟齬(そご)をきたしたのだろう」というのが、おりこうさんな判断かも知れません。でも、ファンというのはおろかなもので、そういう冷静な考え方ができないんですよ……お話の世界が壊れちゃうように感じてしまい、どうしても抵抗あるんです。笑われてしまいそうだけれど、ちょっといろいろ考えさせて下さいな。)
幸い、当時の週刊少年チャンピオンを調べることができました。くだんの台詞は初出だと「観音菩薩さま」になっているのが分かります。単行本化されるにあたり、台詞の修正が行なわれたようですね。前述した、沖さんと僕のやり取りを聞かれた吾妻先生が「これはイカン」と思われて修正になった……のかどうかは不明ですけれども。何はともあれ、この黒髪のお方の初登場はその掲載誌、1972年2月28日号のトビラということになるようです(画像参照)。

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一方、その翌週に突然あらわれる金髪のお方は(別"人"であるとすれば)1972年3月6日号のトビラが初登場のようです。この時、よく見ると衣装が少し違っていて、袖口に縁取りがあるのですけれど、この服は以後着用しておられないようです。
初登場と再登場でかなり印象の違っているキャラクターとしては、エンマ(閻魔大王)が、この部分の他に後の『初恋地獄編の巻』にも出てくるのですけれどあきらかに容姿が同じではありません。この場合、エンマというのは肩書きであって名前ではなく再登場しているのは二代目(?)の"別人"なのではといった推理もまあ、できなくはないかも知れないですが……。しかし観音さまの場合、黒髪に、もすその長い服で登場し、そのすぐ翌週(!)、金髪に活動的な服装で突然現れているのだから、謎は深まるばかりです。

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もし"同一人物"なのだとしたら外見が異なっているのはなぜか? という点ですけれど、なにしろ普通の女性ではないので、髪の色や形状を自分で変えるくらいは何でもないのかも知れません。衣装は、執務服(?)としては主にトーガのようなものを着用し、地上任務で使命を果たす時にはパンタロンに着替えている……なあんて。ついでに言うとこの活動的な衣装のほうは中国というよりむしろ、ベトナムの服であるアオザイに似ているような感じがしますねえ。
また、他の説としては、黒髪のほうも金髪のほうも両方が別個に存在していて"姉妹(?)"なのではないか、なんて考え方もできるかも……?